コンパクトスイッチャー熱再燃!
小寺信良
NAB2017会期初日は、例年Blackmagic Designのプレスカンファレンスで始まるのが恒例となっている。例年はこのタイミングで新製品をドーンと一度に発表してエラいことになるのが常のBlackmagic Designだが、今年は戦略を変えて、今年の初めから新製品を小出しにしているのが印象的だ。だがそれでもまだまだ玉数を繰り出してくるのがBlackmagic Designの底力である。
今回の発表で大注目は、なんと言っても「ATEM Television Studio Pro HD」だろう。似たような名前が多くて混乱するが、これはSDI4入力、HDMI4入力を備えるハードウェアコンパネ一体型のHDスイッチャーだ。今年2月に発売が開始された「ATEM Television Studio HD」のコンパネ一体型版と考えればいいだろう。
コンパネと本体がついに一体化。ATEM Television Studio Pro HD
背面に端子類を備える
これまで、ATEMシリーズをハードウェアコントロールパネルで使用するには、ATEM 1 M/E Broadcast Panelを使う必要があったが、これが60万円以上するために、システム全体の価格を押し上げていた。そのため廉価なハードウェアコントローラを導入した方も多かっただろう。一方ATEM Television Studio Pro HDは、コントロールパネル一体型ながら、価格を税別26万800円に抑えた。
ワイプパターンも多くパネル上にボタンとして配置し、オーディオのレベルコントロールもできる。さらにはBlackmagic Design製カメラのカラーコントローラまで付いている。フェーダーはTバーではなく、オーディオフェーダーのようなタイプになったため、オペレーション的には若干トレーニングが必要だろうが、オートトランジションが主流の昨今では、大きな問題ではないだろう。
特長的な上部コントロール部
コンパネのデザインもDaVinci Resolveのコントローラに合わせてあり、高級感がある。もちろん、機能的には既発売のATEM Television Studio HDと同じなので、ソフトウェアのコントローラや、ATEM 1 M/E Broadcast Panelも繋げられる。
これでまたライブ配信におけるスイッチャーの覇権争いも、全く様相が変わってくるだろう。とは言え、まだまだ初日だ。引き続きコンパクトスイッチャーを探して、会場取材を続けたい。
今年のNABは大手メーカーよりも中堅どころのメーカーが面白い
岡英史
AJAプレスカンファレンス
NAB初日は恒例のAJAからスタート。このモーニングカンファレンスは、いろいろと驚くことが多い。全然予想しなかったことが飛び出すのがよくあるので、今回ももしかしたらCION MK2でも登場するかと思ったがそれはなかった。その代わりに、リリースを読んでる方はお判りだろうが、KiProのニューバージョンが…。なんだかんだ外部キャプチャ機器として信頼性の高い同社のシリーズなので、今回も現場での期待は大きい。
Blackmagic Designプレスカンファレンス
そしてAJAのカンファレンスが終わると黒魔術(Blackmagic Design)のブース内カンファレンスが会場前に始まる。最近の怒涛の新製品ラッシュにもうないだろうと思われたが出てきたのは、ハードウェアでのコンパネ付きスイッチャー。やはりソフトウェアスイッチャーでの弱点を解っていたんだなと再確認できた。しかし、このカンファレンスの音響がイマイチで、説明が本当に聞こえにくいのは何とかしてもらいたいところ。
ATOMOS SUMO
外部キャプチャと言えばATOMOSを忘れてはいけない。今回はSUMOと言う名前で19インチ大型パネル搭載のものが登場した。事前情報は何となく掴めていて、多分モックだろうと予想していた。しかし、実機が動いていてビックリ! 操作は今までのものと同じでタッチパネル方式を採用。スイッチャー現場でのPGM録画やクライアントがいるモニター出しの現場にはピッタリはまりそうだ。
PROTECHブースで見つけたJIBアーム
面白い機材を現場目線で作ってしまうことで有名な社長がいるPROTECHは、今回新規にJIBアームを展示。ドライカーボンで制作されたポールの先にリモートヘッド等でカメラを載せるもの。軽量高剛性なドライカーボンとは言え、流石に4m程の長さだと4cm程度しなるのはしかたがないだろう。既に某放送局での実践に使用されており、その動きはかなり良い。独自のカウンターバランスにより確実に角度をホールドできる。今のところ、カメラ重量でこの長さだと2㎏前後がベスト。もちろん、短くすればその耐荷重は増える。価格はまだ思案中とのことだが、この手の機材にしては安価なのは間違いない。
LANC対応リバース機能を搭載したズームフォーカスリモコン「ZFC-L」
日本の三脚の長と言ってもよいLibecからは小型のスタイリッシュなズームリモコンを発表。LANC経由でカメラのズームとフォーカスがコントロール可能となっている。価格は$100程度の予定で、三脚とのバンドルも考えていると言うもの。大型のズームレバーはワンフィンガー&ツーフィンガーの両方で使えるのも便利だ。
Nitrotech
マンフロットからは新しいビデオヘッド、Nitrotechの展示。雲台は、従来のバネではなく窒素ピストンを使ってカウンターバランスを取る方法で、0~8㎏の荷重まで対応する。この0~2㎏以下のカメラがバランス取れるというのは他にはなく、Z150以下のカメラやDSLR系のカメラならこの三脚は間違いないと思われる。では、中型のカメラはどうかといえば、FS7の純正フル装備でもご覧の通り。ドラックゼロでもしっかりバランスがとれる。多分、この重さがMAXだと思われるが、価格を考えれば問題ない。
人で溢れる会場。熱気で盛り上がるNAB
猿田守一
本日よりNAB SHOW 2017が開催された。人の入り具合は開場からどっと人が押し寄せ、昼過ぎにはかなりの人の数という印象であった。取材のために会場内を移動するのだが、通路は人の流れが多く、速く移動するなどとうてい出来ない状態であった。InterBEEと比べるのも悪いが映像に対する業界関係者の思いは明らかにこちらのほうが熱い感じがする。特に電動車椅子のお客さんが非常に多いことに感心させられた。ハンディキャップのある方々も何らかの映像関連の仕事に従事しているということではないだろうか。そう考えるとハリウッドを抱えるアメリカならではの「映像産業」のすそ野の広さを感じずにはいられない。
取材を終えてぶらぶらとサウスホールを歩いていると、気になる展示を見つけることができた。パッと見は空中に浮く3D映像である。よく見ると扇風機のようにクルクル何かが回っている。この何かはLEDのひも?のようなデバイスだ。ひも状なので回しても後ろの背景は十分前から見える。またここに映し出された映像はCGで立体的な動きが付いているので、まさにスター・ウォーズでR2D2が映し出したレイア姫のような雰囲気の立体的な映像が映し出されていた。すでにCESか何かで発表されていたようであるが実に注目度の高いサイネージではないだろうか。