txt:小寺信良 構成:編集部
激戦区の軽量カメラシステム向けジンバル
プロからすれば当たり前のものだが、一般的にはほとんど興味を持たれないというジャンルがある。その最たるものが、「ジンバル」ではないだろうか。一時期Go Pro用やスマホ用ジンバルが人気を集めたことがあったが、実際にそれらを使っていた人たちには、アマチュアは少ない。何らかの形で映像を生業にしていた人たちである。
現在プロ用ジンバルの大手は、DJIだろう。RoninおよびRonin-2は、あっという間にFREEFLYのMōVIを追い越して、シネマ撮影では欠かせない存在となった。
一方で、もっとシンプルかつ軽量なカメラシステム向けジンバルは、決め手がなく激戦区となっている。Ronin-Sの登場で一定の道筋はついたものの、BIRTVではまだまだ決着が着いたとは思えない、沢山の競合製品を見かけた。
Feiyu Tech
ジンバル世界では老舗ブランドのFeiyu Techブース
その一つが、Feiyu TechのAKシリーズである。Feiyu Techは、有象無象あるジンバルメーカーの中で、Go Pro用ジンバルをいち早く日本のAmazonで販売し、認知度を得たメーカーだ。
同社新モデルのAK4000
AK4000は今年の新製品で、ペイロード4kgを誇るシングルハンドルのカメラジンバルだ。パン・チルトをコントロールするためのジョイスティックのほか、左サイドに様々なコントロールを割り付けられるマジックリングを装備したのがポイント。ジョイスティックでは制御できない残りの1軸の制御のほか、カメラのズームやフォーカスのコントロールが可能。レンズのリングを回すためのコントロールキットも標準で付属する。
タッチパネルと横のマジックリングがポイント
またタッチパネル式液晶画面を備え、モードや設定変更も本体のみで行なえる。加えてシャッター制御も可能で、長時間露光や自動回転しながらのタイムラプス撮影も可能になっている。価格は3700元というから、日本円に換算すれば6万円強といったところか。
2.7kgまで載せされる中級機AK2000
ペイロードが2.7kgの姉妹機、AK2000は2400元で、日本円では4万円前後。多彩な機能を持つジンバルがこの価格とは、2年前では考えられなかったことである。
Shenzhen Hontoo Technology
ジンバルスタビライザーのベンチャーShenzhen Hontoo Technology
こうしたシングルハンドのジンバル撮影をサポートするデバイスもある。メインホールの2階奥に小さなブースを出していたShenzhen Hontoo Technologyはまだ立ちあがったばかりのベンチャーで、販社を探している最中だというが、ベストタイプのスタビライザーアームを開発している。
この手のサポートギアは、探せばいくらでも見つかるものではあるが、同程度の品質ながら安いというだけで、中国では勝負になる。上位モデルでも約3000元(5万円前後)というから、かなり安い。ミラーレスや軽量レンズ付き一眼の動画撮影なら、10万円もかけずにスタビライズ撮影ができる世界がやってきそうだ。
伸縮可能なアームが付いたスタビライザ「HT-0504」、約3000元(5万円前後)
こちらはダンパー付きモデル「HT-0505」、2600元(約4万3千円)
Coman
日本のAmazonにも出店しているComan
一方で中国の三脚メーカーも、工作精度も含め徐々に力を付けてきている。特に軽量と堅牢性で人気が高いカーボンファイバー製の三脚は、中国ではアルミと比較してもそれほど高いものではなくなってきている。
すでに日本のAmazonにも販路を持つComanでは、カーボンファイバー製のモノポール「DX428CQ5」(Max1910mm/4段)が、簡易ボールヘッド付きで93米ドルと、かなり低価格だ。ただしこれは工場出荷価格で、実際には販売店の利益や送料等で多少高くなるだろう。だが機動性重視の海外展示会場取材用途としては、軽くて安いモノポールは1本欲しいところだ。
カーボン製モノポール「DX428CQ5」が93米ドル
完璧なものを求めれば、それだけコストがかかるし、チャンスを逃す可能性もある。それでも仕事として完璧を求められる現場が多いため、機材においても完璧なものを求めざるを得ないのが日本の映像業界の現状だ。
一方で完璧さを求めずにコストを下げ、あとはスピード感で回していくのが中国流である。とはいえ中国もだんだん製造の精度が上がっており、以前は10個買って2個動けば御の字ぐらいだったのが、10個買って7つぐらいは動くようになってきている。そういった国とうまく付き合っていくセンスが、今の日本に求められているのかもしれない。
txt:小寺信良 構成:編集部