txt:江口靖二 / 編集部 構成:編集部

CES2018で気になったディスプレイ製品色々

サムスンのメディア向けカンファレンスで発表された「The Wall」

CES2018のディスプレイ関連ではサムスンから今後が注目される新しいディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ「The Wall」が発表された。

サムスンブースでの展示の模様

マイクロLEDディスプレイは、RGBそれぞれの極めて小さいLEDを画面に並べた方式だ。LED自体が発光するのでカラーフィルターが不要であり、発光しなければ完全なる黒が実現できる。こうしたLEDディスプレイは、屋外ビジョンではすでにおなじみであるが、LEDのサイズがせいぜい1ミリピッチ程度なので、家庭のテレビのような視聴距離やサイズには向いていない。

CES2012で発表されたCrystal LED Display

また類似の技術としては、2012年のCESでソニーが発表した「クリスタルLED」がある。これは55インチの2Kディスプレイを600万個のLEDを駆動させるものであったがコスト面などから製品化されることはなかった。その後発展型として、「CLEDIS」が2015年に発表されているが、これはステージやデジタルサイネージなどの利用を前提としたものであり、ソニーブースには従来最大級のCLEDISが設置されプレゼンテーションに利用されていた。

ソニーブースに設置された過去最大級サイズのCLEDIS

今回展示されたサムスンのマイクロLEDシスプレイ「The Wall」は146インチで解像度は4K。輝度は2,000nitsとのことである。ユニットを組み合わせてディスプレイ化するようだが、ユニットのサイズや解像度は現時点で公表されていない。画質は若干白トビがあるもののかなり良好だ。4Kということは2500万個ものLEDを実装していることになるので、製造面、制御面の両方から極めて高い技術が必要で、家庭のテレビとして成立させられる価格になるかどうかは未知数である。

中央上部の平行線はブース照明の映り込み

なおこれまでよく言われる「LEDテレビ」というのはバックライトにCCFL(冷陰極管)に代わってLEDを使用しているものであって、単なる液晶テレビにすぎない。

もう一つ、LGからは「ナノセルディスプレイ」が発表された。LGのプレスカンファレンスではその詳細についての言及はなく、ナノセルというのはナノLEDのことで、サムスンと同様の技術で一騎打ちかと想像してブースに足を運んでみたところ、実はそうではないことがわかった。

LGのメディアカンファレンスで発表されたナノセルディスプレイ

60度の視野角でも色の再現性を維持するという

LGブースの展示

ナノセルディスプレイのポジショニング(LG Webページより)

ナノセル粒子による表現波長の違い(LG Webページより)

LGのWebページでは、

「Nano Cell Technologyは、不要な光の波長を吸収し、画面に表示される赤と緑の色の純度を高めるナノ粒子を使用します。その結果、劇的で画質が向上し、映画のような経験が得られます。さらに、もう一つのメリットがあります。LGのIPSパネルにナノセルテクノロジーを使用することで、幅広い視野角(60度まで)で幅広い色を見ることができるため、家の中で最高の座席のために競争する必要がありません。 Nano Cell Technologyを搭載したLG Super UHDテレビでは、映画館を持ち帰り、皆さんに素晴らしい席を与えてくれます」Vol.04 CES2018で静かに盛り上がる「なんかいい」UX大系

と記載されていた。つまり、ナノ粒子が不要な光をフィルタリングしているようなイメージだろうか。実際の映像は確かに視野角による色の変化は従来よりも少ない。

またソニーは「X1 Ultimate(プロトタイプ)」という、8Kまでの映像処理能力を持つ新プロセッサを発表した。ソニーブースでは85インチ8K、10,000nitsという超高輝度の液晶パネルと組み合わせて展示を行っていた。この新プロセッサX1 Ultimateは、従来のX1 Xtreamに対してリアルタイム処理能力が2倍になっているという。

メディアカンファレンスで発表するソニー平井CEO

X1 Ultimate + 8K HDRのデモのスペック

85インチ8K HDR 10,000nits

10,000nits 8K HDRから得られる映像は従来の映像づくりでは意識しなくても良かったような領域までも再現されている感じがする。これは、撮影時はもちろんだが、グレーディングの重要性がますます増してくることを予感させるものだ。

txt:江口靖二 / 編集部 構成:編集部


Vol.04 [CES2018] Vol.06