Vol.02 実際の撮影にDJI RS 3 Proを使用してみた

DJIシリーズは以前から使用しており、初めて購入したのは「RONIN M」というジンバルだった。これほど滑らかな映像を収録できるのが珍しくて、愛用していた。最近の撮影現場で使用しているジンバルは「DJI RS 2」へと機材のアップデートをしたが、片手ジンバルの撮影スタイルがあまり合わず、いろいろと自身に合う機材を探した。その結果が、「TILTA Ring Grip for RS 2」を装着するスタイルで、今では定着して基本スタイルになっている。

DJIRS3ProVOL02_01
DJI RS 3 Pro
RavenEyeはRS 3 Proの下部に装着できるが、分かりやすくするためカメラシュー部分に装着

実際の撮影現場で感じる便利な機能

普段からRS 2を使用している筆者が今回、RS 3 Proを使用してみていろいろと感じることがあったので、その部分をお話できればなと思っている。

筆者は撮影現場でRS 2とどういったところが具体的に変わったのかがすごく気になっていた。そしてRS 3 Proを持っていざ撮影現場に到着。

いつものように機材を組み立てる際にキャリングケースのチャックが1つで開封から装着までが本当にスムーズに作業を行えた。RS 2の時はキャリングケースの中身が二層になっていることもあり、「あれ?機材まだ出せてないね」など何度もキャリングケースの中身を確認することがあったが、RS 3 Proのキャリングケースになってからその様なことがないことに気付いた。意外とこういう部分が撮影現場ではありがたいことだったりする。開封レビューの記事「Vol.01 DJI RS 3 Proファーストインプレッション」にも記載したが、実際に撮影するシネマトグラファーの方やビデオグラファーの方のことを思って、RS 3 Proは誕生したのではないのかなと思った。

具体的には、撮影現場によく入る方は共感する方が多いと思うが、昼休憩でもなく、移動時間でもない小休憩と呼ばれる謎の時間。10分以下の休憩時間なのだが、ジンバルを使用している際のこの小休憩が一番しんどいのだ。

なぜなら撮影現場で小休憩に入るタイミングで、ジンバルを触らなくなるのと、ジンバルから離れてしまうため、電源を落としてジンバルにロックを掛けることになる。そうなるとキャリブレーションを取っているので電源を落とすともう一度電源を立ち上げる際に、キャリブレーションを取り直すことになったり、RavenEyeのシステムを使用している際は、またネットワークに接続するなど負担がすごく大きい。

電源を落とすのはバッテリーを節約したいわけではなく、素直に機材が心配だから念のためにジンバルのロックを掛けたいのだ。RS 2の際は電源を落として、ロックを掛けるまでだった。ただRS 3 Proは電源ボタンを一回押すと、自動的にロックを掛けてくれる。しかも電源が落ちることもなく、ロックを掛けることができるので、すごく小さなことかもしれないが、すごく考えられていると思った。

実際に今回の収録の際にも電源は落とさず、ロックだけ掛けて小休憩をやり過ごした。ちなみにもう一度電源ボタンを押すとロック解除になるのでご安心を。

DJIRS3ProVOL02_02

こういうジンバルを待っていた

実際にRS 3 Proを使って撮影を始めてみると、すぐに変化に気付いた。感覚的な話になって申し訳ないが、RS 2よりもRS 3 Proの方がジンバルの安定感があった。普段からジンバルを愛用している方なら分かるかもしれないが、ジンバルによって癖みたいなのがあり、それを理解して使用しているだろう。

ただ、RS 3 Proにはその癖の様なものが全く感じられなかった。言葉では表せないが、こういうジンバルを待っていた。本当に素晴らしかった。これは今回の組み合わせが原因かはわからないが、なんだか数百万するジンバルを操作しているような感覚だった。

そしてカメラはパナソニックLUMIX GH6を使用しているが、やはり普段のRS 2に比べて重量感は若干重くなっているように感じた。このセットアップでもかなり軽量を重視しているが、3分ぐらい持ちっぱなしで収録をしているとさすがに持てなくなってくる。

ジンバルを使いこなすために筋トレをしている友人もいたが、その友人がジンバルを使った撮影終わりにいつも言っていたセリフがあった。「ジンバルだけは鍛えられない筋肉にダメージが来る」と。今回使用していてそのセリフが頭によぎった。

DJIRS3ProVOL02_03

新シリーズが出る度に徐々に重量感も増してきているので、筆者の様なセットアップを考えている、もしくは既に導入されている方は、Easyrigなどで上から吊るすようなことも視野に入ってくるのではないだろうか。

DJIRS3ProVOL02_04

また今回の収録はワンマンで行っていたので、あまり時間を要するセットアップはできなかったが、RavenEyeを使用しスマートフォンをプレビューモニターとして使用した。このシステムは安定に撮影をスマートにしてくれるシステムだと思った。

RS 2でもRavenEyeは使用できていてその機能をRS 3 Proでも使用できるので安心した。ワンマンで制作を行うビデオグラファーの方にはRavenEyeを使用しない理由がないかなと思った。RavenEyeのシステムに切り替えるとスマートフォンでプレビューモニターを出せるので、約200g以下とかなり重量を落とすことができる。ワンマンの方はぜひ使用してほしいと思う。

Vol.02 実際の撮影にDJI RS 3 Proを使用してみた説明画像

まとめ

筆者が実際に使用してみて感じたところのまとめになるが、RSシリーズの完成形な感じがした。今までは少し不安定な部分もあったが、このRS 3 Proでその部分が補われており、個人的には大変満足できるジンバルではないかと思った。

そしてこのシステムで、様々なオプションの組み合わせ方次第で制作の可能性は広がっていくと思う(記事制作にはDJIの貸出機を使用させて頂いたが、このままRS 3 Proを使用していたいです)。

Ren Takeuchi|プロフィール

映像ディレクター。主にカラーグレーディングを得意とし、DaVinci Resolve公認トレーナーを務める。企画・ディレクション・撮影・編集をワンストップで行う。TVCM、WebCM、PV、ライブ配信、MVなど様々な制作を手掛ける。