F65とクラウディオ・ミランダ氏 | © Universal Pictures /David James

注目のカンファレンスから

山下香欧

「”Oblivion”: Shooting Oblivion with Cinematographer Claudio Miranda, ASC and DIT Alex Carr」は、NAB開催2日目の午後、クリエイティブマスター・シリーズの一連として開催された。

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「トロン:レガシー」のジョセフ・コシンスキー監督、トム・クルーズが主演する、ユニバーサルピクチャーズ配給「Oblivion(オブリビオン)」は、ソニーF65で撮影した初めての作品だ。ロケーション撮影は3月末から。アカデミー賞受賞者でもある撮影監督クラウディオ・ミランダ氏、DITのアレックス・カー氏が、デジタルワークフローと撮影技術について語るパネルディスカッション。 2人のほか、ソニーエレクトロニクスからビジネス開発担当マネージャーのキース・ビッジャー氏およびテクニカラーのロケーションサービス担当副社長のデビッド・ワーターズ氏もステージに揃った。モデレーターはASCデジタルタイムスのジョン・ファウアー氏。

オブリビオンは米国では今週から劇場公開された、想像を超える壮観な未来の地球を舞台に異星人と地球人生存者たちの戦いを描いたSFスリラー映画。製作費は約1億ドルと言われている。

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会場ではソニー4Kのプロジェクターにオブリビオンの各シーンが上映され、それらに合わせて監督たちから解説があった。 大きく分けてスカイタワーと外の背景、そして雲のフォーメーションだ。

カメラはフジノン製プリミアズームレンズを装着した2台のカメラシステムを使った。撮影全体で20台以上のフロントスクリーンプロジェクションを使って投影を駆使し、自然で臨場感あふれる光を表現した。

F65とジョセフ・コシンスキー氏 | © Universal Pictures /David James

クラウディオ氏は使える限りカメラをテストして、作品シーンが求める焦点とスコープを撮るのに相応しいと感じたソニー製F65に決めたという。氏は作品に2つの様式があり、1つはプラットフォーム塔内のようにクリーン(清潔感)で無菌環境な部分、そしてもう1つは汚れたザラザラ感がある素朴な世界だという。スカイタワーから見る雲の陰りにある光源、そして下にはごろごろした火山岩。氏は「ニュアンスを観てみたかった」と、両極端な世界の表現の工夫について語った。

「照明に関して、プロジェクト全体の設計に多くの時間を費やした」と、ブルーバックスクリーン(合成スクリーン)を極力利用しなかったことも理由の一つだという。リアルなセットを組み上げることで、出演者たちは想像しなくても自然にそのシーンにのめりこめる。撮影は、ハワイの火山頂上近くでも2週間ほど行った。カー氏によると、雲の形状など、撮ったフッテージを合わせると15Kにもなるという。152.4mx12.8mにもなるシーンは、スカイタワーの背景となる。フロントプロジェクションで投影したこれらのイマジネーションの世界で演技をする出演者の自然な演技は、視聴者を没入させる環境を生み出した。

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今回の大規模プロジェクトのワークフローの背景についてもディスカッションがあった。ワークフローには膨大なRAWファイルのデータ容量の管理と、テクニカラーがカスタマイズしたシステムが大きく関わっている。F65という初めてのカメラシステムのため、メーカー側の協力要請は否めない。さまざまなロケーションのセット近くでスクリーンデイリーができる環境が必須となったため、トレーラーにデイリーシステムを組み上げる、いわゆるモバイルシステムと、テクニカラーのグローバルデイリーの提案が成された。システムにはFlameLogicとDP Lightsオンセット・カラーグレーディングシステムがトレーラーに載せられた。


Vol.04 [NAB2013もう一つの視点] Vol.01

WRITER PROFILE

山下香欧

山下香欧

米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。