NDI 5リリース開始
Vizrtグループは2021年6月2日、NDIの新バージョン「NDI 5」を発表。当初6月公開予定だったリリースを延期し、2021年7月16日よりダウンロード可能となった。NDI 5でどのように変わったのか、NDI Toolsからその様子を紹介していく。
NDI 5に進化し、RemoteとBridgeと呼ばれるツールが登場する。これらによって、ネットワークの垣根(ローカルセグメント)を超えた接続を実現予定だ。さらにAudio Directという音声を専用に扱う環境も用意された。これらの新機能はWindows版のみ。しかし、Mac版は旧来、協力会社の製品だけだったのでNewTek製品の登場は歓迎だ。
では早速、NDI 5で特に変化のあったNDI Toolsの機能を見てみよう。
NDI 5のハイライト
Bridge(Mac版は未リリース)
文字通り、2つ以上のネットワークをブリッジして、ビデオがそれらのネットワーク間を自由に流れるようにするもの。3つのモードがあり、1つはローカルネットワークで使用するlocalモードで、2つは2台のマシンを接続する方法。1台をHostモードにすると他の参加者からの接続を受け入れる状態になり、もう1台をjoinモードに設定するとしてHostに接続できるようになる。こうすることで、WAN上でもlocalモードと同様に機能して、一方のネットワーク上にあるNDIソースをもう片方のネットワークでも確認できる。
しかし、一番期待していたBridgeは残念ながら執筆時点(2021.08現在)でComing soon!と未実装だ。
Audio Direct(Mac版は未リリース)
Audio DirectもNDI 5の目玉だ。業界標準ともいえるSteinberg VST3プラグイン対応で、DAWからオーディオ信号をNDIに出力したり、NDIのオーディオをDAWのトラックに入力可能になる。
該当するプラグインをダウンロードしてインストールすると、PCで使ってきたDTM環境で音声のやり取りがNDIで可能になる。
Access Manager(Mac版も同名)
便利なNDIだが、やり取りする多くの信号が多くなると選ぶ手間が増えてくる。入力選択画面でスクロールが必要な量になると、整理したくなる。
Access Managerは、起動したパソコンが受け取るべき信号、送り出す信号をグループで分けて整理できる。
また、見つけにくいNDIデバイスや、電源の入っていないデバイス、まだ接続されていないカメラなどをExternal SourcesでIPアドレスと一緒に予約登録しておくと、スイッチャーなどの入力で先に設定しておくことができるので便利だ。
Remote(Mac版は未リリース)
スマートフォンのカメラ機能を遠隔から活用できるようになる。
My Connectionという接続ポイントをクラウドサービスに設定。そのQRコードを発行して、遠方のカメラマンと共有する。
そのQRコードからカメラアプリを起動すると、インターネットにつながっている場所から映像、音声が伝送可能となる。
Test Patterns(Mac版も同名)
カラーバーなどの基準信号を発生してくれる。Macでは旧来、SIENNA社の製品だった。NDI 5になってからNewTek社のものになり、Windowsと同様のインターフェースとなった。スマホでも使える。静止画(アルファーキー付き)のポン出しにも使えるので便利に使っている。
今後のバージョンアップに期待
NDI5は延期されながらも公開に至ったが、現在まだ発展登場の状態と言わざるを得ない。目玉のBridgeは未実装で、各アプリの対応もこれからだ。しかし、それでもNDI Audio DirectとNDI Remoteの提供は歓迎だ。特にRemoteは便利で、ぜひiPhoneをカメラとしてインターネット越しに利用してみてほしい。
おのりん(こと 尾上泰夫)|プロフィール
映像に関わり47年。テレビの報道取材がフィルムからビデオに替わった初期のテレビで、報道、スポーツニュースをカメラマンとして過ごす。その後、制作に興味を持ち旅番組の演出を担当。さらにモータースポーツの中継番組からメーカーのプロモーション映像、大型展示映像などを手がける。インターネットでのIP動画配信でカジュアルな映像機器がもたらす動画の可能性を感じて、より小型でシンプルなシステムを啓蒙してコンテンツホルダー向けのコンサルティングや、発信する組織、個人に向けた動画の学校を主宰している。