展示会2日目です。全体の構成が変わったNAB Show 2022(以下、NAB2022)会場も各ブースが程よい大きさで、1日かけて会場を回ると全体像を把握できます。詳細はこれから掘り下げていく予定です(え!)。

さて、朝一番で目にしたセッションが気になりました。PRONEWSの特集「Virtual Production Field Guide」は、2019年のCESでまさにこの地で見た「ゴーストバスターズ」の一つのボリュメトリック撮影のデモンストレーションがきっかけでした。In-Camera VFXなどバーチャルプロダクションはこの数年で驚くほど進化しましたが、さらにまた未来を示唆してくれる機会があったので紹介したいと思います。

「KILIAN’S GAME」の制作が示すこと

NAB2022初日、Sonyがパネルディスカッションで行ったのは、ソニーの技術や製品、バーチャルプロダクション制作技術を使い短編映画を制作し、その経緯を語るというものでした。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの高島芳和氏が登壇されていました。

メイキング映像を見れば一目瞭然ですが、その裏側を知らない場合は、短編映画として見逃してしまうかもしれません。作品には、デジタルシネマカメラ「VENICE 2」、ミラーレス一眼カメラ「α7S III」、ドローン「Airpeak S1」、「Xperia PRO」、バーチャルプロダクション用大型LEDディスプレイの「Crystal LED Bシリーズ」、Ciメディアクラウドサービス、立体音響技術などが使用されているそうです。

バーチャルプロダクションでは、ロサンゼルスの洋館で撮影し、その各部屋の3DキャプチャーデータをUnreal Engineでアセット化し、「清澄白河BASE」内のバーチャルプロダクションスタジオで再現撮影を行ったそうです。

これがLEDディスプレイに映し出された映像とは思えないぐらい馴染んでいる

つまり同じ空間を東京で再現し、演者と撮影することで、全てロサンゼルスの洋館で撮影したとも思える仕上がりになっています。作品はまさか二拠点で撮影したとは思えない仕上がりです。また演者がいる中で、部屋に放火するシーンも物理的なセットでは難しく、これまでのVFXでも難しいと思える部分でしたが違和感がありませんでした。

リモートでのものつくりに見えるその先

実際の撮影場所を別の場所で再現できることは、物理的制約がなくなるということです。それだけでも色々な可能性が広がりますね。

撮影現場映像をロサンゼルスと東京間でリアルタイムに伝送し、日米双方の監督がお互いの撮影手法、照明の状況などを確認しつつ、共同作業はクラウドサービスを用いて制作を進めたそうです。結果、日米の制作チームは一度も直接会わないままで、チームとしての一体感をどう醸成していくかというテーマがポイントだったようです。

まさに技術はクリエイティブを実現するために存在するという事実を目の当たりにした良いセッションでした。技術によって物作りが加速することは言うまでもないですね。また一つ未来がやってきた感じがします。

そんな未来に立ち会えるNAB2022はやはり面白いです。スタッフに会わずして制作を可能にする事例に巡り合えたことも、その一つでした。しかし編集者的にはやはり情報は足で稼がないと(どちらも大事です)!さっ、会場を回りますよ!