Vol.03 リモートカメラの「自動追尾機能」を検証

今話題の自動追尾機能はどこまで実力があり、どんなことができるのか?AVITOKの「V449E2-NDI」、キヤノンの「CR-N700」+「自動追尾アプリケーション」、ソニーの「SRG-A40」の自動追尾機能に焦点を当てた実機検証を行ってみた。

お手頃な価格でAI人物検出を搭載:AVITOK「V449E2-NDI」

Vol.03 リモートカメラの「自動追尾機能」を検証
  • ・V429B4-NDI(フルHDモデル):市場実勢価格:税込166,870円
  • ・V449E2-NDI(4Kモデル):市場実勢価格:税込298,980円
  • ・C170(PTZカメラ用コントローラー):市場実勢価格:税込114,730円

AVITOK(アビトック)は、中国広東省深セン市に本社を置くビデオ会議ソリューションメーカーだ。国内では、株式会社アスクが取り扱いを行っており、4KモデルのPTZカメラと、PTZカメラ用コントローラーの販売を行っている。ここではAI人物検出を搭載した4KモデルPTZカメラ「V449E2-NDI」をピックアップして実機を検証してみた。

V449E2-NDIは、4K UHD解像度に対応したソニーのCMOSセンサーを搭載し、解像度は最大4K、フレームレートは最大60fps、25Xの光学ズームに対応する。人物検出に関しては、プロセッサと画像処理、分析アルゴリズムを内蔵し、リアルタイム追跡モードとゾーン追跡モードが利用可能だ。

ユーザーインターフェースは、Web UIを採用する。ブラウザにIPアドレスを打ち込むと、インターフェースが現れ、AI人物検出などを設定する。AVITOKはAI人物検出を標準搭載しているので、その機能設定も一つの画面に収められている。基本的にはWeb UIで立ち上げて、人物検出をオンにしてカメラの前に立てば、あとは自動で追ってくれる。シンプルなので、マニュアルを読まなくても迷わず使うことが可能だ。

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V449E2-NDIのWeb UI
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AI人物検出に関しては、「プレゼンターモード」と「ゾーンモード」の2種類を搭載する。プレゼンテーターモードは、一般的にAI人物検出と呼んでいる追い続ける機能に相当する。ゾーンモードは、シーンごとに割り振るモードだ。画面の下に画像が並んでいて、4つまでゾーンを登録可能。例えば左から2番目に設定したアングルの左端まで行くと、一番左の画像と同じアングルになる。

学校や授業の配信ならば、この「ゾーンモード」が最適であろう。「黒板の左側にいた時は左側だけを映す」「黒板の右側にいたときは右側だけ映す」といったアングルも可能だ。

カメラに「寄る」「離れる」の自動フレーミングには対応しないが、授業の配信で教師が前後に大きく動くことはないので問題にはならないと思う。AI人物検出を搭載したリモートカメラを選びたい場合に、最有力候補のリモートカメラとなりそうだ。

AVITOK V449E2-NDIの自動追尾機能を検証

アプリ追加によって自動追尾機能を実現:キヤノン「CR-N700」+「自動追尾アプリケーション」

Vol.03 リモートカメラの「自動追尾機能」を検証
  • ・CR-N700:市場実勢価格 税込約1,200,000円前後
  • ・自動追尾アプリケーション RA-AT001:市場実勢価格 税込約185,000円前後

キヤノンの「CR-N700」は、セットアップの時点から親切設計が感じられた。実は各社が採用しているWeb UIは、起動をしたくてもIPアドレスがわからなくて無駄な時間を費やしてしまうことがよくあった。CR-N700もWeb UIを採用しているが、「カメラ検索ツール」によってカメラのIPアドレスを調べることが可能だ。ネットワーク知識がなくても、同じネットワーク空間にいれば迷うことはない。このあたりの配慮はさすがキヤノンだと思った。

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Web UI以外にも、Windows版とMac版が用意されている「リモートカメラコントロールアプリ」からコントロールも可能
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CR-N700は自動追尾機能を標準搭載されていないが、自動追尾アプリを購入してインストールすることで利用可能になる。追加の手順は特にマニュアルを読まなくても可能だろう。特に戸惑うことはなかった。

自動追尾アプリケーションの設定は、6つのステップの「設定ウィザード」で行う。シルエットのサイズや追う際のスピード、背景のエリアなどを一通り設定が可能で、こちらもマニュアルを読まなくても設定は可能だ。

自動追尾アプリケーションの中でも特に優秀だと思ったのは、「構図を設定」機能だ。画面上にシルエットが表示されて、シルエットをドラッグして追尾対象の表示位置を設定可能で、人の頭上にどれぐらいの空間を作るかを感覚値で設定が可能。シルエットを中央に設定したり、横に設定したりすると、実際の映像もリアルタイムに動いてくれる。これはかなり革新的だと思った。

画面上にシルエットが表示され、シルエットをドラッグして追尾対象の画面内での表示位置を設定する。設定したシルエットに対して、リアルタイムに構図を設定してくれる

もう1つ気に入ったところは、追尾対象をロストした際の設定だ。追尾対象をロストすると正面にホームポジションに戻すリモートカメラが多いが、自動追尾アプリケーションはロスしたポジションで「画角を維持する」「初期位置に戻る」を選べる。

また、復帰のポジションも正面ではなくて、左や右など、ポジションの設定も可能だ。例えばセミナーの場合は、登壇者は必ず右上手にしかいないことが多く、ホームポジションがセンターなのは理想的ではない。演台が右の場合は、その演台の基準としたホームポジションを設定するなんてことも可能だ。

キヤノン CR-N700+自動追尾アプリケーションの自動追尾機能を検証

被写体の自動追尾は必見:ソニー「SRG-A40」

Vol.03 リモートカメラの「自動追尾機能」を検証
  • ・SRG-A40:市場実勢価格 税込約440,000円

最後に、ソニーの「SRG-A40」を紹介しよう。ソニーは、自動追尾機能を「オートフレーミング」と呼んでいる。自動追尾機能だけでなく、見ている人にとって心地良い画角に被写体が収まるフレーミングを実現できることからオートフレーミングと呼んでいるという。

カメラにはAIの機能を積んでおり、通常のリモートカメラよりも土台が少し厚くなっている部分にAIのグラフィックチップを搭載している。このチップによって、映像の中から人間の骨格の検出や頭部の位置の検出を可能にしている。骨格を検出することにより、被写体の姿勢や向きも把握して、高精度な追尾を実現できるという。

インターフェースは、Web UIだ。SRG-A40は自動人物検知を標準搭載しており、UIの同じページの中に機能が組み込まれている。

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オートフレーミングの設定はキヤノンと同じで、ウィザードを使って行う。被写体に対して上の空間をどの程度開けるのか、人物の大きさ、人が左に寄る、右に寄る、などの設定が可能だ。SRG-A40の特徴は構図をピクトグラムで設定が可能で、カメラ前に誰かを立たせなくても設定は可能だ。

実際に使ってみると、SRG-A40の人物検出はどのメーカーよりも強力だ。小さな横顔でも認識が可能で、後ろを向いていたり、人と人がクロスするシーンでも選択した人物を捉え続けてくれる。このあたりの機能はどのカメラよりも優れている。

作例は用意していないが、勢いよく走っても認識は可能だった。特に驚いたのは、ラフな人物イラストも認識できたことだ。人物を認識する能力に関しては、どのメーカーよりも優れた技術を持っているといって間違いない。

フレーミングに関しても、「人が寄る」「人が下がる」のズーミングも滑らかで、横方向への歩行撮影も映像の真ん中で捉えている。このあたりに関しても、自然で心地よい映像の仕上げる機能を持っていると感じた。

ソニー SRG-A40の自動追尾機能を検証

まとめ

3機種とも、価格や特徴もまったく違うので、使い所によって選ぼう。

がっつり追い込んでこれまでの撮影の延長線上で使いたいならば、キヤノンのリモートカメラ+自動追尾アプリケーションがお勧めだ。プロの現場で今までプロカメラマンが入っていたところを自動追尾アプリケーションで置き換えるなんてことも可能かもしれない。

ソニーのSRG-A40は、動きの早いスポーツやダンス、舞台の撮影現場に向いているだろう。基本的にはオールマイティーでどんな現場でも使えそうだ。

AVITOKのV449E2-NDIは、学校や企業で、今までリモートカメラは使っていなかったが、これからは自動追尾機能を導入してみたいという入門に適している。

泉悠斗|プロフィール

神成株式会社、AVC事業部 部長。マルチカムでの収録および配信をはじめとする映像制作全般を得意とし、最新の機材を取り入れた映像制作に取り組む。近年では、西日本一の長さを誇る水上スターマインを打ち上げる「福山あしだ川花火大会」の生中継をはじめ、「TOYAMA GAMERSDAY」などのe-Sports映像制作まで幅広く手掛ける。また、高校放送機器展事務局長として、学生の映像制作活動支援を行う。