株式会社 東京サウンド・プロダクション(TSP)のスポーツなどのイベント中継・配信を行うサービス「TSPリモート中継システム」に、4Kリモートプロダクション用 エンコーダー・デコーダー「Matrox Monarch EDGE」が導入されている。

同社は、主にテレビ番組やビデオソフト企画の制作、撮影技術、ビデオ編集・MA技術、音楽制作および音響効果・選曲に関わる制作プロダクション。コロナ禍も含め、ここ数年でインターネットでの映像中継・配信業務の拡大が進んだとのこと。

中~小規模のイベントでも使いやすい一般回線をベースにし、様々なコンテンツの動画配信に利用可能な本サービスについて、ご担当者に「Monarch EDGE」導入の経緯や、採用の決め手などを伺った。

4Kリモートプロダクション・WEB配信用エンコーダー「Matrox Monarch EDGE」

「Matrox Monarch EDGE」を活用したリモートプロダクション

リモートプロダクションプロジェクトについて、御社の取り組みをお聞かせください。

リモートプロダクションプロジェクトにおいては、撮影やスイッチングを遠隔で行い、現場の作業スタッフの省人化を目指して進めています。映像コンテンツを制作する上で作業効率化は避けられず、映像制作プロダクションでの先駆者として当社が進め、映像業界、配信業界のスタンダード化を目指していきます。

今まで予算の関係で映像コンテンツ化できなかったコンテンツも映像化可能になるよう進め、今までにない多くのコンテンツが生み出され、コンテンツホルダー様の新たなビジネスへの貢献ができればと考えています。

「Monarch EDGE」を使用した進行中のプロジェクトについてもお聞かせください。

スポーツ(特に格闘技)関係の遠隔でのスイッチング(リモートプロダクション)の実現を目指して進めています。

しかしながらそこに留まらず、さまざまなエンターテインメントコンテンツ、ビジネスコンテンツなど幅広い利用を考えています。

またインターネットライブ配信では、今まではソフトウェアエンコーディングが主流で、人材が足りていない状況などもありましたが、今後はハードウェア、マルチエンコーディングでの利用も進め、人材の効率化を図ります。

導入の決め手とは一体何なのか

「Monarch EDGE」採用の経緯は?また、採用の決め手は何でしょうか?

ビジネス展示会(Inter BEE)とパートナー企業様からのご紹介により製品を知ることができました。

金額面、及びエンコーディング面の両方が魅力的で、伝送路に関して専用線ではなく一般回線での利用も可能だと考え採用を検討しました。お客様に提供する上でのトータル的なコストバリューの可能性に魅力を感じました。

選定の際、他社の同等製品と比較されましたか?

はい。映像伝送の製品として4つ同時のSDI伝送ができる製品は、「Monarch EDGE」以外では(現時点で)皆無だと思います。

また、基本的には光の帯域が確保された専用線での利用が前提の映像伝送の製品が多く、トータルでコストがかかってしまう状況と考えます。

NDIの製品も検討しましたが、現場の汎用性(SDI製品の利用がまだ主になっている)なども考慮し選定しました。

実際の使用感を深堀り

使用の際の映像及び音声について、いくつかお聞かせください。

●映像ソースは?

SDI4ソースの同時伝送を基本として利用しています。

●カメラ台数は?

4台のカメラの遠隔でのスイッチングが可能なスタイルで利用しています。

●ストリーミングでの利用は?

今後検討を進めます。メインはエンコーダーとデコーダーの対向での伝送になっています。

●使用のストリーミングプロトコルは?

プロトコルはMPEG-2 TS、SRTもサブとして利用しています。

「Monarch EDGE」の処理遅延について、ご意見あればお聞かせください。

現在のフローは「イベント会場→東京(中継ベース)→配信」ですが、会場での収録と東京でのスイッチングにおいてソースによって音の遅延に差があるとのことです。

最終段階でその補正を行なっているようですが、やり方などが固定化されていけば解決されるのではと見ています。

また、その後の東京からの配信に関してはRTMPプロトコルになるので、規格上30秒程度は遅延が出てしまうのは現在の技術状況では致し方ないと考えます。

イベント(スタジアム)と制作施設(スタジオ)の間の物理的な距離はどれくらいですか?

東京から最大、北海道・沖縄になると考えています。 本島から離れる海底ケーブルの利用場所に関しては、トラフィックの状況で変化することも考えられるので、慎重に判断をする必要があります。

海外から東京への伝送のニーズはありますが、国内回線の閉域網での利用想定なので、国際回線での使用は現状では適していないと考えています。

音声はどの場所で追加されていますか?

東京で追加しています。

ロケには何人の技術専門家が必要ですか?

4台のカメラを使用する場合、カメラマン3名、カメラアシスタント2名(1名の場合もあり)、オーディオ1名、映像伝送1名です。

イベントの「Monarch EDGE」エンコーダーはどこに設置されていますか?

エンコーダーは映像ベースまで回線敷設をしますので(施設MDFを経由して使用場所まで光またはLANケーブルを敷設)、設置場所は映像ベース近辺になります。

「Monarch EDGE」エンコーダーに入るSDI信号は、カメラから直接送られますか?

カメラからの直接入力になります。現場内の映像伝送で無線を利用した際に障害が起きたのですが、原因箇所の追及が難しかったことがあり、有線でのケーブル敷設による接続が基本になっています。

機器が到着してから、イベントの準備にどのくらい時間がかかりますか?

映像関係(カメラ、音声など)の設置やテストもありますので、3〜4時間程度は必要です。

「Monarch EDGE」のタリーとトークバック機能は使用されていますか?

スイッチングアウトの送り返し伝送装置が別にあり、そちらにもタリーとトークバック機能が搭載されていますので、そちらを利用しています。

Monarch EDGEのタリーとトークバックの利用経験もあります。現場はiOS(iPhone)を使用しているので、Monarch EDGEのタリーとトークバックの方がスタッフは扱いやすいとのことでした。

「Monarch EDGE」導入がもたらす多岐に渡る利点

「Monarch EDGE」エンコーダーおよびデコーダーにどのような利点がありましたか?

一般の光回線IPv6利用によるリモートプロダクションの構築や4つの映像の同時伝送のみならず、4つの映像の4チャンネル同時配信など他の製品にはない「強み」を活かすことで、映像を展開する上で様々なシチュエーションに照らし合わせ、ネットワークを絡めたスタイルで、競合他社とは差別化した当社独自のサービスの構築ができる可能性がある製品だと思います。

自社のサービスの価値を最大化する可能性をもたらしてくれるのがこの製品だと思います。高い目標達成のために実現の可能性を高めてくれる手段=製品と考えます。

時間、コスト、設備などの節約にどの程度役立ちましたか?

リモートプロダクションの市場での活用はまだまだこれからですが、当社も販売促進を今後進めていくことにより時間、コスト、設備さらに人材の全てにおいて効率化できると考えています。

Matroxカスタマーサービスとジャパンマテリアルのテクニカルサポートの利用についてはいかがでしたか?

不慣れな状況の中、回線を使用してのテストなど、製品のみならず回線、ルータなど絡めてのテストや検証も多かったのですが、Matroxとジャパンマテリアルのサポート体制を大いに利用させていただきました。

「Monarch EDGE」を活用した今後の展望

今後の「Monarch EDGE」の使用について、計画をお聞かせください。

パブリックビューイングでの4つの映像視聴展開やe-sportsでの画面とプレイヤーなどの4つの画面の同時配信を簡易にできるサービスの構築なども検討したいです。

高品質映像をほぼ遅延なく同時に4つのSDI信号で伝送できる利点を最大限活用し、更なるサービスの開発を目指します。

株式会社 東京サウンド・プロダクション

株式会社 東京サウンド・プロダクション

NETテレビの音響効果集団として発足し、1963年2月18日法人設立。
1984年よりテレビ朝日が資本参加し、2016年12月に出資比率を上げて連結子会社化。 正式にテレビ朝日のグループ会社となった。
2017年7月1日付けで、同じテレビ朝日の連結子会社「ビデオ・パック・ニッポン」を吸収合併した。