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CineGearで発表されたEFマウント採用のシネカメラがついに登場

2017年のCineGearの発表で話題をさらったEFマウント搭載の5.7Kコンパクトシネマカメラ「AU-EVA1」(以下:EVA1)。その魅力といえば5.7Kスーパー35mm MOSセンサーを搭載し、Long GOPで4:2:2 10ビット記録へ対応したこと。特に4Kの画質は競合他社よりも抜きんでている。開発者の方々に話を聞いた。

EVA1は、ここがスゴい

  • 5.7K MOSセンサーによる、4K/2K 10ビット4:2:2の高画質
  • 14ストップの広ダイナミックレンジV-Logガンマ
  • 広色域V-Gamutカラリメトリのシネマ画質
  • デュアルネイティブISO(800/2500)
  • 本体1.2kgと軽量コンパクト

商品企画を担当した並川実氏(左)と、商品設計を担当した白濱洋史氏(右)

――EVA1のラインナップの位置づけを教えてください。

並川氏:パナソニックとしては、上は4KやHDR対応の映像向けでフラッグシップシリーズの「VARICAM」、下はマイクロフォーサーズシステム規格採用のミラーレス一眼カメラで「LUMIX GH」シリーズをラインナップしていますが、真ん中のポジションがちょうど空いたままここ数年来ています。

もともとは、GHシリーズと並行する形でマイクロフォーサーズの業務用ビデオカメラ「AG-AF100」をラインナップしていました。しかし、他社のSuper 35mmがこの業界の標準的なものになり、我々は市場に入り込めませんでした。その一方で、VARICAMのラインナップをもっと増やしてほしいという要望も数多くありました。我々も、上のVARICAMと下のGHシリーズの中間層を狙う新製品を作りたいという想いがありまして、新しいイメージセンサー、エンジンを開発することによりEVA1が実現しました。

――EVA1は中間の新ラインでVARICAMシリーズとは違うものですか?

並川氏:シリーズ的にはVARICAMとは別のものとなります。

――EVA1の名前の由来を教えてください

並川氏:EVA1は製品名ではなく品番です。公式ではないのですが、VARICAMの入門機という位置づけのニュアンスで、「Entrant Class of VARICAM」という意味合いもあります。なので、「E」とVARICAMの「VA」を入れています。要はVARICAMのビギナークラスという位置づけで、入門機を目指しているところもあります。

あくまでも品番ではありますが、この業界はネーミングも結構重要視されています。特にアメリカや欧米では愛称のついているカメラも多いので、親しみやすい名前で呼んでもらえたらいいなという感覚でこのようなネーミングにしました。

並川氏と白濱氏の現地取材を行ったパナソニックの大阪府・門真市にある事務所

――これまでの御社の製品の中でEVA1のような愛称をつけることはありましたか?

並川氏:弊社も他社もそうなのですが、これまでシリーズの名前をつけてきました。しかし、カメラ自身につけるようになったのはここ最近の動きだと思います。例えば、VARICAMにしても1つの商品の名前ではなく、シリーズの名前なのです。

――EVA1の価格を教えてください。

並川氏:定価は税別83万円です。

――EVA1の特徴は5.7Kのセンサーの搭載ですが、ポイントやプロフィールを教えてください。

白濱氏:最大の特徴は、5.7Kのセンサーから4Kの映像を実現することです。一般的に、4Kセンサーを採用した単板ベイヤー方式のカメラの場合、4Kに対して十分な解像度を発揮できないのが現状ですが、EVA1は4Kの約2倍の画素数を持つ5.7Kセンサーから4Kにダウンコンバートすることで、高解像度・高画質な4K映像を叶えています。

並川氏:EVA1で解像度チャートを撮影してみると、水平も垂直も2000本がはっきりと見えます。ここは大きなアドバンテージになるかと思います。

――5.7Kのセンサー以外の特徴を教えてください。

並川氏:コーデックも大きな強みです。出荷開始時のファームウェアでは4K 4:2:2 10ビットLong GOP 150Mbpsの記録に対応しています。Log収録し、ポストでグレーディング処理することを考えた場合、4:2:2 10ビットのコーデックを搭載していることが不可欠であると考えています。

また、高効率なコーデックを搭載することにより、手軽に入手できるSDメモリーカードに長時間の記録を実現しておりますので、メディア代のコストをかけずに仕事をまわしていけるところは評価されているのではないかと思います。コーデックに関しては、GHシリーズの開発部隊と共同開発することで、高画質、高効率、かつ、ノンリニアとの高い親和性も実現しています。

今後のファームウェアアップデートになりますが、ALL-Intraの400Mbpsという高品質なコーデックの搭載も予定しております。これがやはり1つ大きなポイントですね。

あとは、こちらも将来対応の機能で5.7K30p、4K60p、および、2K240pのRAW出力の対応も予定しています。もちろん、レコーダーメーカーと協力しながら開発を進めています。これらのアップデートは無償のファームウェアアップデートとして実現していく予定です。

EVA1は5.7Kセンサーの搭載だけでなく、4K 4:2:2 10ビットLong GOP 150Mbpsの記録も大きな特徴だ

――フレームレートの対応を教えてください。

白濱氏:まず通常のSuper 35mmのサイズで5.7Kから4Kを記録するモードは4K/60pまで撮ることができます。次にその5.7Kのセンサーを画素ミックスして4ピクセルを1画像にミックスして読み出す2.8Kモードがあり、この場合は2Kで120pまで撮ることができます。この場合も2.8Kから2Kにダウンコンしますので、2Kに対して十分な解像度が得られることになります。

さらに、Super 35mmからフォーサーズのイメージサークルを切り出した画素ミックスの2.2Kモードでは、2Kで240pまで撮影することができます。

――VARICAMシリーズの流れを踏襲しているとのことですが、VARICAMのどのような機能を継承していますか?

白濱氏:EVA1の開発はVARICAMの開発と同じチームが行っており、V-Log/V-Gamutを搭載し、VARICAMと同じ画づくりを叶えました。そのためVARICAMのサブカメラとしての利用も可能だと思います。

また、標準感度をISO 800とISO 2500に切り替えられる「デュアルネイティブISO」もVARICAMから継承した機能です。通常のカメラのISOは1つですが、EVA1ではデュアルネイティブISOと呼ばれる2つの標準感度を搭載しています。光が当たり電荷をためるアナログ部分の回路を2つ搭載することで、2つの標準感度を実現しています。

デュアルネイティブISOは、照明コントロールして撮るシネマの世界でも照明を減らしてコンパクトに撮影できるというところで評価いただいています。

――EFマウントの採用には驚きました。なぜEFマウントなのでしょうか?

並川氏:レンズマウントに関しては、さまざまな市場調査を行った結果、EFマウントを採用しました。EFマウントを採用することでよりたくさんのお客様に使用していただけると思います。

――AFでアピールする部分があれば教えてください。

白濱氏:ワンプッシュオートフォーカスと呼ばれる機能を搭載しました。これはVARICAM LTには搭載していない機能で、この機能を割り当てたユーザースイッチを一回押すことでフォーカスを自動で合わせることが可能です。

並川氏:EVA1では従来のハンドヘルドカメラのような連続的なオートフォーカス機能は搭載していません。ただし、4K以上の解像度ではシビアなピント合わせが必要になりますので、フォーカスアシストというところには重点を置いています。

そこで、フォーカスアシスト機能にVARICAMから高い評価を頂いているフォーカスの照合を四角の大きさで表現する「フォーカススクエア表示」と呼ばれる機能を搭載しています。ピーキングの場合はエッジのピークがわかりにくかったり、被写体によっては表示されにくかったりしますのでフォーカススクエア表示のほうが判別しやすいでしょう。

業務用ハンドヘルドでもオートフォーカスしっぱなしでコンテンツが撮れるのか?というとそういうわけでもないと思います。例えばシネマの撮影でしたらフォローフォーカス使って基本的にマニュアルでピントを取ることになると思います。ですので、フォーカスのサポート部分をしっかり実現して、オートフォーカスの技術については今後の検討課題だと思っています。

――EVA1はビューファインダーを搭載していません。なぜ、搭載を見送ったのでしょうか?

並川氏:こちらの件もいろいろ市場調査を行ったのですが、従来のポニーテール型のビューファインダーって本当に必要なのだろうか?という疑問点がありました。お客様でジンバルを使った撮影をする際にポニーテール型のビューファインダーがあるとカメラの可動範囲が狭くなって使いづらいという方が結構いらっしゃいました。だったら一層のこと省いてしまったほうがいいのでは、という経緯があり、EVA1ではビューファインダーを見送っています。

――ビューファインダーの搭載を見送ることに迷いはありませんでしたか?

並川氏:迷いました。でもお客様の声を聞いたうえで、早いうちに決断させていただきました。

――デザイン面ではボディーの赤いラインは印象的ですね。

並川氏:赤はAG-DVX200の時からトライしておりますが、他社と少しでも差別化のポイントを持たせたいという思いで実現しました。DVX200では赤を面で使って目立つようにしました。EVA1は、VARICAMとGHシリーズの中間のラインナップになるので、もう少し大人っぽい、落ち着いた赤の色を使ってみたいと考えました。

そこで、ラインも少し薄めにし、なおかつデザイン的には面が少しでも小さく見えるように意識しました。そういったアクセントをつけて見栄えも含めて工夫をしています。

――ドローンやジンバルで特にターゲットとしたモデルはありますか?

白濱氏:ターゲットはRonin-Mです。比較的このクラスでよく使われているジンバルです。きちんと搭載できるかや、バランスがとれるかなどを意識しました。

並川氏:そうですね。いろいろお聞きしていると、Ronin-Mは最低でもしっかりと対応してほしいとご要望をいただきました。

――最後に、EVA1の見逃せない特徴などがあればお願いします。

白濱氏:EVA1はインターフェイスも特徴です。SDIは6Gで4K/30pまで、HDMIはVer.2.0の4K/60pまで対応しております。他社には例がないと思います。4K/30pの場合は、SDIとHDMIから4K/30pで4:2:2 10ビットが同時に出せます。4K/60pの場合は、HDMIから4K/60p 4:2:2 10ビット、SDIからHD/60p 4:2:2 10ビットが同時に出せます。記録中の制限もありません。周辺機器やモニター、外部レコーダーを使用する場合に、凄く有利になると思っています。

並川氏:従来のハンドヘルドカメラの場合は電力の関係もあり、同時出力ができませんでした。ほとんどが、HDMIかSDIは片方のみというのが一般的だと思います。

EVA1は、SDIとHDMIを同時に出力できることによって、HDMIはATOMOSのSHOGUNなどのレコーダーに利用し、SDIはビューファーアウトに使うといった運用が考えられます。両方出ていることによって様々な使い方ができるようになるかなと思います。

白濱氏:また、トータルの使い勝手を凄く意識しました。そのなかでグリップも特徴となっています。ワンタッチで自由に角度を変えられたり、メニュー、アイリスを制御することが可能です。ハンドヘルド撮影時の使いやすさを意識した形になっています。すべて外せば、ジンバルやドローンに組みやすいように、突起をできるだけ排除したコンパクトな形状になります。

また、VARICAMから継承しているホーム画面というのがあり、撮影に必要な情報が一目でわかるだけでなく、こちらの画面からメニュー設定を変更することも可能です。

並川氏:あとは「EVA ROP」と呼ばれるアプリもリリースしています。DVX200やUX180、VARICAMに対応のiOS版は以前からリリースしていたのですが、EVA1からAndroid版のリリースも開始しました。fpsやNDフィルターをリモートコントロールしたり、シャッターやゲイン、iOS、ISO、ホワイトバランス、アイリスも変更できます。また、現在使用しているコーデックなどのカメラの状態を表示できるようになっています。

「EVA ROP」はワイヤレスでカメラ情報表示やカメラ設定値の変更を可能にするアプリ。iOS版のほかにAndroid版もリリースされている

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Vol.02 [最新カメラ探訪2018] Vol.04