Cine Gear Expoに参加して思うこと

シネマの機材や技術に一気に触れられる充実した一日になった。この世界に足を踏み入れるまで、筆者はあまり知らなかった。今、これらのプロジェクトを組み立てるクリエイターや技術者たちにさらなる理解と尊敬の念を抱き、映画制作の世界に足を踏み入れたいとさえ思うようになった。

しかし、これらの素晴らしい機材を使用するには、当然多くの費用がかかることは言うまでもない。さすがにこの業界にはレンタル事業者が多いこともあり、会場全体を見渡すと機材のレンタルブースが目立ったのも印象的だった。

この業界の大きな動きは、ハードからソフトまでのワイヤレス技術そしてその先のクラウドにあるようだ。ワイヤレスモニター、ワイヤレス通信、ワイヤレスファイルハンドリング、ワイヤレスクラウド管理など、誰もがワイヤやケーブルが邪魔されない世界を望んでいる。撮影しようとすると邪魔になるし、つまずいたり転んだりすることもある。ケーブルマネジメントは、この業界が熱心に解決しようとしている大きな問題なのだろう。

ALEXA 35をはじめとするカメラ以外に、会場で人気があったのはTeradek、Frame.io社の製品だ。オリジナルのフィルムストックキャプチャの時代は終わり、完全にデジタルビデオキャプチャに移行していることが分かる。フィルムキャプチャカメラの技術を進化させたものはなく、クラシックやビンテージのフィルムキャプチャカメラは一つも見かけなかった。

モーター駆動のプッシュカート、ケーブルマネジメントのためのガジェットなど、制作現場でのロジスティック技術における小さな革新や発明が存在し、この巨大市場には独自に参入する余地がある。すべてのブースが100万ドルの資金を持つ巨大なコーポレート企業ではなく、スタートアップの小さな企業が果敢に挑戦していることは新鮮だった。前回に続き各社ブースを紹介していこう。

会場から、各ブース紹介02

Canon

キヤノンの正面全景。広い!自由にカメラが試せる。これが通常の展示会とは違う醍醐味だ
EOS C70とCN-E35mm T1.5 LFの組み合わせでこのコンパクトさ。機動力が抜群
FLEX ZOOM LENSシリーズのCN-E20-50mm T2.4 L F
8K撮影可能なCINEMA EOS Rシリーズ「EOS R5 C」
業務用4Kディスプレイ「DP-V1830」。18型の薄型・軽量を実現

Frame.io

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Frame.ioのブースも人だかり

Adobeの一員となったFrame.ioも引き続きCine Gear Expoに参加。映画業界もこれからクラウド必至の時流に…。Camera to Cloudの時代へ。最新の各種カメラが見えるのも嬉しいところ。

Vol.01 活況なCine Gear Expo[CineGear2022]

RED KOMODOに後部装着Teradek Serv 4Kに注目。Frame.ioのクラウドに自動的にアップロードや4Kストリーミング可能なスグレモノ。さらにServ Microも発表されTeradek(CS)で展示された。

Cinegear2022

FUJIFILM

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FUJIFILMブース
Vol.01 活況なCine Gear Expo[CineGear2022]
Vol.01 活況なCine Gear Expo[CineGear2022]
FUJINON Premista 28-100mm T2.9とソニーVENICEの組み合わせ

Creative Solutions

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Creative Solutionsのブース
Vol.01 活況なCine Gear Expo[CineGear2022]
Creative Solutionsは、SmallHD、Wooden Camera、Teradekを扱う
Vol.01 活況なCine Gear Expo[CineGear2022]
ワイヤレスレンスコントローラーTeradek RT

映画の世界にも訪れているイノベーションの世界

実は、カメラやレンズの市場をすでに掌握したような巨大企業よりも、小さなイノベーションで前進し、自ら道を切り開いている中小企業の方に興味をそそられた。DJIはすでにドローン撮影技術で巨大企業となっているが、リリースする製品はイノベイティブなものばかりだ。DJI Ronin 4Dジンバルのセットアップを紹介したが、非常にコンパクトなセットアップが手頃な価格で提供されていることにはかなり感銘を受けた。

Frame.ioはついつい長居をしてしまった。非常にインタラクティブなソリューションだ。営業担当者から製品開発者を紹介され、その開発者がFrame.ioのデモをしながらプロセスを丁寧に説明してくれたのが印象的だった。Frame.ioブースは常に混雑しており、どうやらクラウドベースのプロセスが業界でも求められていることは自明だ。大容量のファイルをクラウド上で簡単に素早く制作チーム全員でコラボレーションするスタイルは、これからは当たり前になるのだろう。

筆者は一般参加者として、多くのことを学ぶことができた。また、他のシネマや映像関連の展示会についても調べてみたいと思う。パンデミックやサミットがあったにもかかわらず、全体的に素晴らしい経験だった。Cine Gear Expo 2023も参加しようと思う。

mike soops

L.A.を拠点に、アートディレクションとブランディングの分野で10年以上の経験を持つクリエイティブのプロ。技術や音楽を趣味としており、アーティスト育成やスタートアップ文化の個人的なプロジェクトにも取り組んでいる。東京が好きで良く来日している。いつか移住したいと願っている。