txt:西村真里子・編集部 構成:編集部

CES2020開催直前2020年のテックトレンドを追う

CES 2020がいよいよ始まる。今年も17万人強が世界160カ国以上からラスベガスに集まり今後のコンシューマー向けテクノロジープロダクトの動向を探るのにもってこいのイベントだ。しかも年始のラスベガス、浮かれた街で新しいテクノロジーやビジネス動向に触れるのはワクワクする。さて、展示会(1月7日~10日)開催前に、メディア向けの「テックトレンド」を紹介するセッションに参加した(1月5日「CES 2020 Tech Trend to Watch」)。

その内容は単にテクノロジープロダクトのトレンドを紹介するだけではなく、ハードウェアが中心だったCESが「Into the Data Age(データ時代へようこそ)」というタイトルでデータの重要性が更に増す時代にも見本市としてビジネスエコシステムのハブで居続けようとする態度と、ハードウェア・デバイスで再生されるコンテンツやビジネスエコシステムについても議論される場所であることを大きく打ち出していた。映像の未来を知るために今回も各分野で活躍中の方々を招聘し、多元的に多様性を持ってCESに臨んだ。PRONEWS編集部でもそんな混沌さを伝えるべく、多様なアプローチ視点でCESを語っていく。

PRONEWS編集部

■特集:CES2020 Index

コンテンツこそキングである

セッションのキーワードとして出てきたのは5G、AI、IoT(Internet of ThingsではなくIntelligence of Things)、そして「Contents is King(ハードウェアではなく、そこに掲載される)コンテンツこそキングである」。「Contents is King」は使い古された言い回しだがハードウェア中心だったCESが、一人複数台スクリーンを持ち、AIの進化により個人に最適なコンテンツを配信可能になる時代に、コンテンツ、特にストリーミングサービスを前に打ち出しているのが面白い。

CES 2020の基調講演は11あるうち2つはストリーミングサービスについて語られる。一つはNBC Universalが2020年春からスタートする「Peacock」。もう一つが、ドリームワークス・アニメーションの元CEOであるジェフリー・カッツェンバーグと、ヒューレット・パッカード(HP)の元CEOのメグ・ホイットマンが立ち上げ2020年4月のサービス開始を前に10億ドルほど調達をしている注目の動画ストリーミングサービス「Quibi」だ。

スマホを前提ディスプレイとし、縦横対応、10分程度の短尺動画に特化し若年層へのリーチを狙っている。スティーブン・スピルバーグが日没後にしか見られない特別ホラーコンテンツを仕掛けていたり、GoogleやP&Gもスポンサーとして決定しているなど、ハリウッドの事情に詳しいジェフリー&メグならではの仕掛けが盛りだくさんだ。ストリーミングビジネスはまだまだ拡大していく。そしてCESの展示プロダクトカテゴリーに今年「エンターテインメント&コンテンツ」というのが追加されたのも興味深い。

エンターテインメントだけではない。ビジネス現場でもコンテンツがより必要になってくる。例えば農業従事者が農作物や環境情報などをコックピットで確認する5G & IoT/AI時代にはいままでディスプレイに触れてなかった事業者にもディスプレイ(もしくはXR)でのデジタルコンテンツが必要になってくる。

5Gにおいては、CESを待ち構えていたかのように、2019年末にAT&Tがラスベガスの街を5G対応したという。まだ多くの人々は5Gをリアルな環境で体感してないが、インフラが整いつつある。これからの5G時代に、CESが2015年から大きく取り上げていたIoTはどのように変化するのか?テックトレンドで語られていた内容に触れていく。

モノの知性化:IoTはInternet of Thingsから進化し、Intelligence of Thingsへと

いままでのIoTは「Internet of Things(モノのインターネット化)」だったが、5Gで大容量データを扱うことが可能になり、またそのデータをAIで活用することによりIoTは「Intelligence of Things(モノの知性化)」に変化していくという(2019年でも言及はされていた)。

ただつながる、だけではなく、つながった上でどのようなサービスを提供していくのかが、より重要になる。いままでのIoTは単体のコンシューマープロダクトを指して語られることが多かったが、5G時代が本格化する時代のIoTはエンタープライズビジネスでの活用が主流になるとも言及していた。

そのエンタープライズIoTも二種類に分けられる。

  • Massive IoT:(低コスト、電力消費量少、データボリューム少、ただし大量に必要な)スマート農業、建造物、物流など
  • Critical IoT:遠隔医療、交通網、工場内の製造プロセスなど

たしかに今までIoTというとポイントプロダクトを指して語られることが多かったのが、これからはポイントプロダクトからも収集したデータも活用し、よりダイナミックに新しい産業のエコシステムを作ることが主流となってきそうである。

また「モノの知性化」だけではなく「コトの知性化」も進みそうである。例で示されたのはシリコンバレーにあるマクドナルドのR&D Labが開始したドライブスルーサービス。音声認識、ボットでオーダーから決済までを完了させるという。

スペックベースで語ることのできたハードウェアの時代から、ユースケースやビジネスシナリオを考え協業パートナーとのエコシステムを作る複雑化した時代にはCESのようにラスベガスの街中をあげての「ごった煮」のなかで、ハードウェアからソフトウェア・コンテンツ、自動車・家電グローバル企業からスタートアップまでテクノロジーを活用した様々な粒度、角度のビジネスプレイヤーが集まる場所というのは最適なのかもしれない。

これから本番を迎える前からメディアデイのセッションを聞いて「ごった煮」を楽しもうと改めて思った。本番が楽しみである。

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[CES2020] Vol.02▶︎

WRITER PROFILE

西村真里子

西村真里子

株式会社HEART CATCH代表取締役。“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。