メーカー純正コントローラーでは出来ない他メーカーとの組み合わせが可能
本特集はNewTekのNDIに焦点を当てた企画だが、今回は趣向を変えてSKAARHOJ社のPTZカメラや、NDI対応PTZカメラを制御できるコントローラーを紹介しよう。
■SKAARHOJ PTZ Fly
価格:税込212,410円
問い合わせ先:アスク メディア&エンタープライズ事業部
「SKAARHOJ」はいったい何と呼ぶのか?はじめて見る方は、読み方や発音に苦労すると思う。本社スタッフの発音だと「スカホイ」と聞こえる。デンマークにある会社で、映像制作現場で直接操作、確認する便利な道具を15年前くらいから提供中だ。
今回は、PTZ Flyと名付けられたPTZカメラのコントローラーとAVer社の新製品PTZカメラ「PTC310U」とを組み合わせて接続を試みたが、初期設定の段階でまだ接続プロファイルが出来ておらず、作動させることが出来なかったことを残念なご報告とする。
しかし2021年10月1314日、コペンハーゲンで行われた「ProAV Expo 2021」のデモで、同モデルのPTZカメラが動作していたとの報告もあるので、近日中に公開されるだろう。
PTZカメラとコントローラーの接続は従来RS-232やRS-422のシリアル制御で行われてきた歴史が長い。TXとRXを合わせてボーレートを揃えると、かなり互換性が高い経験がある。しかし、IPでのコントロールはメーカーごとにソフトベースで様々なコネクションを工夫がされているのが多いようだ。
多く利用されているPTZカメラの制御プロトコルを複数搭載したコントローラー専門の市場もあるくらいだ。
さて、なぜPTZカメラメーカーからの純正コントローラーを使わずSKAARHOJのコントローラーに魅力を感じるかというと、メーカー純正コントローラーでは出来ない、他メーカーとの組み合わせが出来ること、外部制御可能な全てのパラメータに触れる可能性があることに加え、PTZカメラとスイッチャー、ルーティングスイッチ、カメラコントロール、カラーグレーディング等の異なる機器の連携制御もネットワークでできる可能性があるからだ。
SKAARHOJ PTZ Fly実機レポート
SKAARHOJの国内取り扱いはアスクが担当している。ここからはアスクからお借りしたSKAARHOJの「PTZ Fly」の実機を写真とともに解説しよう。
(01)電源を入れると社名の後に設定した環境の機種へ操作したいパラメータを触れるボリューム、ボタンが表示される。これは自分の好みで設定できる。
(02)複数のPTZカメラでも他メーカーの組み合わせがネットワークで可能だ。
(03)現在あるPTZカメラのプロファイルリストとなる。
(04)SKAARHOJ製品はUSB接続でセットアップアプリからIPアドレスを設定できるようになった。旧来ではマイコンのプログラム開発環境であるArduino IDEからスケッチと呼ばれる簡易プログラムでIPアドレスを設定する時代があったが、ずいぶんフレンドリーになってきたものだ。
(05)コンフィグレーションをアップデートすると、お好みの機器へのコントローラーに変身する。様々な機器との組み合わせでコンソールの操作したい場所にボタンを配置できる自由度は抜群だ。
(06)設定画面は、Webベースで遠隔から行う。どのボタンにどんな機能を割り付けるかを徹底的にカスタマイズ可能なのが嬉しい。
過去製品から見るSKAARHOJの魅力
ここからは同社NAB2017出展の様子を元に、SKAARHOJ製品の魅力を紹介しよう。まずお断りしなければいけないのは、ここで紹介する製品は全て生産終了やモデル変更している。あくまで過去製品の紹介だがその魅力は現行モデルにも引き継がれているので、SKAARHOJブランドを知る参考にしてほしい。
(01)モジュール式のMCシリーズ。下記で紹介するXCラインアップの「ポケット版」としている。ボタンにボリュームコントロールなど、何に利用するかを自分の好みで割り付けることができ、そのブロックをつないでカスタムのコンソールに仕上げていくことができる。自分好みのコントロールサーフェースがデザイン出来るわけだ。
(02)手に触るボタン、ジョイスティックなどの品質が機器メーカー純正品よりも上質な場合が多く、触り心地、操作感に定評がある。コスト削減から廉価な部品を使うケースが増えてきたからこそ、特に感じるところだ。
(03)手前はモジュール式のXCシリーズで奥はMCシリーズ。SKAARHOJの特長は機器本体ではなく、人の手に触れる操作部分に特化していることだろう。さらにIP制御の機器に対してのアプローチは、大メーカーでは不可能な柔軟性がある。
(04)カメラコントロールから多機能エンコーダーの制御まで、ラインナップしている。メニューの奥にあった機能を表面のボタンに呼び出したり、複数の機器を触れる環境を整えるためには必須の道具となるはずだ。
(05)細かなものでは、タリーシステムから、各種のVTRの同時スタートボタン、放送用B4レンズのリモート、音響調整ボリューム、GPIトリーガーのIP伝送などをラインナップする。見張っておきたいステータスランプ点灯など、従来リモコンが出来なかったあの機器からオペ卓上で操作が可能になる。
(06)BMDのカメラコントロールも、ソフトベースでは面倒だった操作が物理的なボタンで操作できるのはありがたい。DaVinci Resolveのミニコントローラーを流用するよりも、現実的に直感で使いやすい。
最近では、フルカスタマイズといった方向から操作コンセプトを明確に完成されたプリセットへ導いていく方向へシフトしてきているようだ。ボタンは、放送機器としてはなじみ深いNKKボタンとゴム製をラインナップ。一部機種は、オプションとしてゴム製ボタンをNKKに変更することが可能だ。
SKAARHOJの現行ラインナップを紹介
(01)ライブスイッチャーの「Master Key One」は、MEを駆使した制作現場で使いやすいように工夫されている。ATEM Constellation、Tricaster、vMixなどを対象としている。
(02)「Color Fly」と呼ばれるライブカラーグレーディングに対応するコントローラーは、BMDのカメラで同時に複数の色調変更を行うことができる。
(03)vMixを使ったリプレイコントローラーの提案も面白い。
(04)WaveBordは、ATEMのオーディオセクションの入力レベルをモニタリングしてフィジカルにモーターライズドフェーダーでコントロールできるのは便利だ。
(05)最近では、大型のサーフェース「Mega Panel」を発表した。ATEM Constellation、Tricaster、vMixだけでなく、SMPTE(放送標準規格)ST2110次世代ソフトウェアIP伝送スイッチャーなどのコントロールにいかがだろうか?
おのりん(こと 尾上泰夫)|プロフィール
映像に関わり47年。テレビの報道取材がフィルムからビデオに替わった初期のテレビで、報道、スポーツニュースをカメラマンとして過ごす。その後、制作に興味を持ち旅番組の演出を担当。さらにモータースポーツの中継番組からメーカーのプロモーション映像、大型展示映像などを手がける。インターネットでのIP動画配信でカジュアルな映像機器がもたらす動画の可能性を感じて、より小型でシンプルなシステムを啓蒙してコンテンツホルダー向けのコンサルティングや、発信する組織、個人に向けた動画の学校を主宰している。