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気になった製品たち
小寺信良
NAB会期2日目となる本日は、セントラルホール半分とサウスホールの2階を回ったところで時間切れとなった。
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まさにベールに包まれた新VARICAM
Panasonicブースでは、プレスカンファレンスにて詳しくはCineGearで、と発表された新しいVARUCAMが、まさしくベールに包まれた形で展示された。サイズとしてはかなり小型で、ボディ本体はキヤノンC700程度だろう。
正面左側からグリップ部が飛び出しており、おそらく縦にも横にもバリアングルグリップなのではないかと予想する。VARICAMシリーズなのでシネマスタイルの撮影向けだと思われるが、現行のラインナップではMOVIやRoninといったスタビライザーに載せるのが難しい。それらの撮影スタイルに対応できる小型軽量モデルなのではないかと予想しているのだが、CineGearでの発表を楽しみにしておこう。
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小型H.265エンコーダのZao-S
小型と言うことでは、ソリトンシステムズの小型H.265エンコーダZao-Sの実機を見る事ができた。カメラ映像を複数の4G回線に乗せてストリーミングするための装置だが、H.265採用としては最もコンパクトだ。
使用できる回線は3つ。microSDI端子を採用するほか、フルサイズHDMI入力もある。Wi-FiアダプタをUSB端子に接続すれば、スマートフォンやタブレットから専用アプリでコントロールすることもできる。こういう機器はカメラにくっつけたり背中に背負ったりするので、設定をリモートでいじれるのは便利だ。
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AWSのGray Meta
変わったところでは、AmazonのクラウドサービスAWSのブースは大盛況だった。それだけ映像コンテンツの消費がネットへシフトしていることの表われだろう。興味深かったのは、「Gray Meta」というクラウドソリューション。クラウドに上げられた動画コンテンツをスキャンして、エロ成分を検知する。国によってエロのレギュレーションが違うので、それも調整できるという。エロ監視に困っているサービス監視者御用達といったところだろうか。
次世代のシネマレンズ
江夏由洋
あまり目新しい新製品がない、という声を聴きますが、そんなことはありません。今年のNABの注目の一つはシネマレンズです。トレンドとしては「低価格化」が各社の共通テーマだと言えます。単焦点とズームレンズ、どれも百花繚乱です。
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アンジェニューのブランドを手にするチャンス!
アンジェニューの新製品、シネマズームのType EZシリーズは、なんと120万円から。Eマウントも選べる、15-40mmのショートズームと30-90mmの標準ズームの2本。高級レンズマイスターがいよいよ新しいフィールドに進出です。
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いよいよCPシリーズが新しくなりました!
そしてカールツァイスから新設計のコンパクトプライムレンズ「CP.3レンズ」が登場。電子接点とeXtended DataインターフェースがついたXDシリーズが上位機種としてラインナップ。なんと15mmから135mmまでの10本!すごい!電子接点とXDインターフェースから出力されるレンズのメタデータ(/i Technology)を利用すれば、ポストでの収差補正などで超効率的なワークフローを組める利点があります。感動のフォーカストルク実装なのも嬉しいですね。
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MKシリーズ。50-135㎜は今夏出荷予定
富士フイルムのMKシリーズも、そのスペックは次世代。50万円を切る価格で、18-55mm、50-135mmのT2.9というズームレンズ2本。FUJINONの技術が詰まった画質は、上位機種のZKシリーズと「同等」とうたわれています。Eマウントという狙い目がまた素晴らしい!!フォーカス送りによる画角の変化(ブリージング)もなく、焦点移動もないという、単焦点レンズの画質に挑戦するMKシリーズは時代のニーズに応えてくれると思います。書ききれませんが、SIGMAからのシネマレンズシリーズも現地では注目の的で、新しいレンズの時代がやってきと、取材初日に実感しました。
VRの世界に魅了
林和哉
今回、NAB初参戦でした。ずっと参戦準備はしていたのですが、関係各位に申し上げることが遅くなって、皆にビックリされてしまいました。
ハイエンドカメラの動向が視察のメインだったのですが、ふらっと訪れたVR村(VR機材があつまっている北ホールを愛情込めてこう呼場背手貰っています)。 そこでとあるプロダクトを見た瞬間に、ノーマークだったVRの世界に一気に持って行かれてしまったのです。アテンドしてくれた日本人スタッフさんが旧知の方だったので、英語があんまり得意でない自分もちょっと安心したところにパンチのあるソリューションでノックアウト。
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それは、NOKIAのOZOでした。
ほんの数年前まで世界を席巻していたNOKIA。スマホ時代になって、すこし苦労したと思いますが、世界一を取った開発力はさすがで、違うジャンルで、ひとつの完成したパッケージとしてVR制作スイートというソリューションを提案してきました。それは、撮影・録音→プレビュー→編集前のデータマネージメント→編集→パッケージ化までの一連の流れにおいて、業務として欲しいと普通思うであろうことを丁寧につぶしてきていたのです。
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8つのマイクの全方位定位音声の力はとてつもなく大きく、ポスト作業や撮影時のストレスがほぼ解消されるのを見た瞬間、映像制作・演出に集中できる環境が整ったことを感じて、どんどんとアイデアが溢れてきたのでした。デモ映像をみて、その直感は確信に変わり、VRでの作品作りにひとつの自分なりの哲学が生まれました。その視点から、各メーカーさんのVR製品を見て回り、善し悪し、これがあれば、あれがあれば、というものを探し求めました。
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NABがすごいのは、その答えが、各メーカーさんの視点からちゃんと提案されていて、見つけられると言うこと。昨年には足りていなかったものもあったそうですが、今年は、会場でフローを完成させるプロダクトが全部見つかりました。詳細はビデオを見ていただくとして、映像として完成させるためのバレ消し、CG足し、揺れ止め、カラーグレーディング。BORISのMocha VRがこれらの問題にソリューションを提供してくれていました。
VRはアトラクション的な使われ方にとどまらず、使い方次第で圧倒的な感動をオーディエンスに与えることができるはずです。その入り口が2017年のNABで開かれた。そんな気がしています。
今日も見つけた気になるモノ達
岡英史
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初日のPanasonicの発表以来、Facebookのタイムラインでも話題の「ベールを被ったカメラ」は本当にベールを被って展示している。その中身はこんな薄い布切れ一枚でも中々解らないが、筆者が感じるままに伝えるとAF105よりは明らかに大きい筐体にそれなりの太さを持つレンズが付いている。フォーカスリング辺りに赤いラインが付いているが、これはLレンズではなくフェイクだと思われる。そのレンズデザインは青いロゴのレンズに見えるがあのレンズにM4/3マウントってあったっけ?
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毎年GoProのブースは派手な演出とその装着例に使って居る車両に度肝を抜かれるのだが、今年は遂にこのMTB1台だけ。
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それとは対照的にDJIのブースでの取り付け例は今年はジンバルを装着した2シーターバギー。そしてその二つのブースが隣合っているのが面白い。正に世代交代の縮図なのかもしれない。
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今回の取材カメラにも使って居るCanon CN-E18-80mmの後継機種、CN-E70-200mmの展示があった。こちらも低価格シネズームとして今後のスタンダートな物になるだろう。質感や操作感は18-80mmと全く同じと思って良い。シネマと言うよりやはりマルチスタイルレンズと呼ぶのが正しいかもしれない。
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日本のバッテリーの長、IDXからは新製品のバッテリーが数種類展示されている。
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その中でもSonyのNP-Fタイプには新たに7.2V供給のXタップと5v供給のUSBコネクターが装備された。この位置ならカメラにセットアップしても邪魔にならないはずなので、今まで外部給電に頭を悩ましていた色々なパーツが簡単にセットアップ出来る。
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同じく日本メーカーのAZDENは昨年から積極的に新製品を出してきたが、今回も大判センサー系の小型の筐体カメラにピッタリなガンマイクの出展がある。中身は筆者も使っているSMG-250と同じ物を、筐体を小さくコンパクトにしたもので特性的には何ら変わりがないとの事。夏の終わりごろには日本でも販売される予定。更に今回写真には収められなかったが小型ミラーレスカメラをターゲットにしたマイクも開発中で今年のInterBEEでの発表予定。こちらも気になるところだ。
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相変わらずのBMDは今回も黒魔術を使った様だ。今までPCベースのスイッチャーがメインだったのが今回はコンパネ一体のハードウェアスイッチャーを出して来た。既にアメリカ国内では先行予約がガンガン入ってきているそうだが、実機を見ればそれも納得出来る。この筐体に色々ここまで機能を詰め込んだ企業努力はリスペクトしたい。解りやすいスイッチレイアウトはスイッチャー入門機としても良いだろう。
実は初日朝から風邪を引いてボロボロの体調からスタートした2017年。今年はカメラマンが多くNAB入りしているのでタスクを色々手伝ってもらい、出来る限り体を休ませてもらえて本当に助かった。気の置けない仲間に感謝!
今年のキャッチフレーズM.E.T
猿田守一
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今日も会場は人の波。これほど広い会場なのにどれだけの人が来場しているのだろうと本当に感心する。今年のNAB Showのキャッチフレーズは「THE M.E.T. EFFECT」である。M.E.Tは「MEDIA」「ENTERTAINMENT」「TECHNOLOGY」の頭文字をとってMETとなっている。そのキャッチフレーズはやはりアメリカ映像業界のトレンドの流れを表しているのではないだろうか。中でもNOKIAのような携帯電話でかつて知られていたメーカーが今ではVRの展示をおこなっていたりする。まさにEFFECT効果なのではないだろうか。
またこれからの4K/8Kにはネットワークやクラウドなど、今まで映像の世界とちょっと離れた所にあったネットワーク技術が必須となりつつある。映像屋にとってはIPなど何が何だかわからなかった世界である。しかし恐れるなかれ。Sonyなどはその部分を補うソリューションを考えているようだ。とはいっても局レベルのお話。しかし、そういう取り組みが行われつつある現在では将来の心配はいらないかもしれない。
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