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Vol.02では、リモートカメラの初心者が必ず戸惑う映像伝送プロトコルを解説しよう。定番の「RTMP」から最新の「SRT」まで、映像伝送プロトコルの意味を理解して目的に合ったリモートカメラを選ぼう。

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図はパナソニック「AW-UE160W/AW-UE160K」の対応プロトコルの例。ビデオストリーミングプロトコルの欄に「RTP/RTCP over RTSP、RTMP、RTMPS、SRT」など、「R」から始まる名の似たプロトコルが多い。その意味を理解しよう

YouTubeのライブ配信目的なら「RTMP」をチェック

YouTubeなどの多くのライブ配信プラットフームが採用しているのが「RTMP」である。ライブ配信やオンデマンド配信に使用され、高品質な動画・音声配信がを手軽に実現することが可能だ。RTMPには安全性を拡張した「RTMPS」なども存在するが、YouTubeライブの場合は対応デバイスからのストリームのみにしか現状は対応していないので注意しよう(YouTubeのヘルプページにはRTMPSの記述があり、将来的には完全移行すると思われる)。ちなみに、Facebookのライブ配信は「RTMPS」に対応としている。

また、似たような用語の「RTSP」はRTMPに比べ、低遅延でストリーミングできるのが特徴で、主に監視カメラ向けのプロトコルとして多く採用されている。そのため、YouTubeやFacebookのライブ配信目的なら、特にこのプロトコルへの対応は意識する必要はない。

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YouTubeの配信設定のストリームキーに注目。アップロードするプロトコルにRTMPが使われている

高品質・低レイテンシを特徴とする「SRT」

SRTは「セキュアリライアブルトランスポート」の略で、遠隔地からの映像を高画質で転送できるプロトコルだ。もともとエンコーダーを手掛けるハイビジョン社が2017年よりオープンソース化したものだ。セキュリティもしっかりしていて、遅延も大きくなく、遠隔にきれいな画質で送れることを特徴としていることから、リモートプロダクションでもっとも使われていると言われている。

SRTの設定は、送り側に関してはRTMPとほぼ同じでそこまで難しくない。しかし、受け側はネットワークのポートを開けなければいけないので、それなりにネットワークの知識が必要になる。フォトロンはSRTを手軽に利用するためのクラウドゲートウェイサービスを提供中で、ネットワークの技術に詳しくない場合はこういったサービスを使う方法もアリだろう。

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Inter BEE 2021アスク・エムイーブースのSRT配信の様子。リモート相談コーナーでは、コミュニケーションはZoom、映像はSRTを使用。サイネージのようなきれいな映像で製品説明を実現していた

映像機器を接続するオープン標準規格「NDI」

NDIは、映像機器の接続でもっとも普及しているIP伝送テクノロジーだ。リモートカメラに搭載されているNDI規格には、主に「フルNDI(High Bandwidth NDI)」と「NDI|HX」の2種類がある。フルNDIはチップセットレベルで対応する必要があるために対応リモートカメラはBirdDogとNewTekのみ発売されてきた。一方、2017年に登場した「NDI|HX」はH.264圧縮を採用することでソニー、キヤノン、パナソニックなど幅広いメーカーから対応リモートカメラの発売が相次いでいる最中だ。

NDI|HXが登場した当初は、NDIよりも画質が劣り、画質を重視するならば、BirdDogとNewTekのリモートカメラを選ぶべきと言われていた。しかし、「NDI|HX 2」や「NDI|HX 3」の登場によりNDIと同等の画質を実現可能になってきている。また、NDIの帯域は約300Mbpsに対して、NDI|HXは同じフルHDを流しても約1/3から1/4くらいしか使用しない。つまり、カメラを複数台使用した場合のネットワーク構築のしやすさはNDI|HXのほうが優れている状況だ。そういう意味では、NDI|HXを採用するメーカーが増えつつ、BirdDogもNAB 2023ではついにNDI|HX 3対応のカメラを発売してきた。今、NDI規格対応のリモートカメラを選ぶならば、NDI|HX 3搭載がお勧めと言えるだろう。

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BirdDogのP120は、NDI 5やNDI|HX3といった複数の最新のNDIフォーマットのサポートが特徴だ

放送局の番組制作のワークフローに最適化された映像伝送規格「SMPTE ST 2110」

ST 2110はIP伝送方式の映像伝送規格だが、こちらで紹介しよう。従来のSDIなどのベースバンド伝送からIP規格へ置き換えた伝送規格だ。リモートカメラ業界では、パナソニックのAW-UE160W/Kだけが唯一ST 2110に対応している。特に放送局のような大規模基幹システムにST 2110によるIP化が進んでいるが、NewTekもST 2110とNDIの変換するコンバーターを発売中だ。さらにBlackmagic Designも「2110 IP Converter 3x3G」を発売開始して、これから小規模プロダクションにもST 2110の裾野は広がっていくと予想される。

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リモートカメラ業界で唯一対応するパナソニックの「AW-UE160W/K」
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Blackmagic Designからも2110 IPを意識した製品が登場。SDI機器をST 2110ベースのIPビデオシステムに変換する「Blackmagic 2110 IP Converter 3x3G」

泉悠斗|プロフィール

神成株式会社、AVC事業部 部長。マルチカムでの収録および配信をはじめとする映像制作全般を得意とし、最新の機材を取り入れた映像制作に取り組む。近年では、西日本一の長さを誇る水上スターマインを打ち上げる「福山あしだ川花火大会」の生中継をはじめ、「TOYAMA GAMERSDAY」などのe-Sports映像制作まで幅広く手掛ける。また、高校放送機器展事務局長として、学生の映像制作活動支援を行う。