株式会社フジテレビジョン(以下、フジテレビ)は、大規模国際スポーツイベントにおいて「Matrox Monarch EDGE」エンコーダーを使用したリモートプロダクションの実証実験(POC)を実施した。
「Matrox Monarch EDGE」を用いた実証実験について、フジテレビ 技術局 回線・送信技術部 主任 河井 宏允(かわい ひろまさ)氏に話を伺った。
REMI実証実験について
今回の実証実験の目的とワークフローを教えてください。
河井氏:
このPOCの目的は、「Monarch EDGE」を利用してリアルタイムでビデオをクラウド上のスイッチャーに送信し、リモートプロダクションの可能性を探ることでした。
フランス・パリにて複数のビデオ信号をエンコードし、クラウド上に配置されたスイッチャーに入力・スイッチングされたプログラムを日本・東京で受信するというワークフローを構築しました。
この実証実験の中で、「Monarch EDGE」はどのように活用されましたか?
河井氏:
フジテレビはこのイベント中に、デモ借用した「Matrox Monarch EDGE」を活用して複数のビデオ信号をリモートで管理しました。
エンコードされたビデオはクラウド上のスイッチャーに送信され、東京・本社でスムーズに受信されました。
このリモートプロダクションの試みは、「Monarch EDGE」が長距離のビデオ伝送でも高品質を維持し、同期や画質の問題を起こさないことを証明しました。
Monarch EDGEの利点と技術的な特徴
他社製品と比較して、「Monarch EDGE」の利点はどのような点にありますか?
河井氏:
主な利点はI/P変換に優れていることです。近年、IPストリームの映像に対して、インターレース非対応のプロダクトも多く存在するため、エンコード/デコードの際にI/P変換が必要になる状況が多く発生しています。「Monarch EDGE」エンコーダーは、インターレース(I)からプログレッシブ(P)への変換に優れた性能を発揮し、IPベースのワークフローで最適な映像品質を確保するために不可欠な役割を果たしました。
今後の展望と課題
POCの結果から、今後どのような点を期待しますか?
河井氏:
POCは成功しましたが、いくつかの改善点が挙げられました。制御・メディアポートの識別性向上、エンコード状態の識別機能の追加、H.265対応が要望されました。
フジテレビは、今後のマルチカメライベントで「Monarch EDGE」を使用することに強い関心を持っています。特に、タリーやインカム機能が必要となるケースでの活用を検討しており、また、トランスポートストリーム(TS)機能にも注目しています。
フジテレビが大規模国際スポーツイベントで「Matrox Monarch EDGE」を使用した結果、リモートプロダクションにおけるその価値が明確に示されました。
いくつかの改善点はあるものの、「Monarch EDGE」は今後、さらに多様な放送イベントにおいて活躍する可能性を秘めており、フジテレビのリモートおよびIPベースのプロダクションにおける新たな境地を切り開くことを期待しています。