「PRONEWS AWARD」で2023年映像業界を振り返ろう

今年で第14回を迎える「PRONEWS AWARD」。2023年はコロナ禍から復活の年とも言える。NAB 2023やIBC 2023などの大規模な展示会も開催され、いよいよ人の往来も増えた。映像業界を象徴するInter BEE 2023も盛況の内に幕を閉じた。これまで展示会合わせでの新製品も多かったが、独自に新製品を発表するようになったのもここ数年だ。

今年のトレンドは、部門賞にも表れているとおり、「PTZカメラ」「中判動画」「生成AI」「IP伝送」など様々だが2023年映像業界でのキーワードがそのまま今年のトレンドということになる。

今年に特に大きく感じることはAIの本格的な実装だろう。2023年初頭に広がったChat GPTをはじめとするAIの広がりは、我々映像業界にも大きな影響を与えている。

AIによる被写体認識AFを搭載したオートフォーカスなどは、ヒューマンエラーを起こさないために極めて精度が高く、各界のキャメラマンさえもそのAFを認めている(新機能を全て否定するのではなく、良いものは取り入れていく、その姿勢が映像業界発展につながる)。

Premiere ProやDaVinci Resolve、Media ComposerにAI機能が実装され始めている。作業の効率化や省人化が行えるところに大きなメリットがあるだろう。この進化のスピードで考えると、極論だが、将来は撮影さえもなくなるのでは?と想像してしまう。さてもう少し詳細に2023年を振り返ってみよう。

2023年、映像業界に起こった事とは?

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VENICE(手前)とBURANO(奥)の大きさ比較。BURANOは大幅な小型化を実現している

まずはカメラだ。ハイエンドのカメラにおいては、ソニーのシネマカメラとしてBURANOが発表されたことだ(実売は2024年春となるため選外となるのは寂しいところだ)。シネマカメラBURANOには、PLマウントカメラ初となるボディ内蔵光学式手ブレ補正機構と電子式可変NDフィルターの同時実装には驚きを隠せない。

さらにRED KOMODO-Xは、グローバルシャッターを実装し、低照度性能の向上やフレームレートを2倍に向上させ6K80Pや4K120Pを実現している。カメラの進化の話題に事欠かない。大きなトピックスは、富士フイルムが現行比最大2倍の信号読み出し速度を実現した新開発高速センサーとX-Processor 5を採用したGFX100 IIで、中判動画の世界に踏み出したことだ。2023年ハイエンドの映像業界の動きは顕著だ。

VLOGCAMシリーズでフルサイズ対応「ZV-E1」

一方で、高機能化は、映像制作の世界でもエントリーモデルでも十分対応できるという動きがある。Vlogカメラの一般化が顕著だった。フルサイズセンサー搭載vlogカムのソニーZV-E1は、α7S IIIやFX3と同等のセンサー搭載でありながら、AIを活用した「リアルタイムトラッキング」やS-Cinetoneを搭載し、安価で高機能な仕様を実現してきている。

ハイエンドな1台を使用するのではなく、キヤノン「EOS R8」のような高性能AF搭載の小型軽量エントリーモデルを複数台所有するなどの話もある。

log撮影や外部SSD記録にも対応したiPhone 15 Pro/Pro Maxなどスマートフォンの高機能化も侮れない。今年もそういう意味では選考は悩みが尽きない。

カメラに必要なレンズも同じだ。近年のシネマレンズのラインアップとしては落ち着いた傾向があるが、中華メーカーなどの勢いは目を見張るばかりだ。

国内メーカーに目を向けると、ソニー、キヤノン、ニコン、富士フイルム、SIGMA、タムロンからミラーレスマウント用のクオリティが高く新世代のレンズが発表されたことも印象深い。以上のようなトレンドを振り返りつつ、今年のPRONEWS AWARDに望んでみたい。

PRONEWS AWARD 2023でわかる映像業界の潮目

左から、PRONEWS AWARDグランドプライズ大賞。各部門には、ゴールド賞、シルバー賞を選出する

PRONEWS AWARDは、2023年の映像業界を大いに盛り上げた製品の中から、もっとも業界に影響を与えた技術・製品・サービス等をPRONEWS独自の視点で選ぶ賞のことである。編集部が、技術、市場性、将来性の視点から審査、選考し、表彰する。2023年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか?「PRONEWS AWARD 2023」としてPRONEWS流に振り返り総括していこう。基本、2023年中に発売された物を対象としている。

今年のノミネート部門は、「カメラ部門」「レンズ部門」「アクセサリー部門」「照明部門」「配信部門」「映像編集部門」の合計6部門を設けた。

この計6部門ごとに上位に選出された製品をリストアップし、ゴールド賞とシルバー賞を順次発表。そして再度、全部門から映像全分野を振り返り、PRONEWS AWARD大賞を12月末に独断と偏見で選出したい。あくまでもPRONEWSが独断で選出することは、あらかじめご了承いただきたい。

年の瀬にふと手を休め、みなさんもいろんなことがあった2023年に思いを馳せながら各部門を予想していただきたい。各賞は順次公開していきたいと思う。