インドの企業Amagiクラウド対応出品をどう捉える?
江口靖二
インドのAmagiが、ケーブルテレビ局など向けの興味深いヘッドエンド製品「DART」を展示した。DARTは衛星受信機とネットワークアクセス機能、2TBのCMサーバー機能を持っている。様々な使い方が考えられるが、たとえばケーブルテレビ局におけるローカルCMの差し替えなどが可能だ。
DARTによるシステム構成の例
CM差し替えの仕組みはこうだ。衛星を通じて、ケーブルテレビ局にチャンネル配信を行うケースにおいて、たとえばAケーブルテレビ局に対しては。番組とCMをそのままチャンネル側(番給)のプレイアウトから送出する。Aケーブルテレビ局では衛星経由でDARTで受信をし、自局のケーブルネットワークを通じて配信をする。一方、Bケーブルテレビ局は放送エリアがAケーブルテレビとは異なる。そこで、Bケーブルテレビ局の放送エリアのCMに差し替えを行うために、クラウドを通じてDARTにCM素材とプレイリストがチャンネル側から提供される。DARTに内蔵された2TBのディスクにCMは蓄積され、差し替え配信が行われるというものだ。差し替え対象となる本線CMには予めウォーターマーク(電子透かし)が挿入されており、それをDARTが判別してCMを差し替える。さらに各端末の稼働状況、配信実績はもちろん、リアルタイムの送出映像もWEBから確認、監視ができる。
DARTによるローカルCMセールスは差し替えのデモ。中央が本線、左がニューヨーク、右がロサンゼルスという設定。差し替えは極めてスムーズ
また逆にCMの方が共通で、番組の方が地域ごとに差し替えられるといった利用も可能である。日本的に言うと、コミュニティーチャンネルをネットワーク化して、CMセールスは全国一律といったスタイルだ。
DARTのインド国内のでの実績は、CNBCやディズニーチャンネルなど15のチャンネルで、40の地域、50のケーブルテレビ局、視聴可能人口1億5000万人に対して、500台のDARTが稼働中である。
Amagiはメーカーであるのだが、このビジネスモデルで地域CMを販売する会社が他になかったという理由から、自ら広告営業部門を設立し実績をあげている。たとえばトヨタの地域ディーラーなども彼らの広告主となっている。
安価な仕組みで実現。様々名局面で対応
2UサイズのDART本体
仕組み自体は必ずしも画期的とはいえないが、興味深いのはDARTの価格で、おおよそ100万円程度とのことだ。高価な機器と複雑なシステムを導入すればこれまでも実現可能であったはずであるが、それではビジネス全体としては成立しなかっただろう。
またDARTは衛星を介さず、全てをクラウドで行うことも可能だ。すべてのコンテンツをクラウドで配信し、いったんDARTに蓄積した上でプレイリストに従って放映を行う。これはよく考えると、ネットワーク型のデジタルサイネージが採用している配信システム構成と同じである。
日本においてはケーブルテレビ局、CSなどのチャンネル事業者、IPTVやケータイキャリアの動画配信サービスなどに利用できる可能性があるのではないだろうか。あるいは日本のコンテンツを国外のケーブルテレビその他に配信するといったことも考えられる。
AmagiはインドのIT企業としては成長率が3位と、現在急成長中だ。同社のCo-founderであるBaskar Subramanian氏は、NAB2013のクラウドコンピューティングカンファレンスにおいてパネリストとしても登場している。