txt:岸田浩和 構成:編集部

自己紹介

筆者が関わる映像分野は、ニュースメディアと企業映像やプロモーションなどの広告分野にまたがって、ドキュメンタリースタイルの映像制作を行っている。ニュースについても広告に関しても、新しいプラットフォームやメディアが多く、プレイヤーが試行錯誤しながら最適化を模索している状況だ。最近は特に、インターネットメディア向けの映像取材が多く、Yahoo!ニュースやVICE、民放の報道局が展開するWeb版ニュースメディアなど、動画を主体とした取材コンテンツの制作に、企画から撮影、編集まで携わっている。

取材コンテンツと広告映像では制作の立ち位置が異なるが、撮影手法に共通点がある。撮影対象は多岐にわたるが、多くは人物を追いかけるドキュメンタリー撮影が中心で、掲載先はWebが主体となっている。

ほとんどのドキュメンタリーコンテンツに関して、ナレーションを用いない演出に取り組んでいる。ナレーションの代わりに、インタビューや主人公のコメントを軸に物語をすすめていくスタイルだ。以下に一例を紹介する。

■ナイジェリア・イガンムFC 奮闘記 / Yahoo!ニュース個人(24分)

筆者が現在映画化を計画しているナイジェリアのサッカーチーム取材。9割のシーンを、EOS C100とEOS C100 Mark IIでソロ撮影した

機材の使用環境や方法に関しては、一般的ではない部分もある。ただ、「少人数」で「Web向け」に「ドキュメンタリースタイル」の映像制作を行う場合や、インディペンデントな制作体制で映画祭向けの作品づくりに取り組んでいる方、Webメディアの取材カメラとして導入を検討している方には、参考になる情報もあるかと思う。技術的な比較分析というよりは、使用者目線での使用感を中心にレポートしていきたい。

撮影スタイル

撮影は、単独か2名体制で行う事が多く、特にインタビューは2カメでの撮影を基本としている。Webメディア向けのドキュメンタリーの場合、コンテンツの完成尺は長いもので30分、短尺の場合は数分のコンテンツを制作することが多い。企業向けの撮影は3~5分程度の映像がボリュームゾーンである。

双方に共通する撮影フローとしては、撮影リストは作成するが絵コンテは使用しないことが多い。事前調査やインタビュー、下見は行い撮影計画は立案するものの、アングルや絵を決め込む絵コンテまでは作成しない。状況を見ながら臨機応変に余すことなく状況を撮影し、編集段階で細かい構成を行う。撮影素材の録画分数は、一般的な広告撮影よりも多くなる。

インタビューや景観を撮影する場合は三脚を使用するが、動きのある状況では、一脚やハンドヘルドでの撮影となることが多い。セットアップや取り回しの軽快さを優先し、ジンバルを使用することは稀だ。手ぶれ対策はもっぱら、簡易的なリグとCanon純正のイメージスタビライザー付きレンズの使用で対応している。

Canonユーザーの課題

2011年より、本格的な映像制作に乗り出した筆者は、Canon EOS 7Dを皮切りに、2012年よりEOS 5D Mark IIIを使用。2014年以降、EOS C100やEOS C100 Mark IIをメインに使い続けてきた。周囲の撮影仲間を見渡しても、2014年初め頃までは、圧倒的にCanonユーザーが多かった。複数人でチームを組み撮影を行う際も、それぞれが自機を出せばEOSシリーズで自然とカメラが揃うことが日常であった。

雲行きが変わったのは、ソニーのα7SとFS7が登場したころからだ。その後、5軸手ぶれ補正とカメラ内4K収録、高感度撮影を兼ね備えたα7S IIが登場した。さらに、FS7より小型でリーズナブルなFS5が登場し、このあたりから機材をごっそりとEOS C100シリーズからソニーに乗り換える者が増えはじめた様に感じる。特に筆者の周囲の撮影者の場合、2018年現在はソニーのFS7やFS5をメイン機種に据え、サブ機にソニーα7S IIを持つ組み合わせが人気である。

だが、筆者はあくまでもCanonにこだわった。色に関しては柔らかい肌色のトーンに愛着を感じ、機能に関してはデュアルピクセルCMOS AFに魅力を感じていたからだ。そして、後続機種の登場を心待ちにしていた。しかし、後継機種の登場の声はなかなかやってこなかった。しびれを切らし、いよいよ機材の下取りを販売店に相談しはじめた矢先に、吉報が届いた。2017年夏、ついにEOS C200シリーズが発売されたのだ。

テスト内容

今回は限られた時間でのテストとなったため、普段行っているドキュメンタリー撮影に近い内容の撮影を心がけた。たまたまこの日、映像プラットフォームVookのコンセプトムービー撮影が行われていたので、バケツドラム奏者の演奏シーンを撮影させて頂いた。

テスト撮影の模様/VOOKコンセプトムービー「映像新時代」より
※00:30~、00:50~付近に、テスト撮影の状況が映っています。なお、この映像の制作は別のカメラで撮影されています

テスト時のレンズ構成

筆者が通常、EOS C100 Mark IIと組み合わせて使用するレンズは以下の4本だ。今回の、EOS C200Bのレビューでも、この4本のレンズを使用した。

  • EF-S17-55mm F2.8 IS USM
  • EF70-200mm F2.8L IS II USM
  • EF35mm F2 IS USM
  • EF100mm F2.8Lマクロ IS USM

以前は、描画力に定評のあるシグマのARTシリーズで単焦点を揃え、ズームに関してはCanon純正のEF24-70mm F2.8L II USMを導入。足りない広角域は、トキナーの11-16mm F2.8ズームを使用していた。

しかし、2016年の後半以降、Webメディア向けのドキュメンタリー撮影のウエイトが増したことから、ドキュメンタリー作品で定評のあるVICEメディアの撮影クルーの機材を参考に、「レンズ本数を減らす」「手ぶれ補正付きレンズを使用する」観点で使用レンズを見直した。

上記にあげた現在のレンズ構成は、すべて純正レンズでイメージスタビライザー(レンズ内手ぶれ補正)付きの機種という共通点がある。純正レンズに集約した理由は、CINEMA EOS SYSTEMに搭載されているデュアルピクセルCMOS AFを使った、ワンプッシュAFを積極的に使用するようになり、性能を引き出すために純正レンズの使用を余儀なくされたから。もう一点は、三脚を使用せず、手持ち撮影や胸当てを使った撮影が増え、最低限レンズ内手ぶれ補正の効くレンズを求めたことが理由だ。

レンズ内手ぶれ補正が付く機種で、描画性能の優れたサードパーティーレンズも多数あったが、AFの動作スピードが遅かったり純正レンズと同等の性能が出ないことがあったので、必然的にCanonレンズの使用に落ち着いた。

なお、最も使用頻度の高いレンズは、EF-S17-55mm F2.8である。撮影内容にもよるが、上に作例としてあげたドキュメンタリー取材の場合、8割をこのレンズで撮影している。絞りの開放値がF2.8と明るく、IS付きのズームと言えばこの機種1択となってしまう。同社のフラッグシップである、Lレンズではないが、今のところ画質には特に不満は無い。

屋外で望遠を使用するときはEF70-200mmを使用するが、最短撮影距離の稼げない室内や狭い場所などは、EF100mmマクロを望遠代わりに撮影することも多い。50cmぐらいの撮影距離で被写体の表情を狙うと、目元をクローズアップした印象的なショットが撮れる。このレンズの強力な手ぶれ補正は、手持ち撮影でも威力を発揮する。

単焦点の35mmは、暗くなってからの撮影や、ポートレート撮影などに使用している。本来は、もう少し明るいF値のレンズが欲しかったが、IS付きで解放値がF2.0より明るく、焦点距離が50mm以下の機種を探すと、このモデルに限られてしまう。個人的にはもう少し明るい、IS付きの広角単焦点レンズの登場を切望している。

大きさ

EOS C100 Mark IIの重量は1,125g。これに対しC200の重量は1,430gと数値上はそれなりに大きくなった印象。実機を前にするとC300シリーズに近い大きさに見えた。手に取る前は、この300g近い重量アップから、機動力を活かした撮影には不向きではないかと感じていたが、グリップを握った瞬間考えが変わった。バランスが良く持ちやすいのだ。重量はアップしたが、ハンドグリップを持った際の手の収まりが良くなり、数値ほどの重量増を感じなかった。

C100と比較して多少重くなったと感じたが、バランスは良くなった。ハンドルの小型化や背が低くなった分、見た目上の大きさはさほど変わらない

初期のCINEMA EOSシリーズ特有の“背の高さ”が無くなり寸胴になった結果、バランスが良くなったのだろうと考察する。

私は、ドキュメンタリー撮影時に、約6割はハンドヘルドで撮影している。その際、手ぶれ補正対策を2段階で行っている。IS付きのレンズの使用が1つ目で、2つ目は汎用のφ15mmロッドを組み合わせたL型の簡単な胸当てを装着し、ストラップを首から掛けて撮影する3点支持だ(左手をレンズに添えるので、厳密には4点か…)。

従来のC100シリーズの場合、ストラップホルダーの位置の関係で、ストラップとモニターがどうしても干渉してしまったが、完全に解消されている。地味な改善点だがグリップを外してもストラップが掛けられる構造になっており、非常に嬉しい。

ネックストラップの使用に関し、他の撮影者からは「なんだか素人臭いなぁー」と笑われる事もあるのだが、手ぶれ補正以外にも非常に有効な場面があり、個人的には気に入っている。ナイジェリアのスラム内の市場で撮影を行っていた際、警察にいちゃもんをつけられ、揉めていたところ、次第に興奮気味の住人が集まってきて収拾の付かない状況に陥ったことがある。この時は、周囲の状況を見ながら素早く警官にワイロをつかませて迅速に現場を撤収する必要があった。また、ミャンマーの山間部で撮影中に野犬に襲われ、斜面を駆け登って車に逃げ込むという場面にも遭遇したことがある。

泥沼に足を取られたが、身軽だったため脱出できたことも(ミャンマー)

こうした状況では、機材を首に掛けいづれも両手をあけて走れたことから、難を逃れることが出来た。ネックストラップのおかげである。

ボタン位置

従来のCINEMA EOSシリーズを踏襲したボタンのデザインで、CINEMA EOSユーザーにとっては馴染みのある仕様。ボタンの並びはEOS C100 Mark IIよりも、EOS C300 Mark IIに近い印象。いずれにしてもシンプルな配列と操作方法なので、基本的なボタンの配列を覚えてしまえば、ブラインドでも操作できる。

ボタンの並びは、EOS C300 Mark IIに近い印象

AF性能

正直なところ、筆者がCINEMA EOSを使い続けている理由は、デュアルピクセルCMOS AFが優秀すぎるからに他ならない。この1点においてどうしても、他社のカメラに乗り換える気が起きなかったのだ。

従来から、CINEMA EOSのデュアルピクセルCMOS AFは、高速で正確に合焦し、迷いが少なく安心感があった。フルタイムAFにして、前方から向かってくる人物を捉えるような場面では、被写体の服装の色と背景が近似していても、食いつくようにピントが合い続けて驚かされたことがある。さらに、多少薄暗いシーンでも粘ってくれる。

EOS C200で採用された、純正モニターとの組み合わせによるタッチパネルAFは非常に使い勝手が良かった。細かく調整できるAFスピードやレスポンスを細かく詰めれば、かなり信頼性が増すだろう。EOS C300 Mark IIにも採用されていた、「前ピンと後ピンがわかるUI(デュアルピクセル フォーカスガイド)」の搭載により、MF時のフォーカス調整もかなりわかりやすくなった。

純正液晶の視認性も高く、タッチAFも感覚的に使いやすい。フォーカスポイントの上に、前ピンと後ピンがわかるUIが表示されている

また、AF-Boosted MFという機能も見逃せない。フォーカスの検出が不可能と判断された場面や大ボケ時には不用意にフォーカスを動作をさせない機能だ。行ったり来たりのフォーカス迷いやさらなる大きなボケが起こらない仕様だ。

このモードを使うと、最初の大きなフォーカス移動は手動で行い、ある程度被写体の輪郭が見えた段階でAFが作動してくれる。望遠レンズを使って、プレー中のサッカー選手を追いかけるような場面で使えるのではないかと期待している。

TECHNICAL TOPICS : AF Boosted MF【キヤノン公式】

他メーカーの競合機もAF性能は上がっており、性能差は僅差だと思うが、このわずかな差が大きい。一度しかない撮影チャンスで、動き回る被写体の焦点を安心してAFに任せられるという選択肢は、本当に心強い。

NDフィルター

C100系の3濃度から5濃度(2/4/6/8/10stops)に拡張され、電動となった。以前、アメリカの砂漠で行われたアートフェスティバル「バーニングマン」を取材した際、直射日光が白砂に反射し、内蔵NDだけでは光量を落としきれなかったことがあった。夏場の海辺や雪山でも同じようなことが起こると思う。そういった僻地撮影の際に、たとえフィルター1枚であっても余分なアクセサリーを減らして身軽に撮影出来ることは大きな価値である。レビューの当日には出番がなかったが、8stopsと10stopsの拡張されたNDには頼もしさを感じる。

感度

感度拡張モードでは、高感度側が最大ISO102400、低感度側のISO100の設定が可能となった。 個人的な感覚だが、EOS C100ではISO1250までが常用使用可能で、それ以上はノイズの影響が現れ編集時のノイズリダクションが必要であった。EOS C100 Mark IIでは2000まで、EOS C200では同じ感覚でISO3200でも十分使用出来そうな感触を得た。

モニター位置

C100シリーズで感じた不便さの一つに、背面のモニター位置があった。ハンドヘルドでアイレベルの撮影を行う場合は、顔の前にカメラを掲げるような不自然な体勢となり取り回しづらさがあった。C200では筐体の前方、ハンドル前側にモニターステーを取り付けることが可能となり、非常に扱いやすくなった。更にハンドルを外して筐体に直接モニターステーを取り付けることも可能になった。モニターのポジションも細かく変えることが出来るようになり、嬉しい。

併せてマイクホルダーも、筐体への直付けとハンドルへの取り付け双方が可能となり、撮影スタイルに合った組み替えが可能となった。サードパーティーのチーズプレートやロッドを使わずとも、基本的なパーツで幅広い設定が可能な点は、本当にありがたいと感じる。

前述した、ストラップを使用する撮影の際も、モニターとストラップの干渉は解消されている

撮影モード

EOS C200に関しては、各誌のレビューなどでCinema RAW Lightが大きく注目されているが、個人的にありがたいと感じたのは、Canon Log 3の搭載だ。

長時間の撮影を行うドキュメンタリーコンテンツの場合、現状ではCinema RAW Lightで全編を撮りきるプロジェクトは、(私の場合)そう多くないと予測している。むしろ、従来通りのLogモードでの撮影を軸に、ここぞという場面…例えば朝焼けや夕焼け、海や空の大きく入ったロングショットなどで、Cinema RAW Lightを使ってみたいと感じた。

C100シリーズに搭載されているCanon Logより、ダイナミックレンジが広がり、扱いやすさも兼ね備えたCanon Log 3の搭載は非常にありがたい。また、いざというときには、本体内でCinema RAW Light収録が可能という臨機応変な選択肢が増えたことが何よりも強力な武器になる。

さらに、短い尺のコマーシャル撮影では、全編Cinema RAW Light撮影を行うことで、表現の幅も広がり、大きなバジェットの制作にも充分対応できると感じた。

1台でドキュメンタリーとコマーシャル双方に対応したいと考えた際に、想像以上の選択肢が持てる1台である。唯一の不満は、EOS C300 Mark IIに搭載されている、4:2:2 10bit撮影のモードが搭載されていないことだ。今後、機能追加されることを期待している。

まとめ

当初は、C100シリーズの後継機が出たのかとしか思っていなかったが、実際に触ってみると、全く別物であることがわかった。上位機種のEOS C300 Mark IIに搭載されていたUIやCanon Log 3など、C100シリーズユーザーからはうらやましかった機能がいくつも移植されている。

さらに、筐体の形状が変わり、Cinema RAW Lightやタッチパネル型のAFなど、全く新しい機能が追加されている。単なるバージョンアップというよりは、一からコンセプトを練り上げたモデルのように感じた。だからこそEOS C100 Mark IIIでは無く、EOS C200シリーズというあたらしいナンバーが割り振られた理由なのだろう。

非常に高価なバッテリーの価格や、4:2:2 10bit撮影が出来ない点など、不満に感じる事もいくつかあるが、特に10bitモードに関してはファームアップを期待している。ビデオグラファーが自己保有で機材を持つなら、長期間保有していても陳腐化しない性能と、仕事の内容で使い分けられる多彩な撮影モードの搭載が重要になってくる。私見だが予算100万円前後で考えた際の、筆頭候補と考えている。

ラン&ガンスタイルで被写体を追いかけるドキュメンタリー撮影の場合、まずは小型のミラーレスカメラが候補に挙がるだろう。だが、大きさには多少目をつむってもそこから得られる恩恵を考えるなら、このEOS C200は間違いない1台だと確信できる。

txt:岸田浩和 構成:編集部


Vol.05 [最新カメラ探訪2018] Vol.01