NETGEAR Engageとは

IP伝送を利用する現場が増加する中、映像や音響の制作現場でのネットワーク管理の重要性はますます高まっている。従来は、BNCケーブルやオーディオケーブルをたどって接続状況を確認できたが、IP伝送では物理的にケーブルを追うことができないため、ネットワーク全体を効率的に管理するツールが必要となる。

この課題に対し、NETGEARが提供する「NETGEAR Engage」という無償の管理ソフトウェアは、特にProAVシリーズのネットワーク機器の管理を大幅に簡素化するツールとして高く評価されている。初期設定だけでなく、日常のネットワーク管理やトラブルシューティングにおいても強力なサポートを提供し、映像制作現場におけるネットワーク管理の負担を劇的に軽減する。

このソフトウェアは、昨年度からのアップデートでさらに便利になった。今回は、ネットギアジャパンに伺い、NETGEAR Engageのデモを取材したので、実際の操作画面とともにその便利機能を紹介していく。

なお、ソフトウェアのダウンロードやAV機器の接続方法については、以下の記事「はじめてのNETGEAR 「ProAVスイッチ」マニュアル。使い方や設定方法を解説」を参考にしてほしい。
NETGEAR Engageは、AV機器のネットワーク管理を大幅に簡素化する機能を多く備えている ※画像をクリックで拡大表示

映像制作現場で重宝する便利機能を紹介

NETGEAR Engageは、映像制作現場におけるネットワーク管理の課題に応えるため、複数の便利機能を提供している。IP伝送が広がりつつある今、物理的なケーブル接続に頼らず、ネットワーク全体を効率よく運用することが求められる。特に、映像制作の現場では、スイッチ間の複雑な設定や、多様なデバイスが混在するネットワークの管理が一段と重要になる。

Engageは、こうしたニーズに応えるための多くの機能を提供しており、それらを活用することで、現場での運用効率が飛躍的に向上する。ここでは、特に現場で重宝される主要な機能をいくつか詳しく紹介する。

Topology(トポロジー):ネットワーク機器の接続を視覚的に確認

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ネットワーク内のスイッチやデバイスの接続状況をリアルタイムで視覚的に把握できるTopologyは、IP伝送システムにおいて非常に有用だ。IP伝送では、物理的なケーブルをたどることができないため、デバイス同士のリンク状況や通信速度、問題が発生している箇所を直感的に確認することが非常に重要である。

デバイス間のリンク速度(Mbps)を上り・下りともに確認できる。現状では下に稼働している機器がないので0を示している※画像をクリックで拡大表示

たとえば、あるカメラの映像が突然途切れた場合、Topologyを使えばそのカメラがどのスイッチに接続されているのかを即座に確認できる。さらに、リンク速度に異常があるかどうかも一目で把握できるため、原因の特定もスムーズだ。複数のスイッチやデバイスが混在する大規模なネットワーク構成において、Topologyは現場でのトラブルシューティングを大いに簡素化してくれる。

さらに、赤枠内の「クライアント」を選択するとスイッチに接続された機器も見えるようになる※画像をクリックで拡大表示
ご覧のように当日に画面記録用に接続していたATEM Mini ExtremeのMACアドレスやスイッチへ接続しているポート番号なども確認できる※画像をクリックで拡大表示

AVプロファイル:映像・音響機器に最適なネットワーク設定を自動適用

映像や音響のネットワーク運用において、各デバイスに最適な設定を簡単に適用できるのがAVプロファイルだ。

IP伝送の現場で使用されるNDIやDante、SMPTE ST2110といったプロトコルに対応するデバイスは、通常、手動での設定が非常に煩雑だ。しかし、NETGEAR Engageでは、AVプロファイルを選択するだけで最適なネットワーク設定を自動で適用できるため、設定の手間が大幅に軽減される。

AVプロファイル設定 実践ガイド

AVプロファイル設定は非常に簡単で、実際の画面を見せながら紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

■Step 1: 設定画面に移動

まずは「Site Settings」>「Network Profiles」で以下の画面を開こう。新規でプロファイルを設定する場合は、青枠内の「Create New Profile」を、デフォルトを変更する場合は赤枠内の「Edit」をクリックする。

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■Step 2: プロファイル選択

①「Profile Template」の画面に移動し、リストからプロファイルを選択できる。この例では、筆者の好みでNDI6とDanteを活用できるプロファイルを選択している。

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■Step 3: ポートの色分け

次に、②「Profile Settings」では、プロファイルで指定されたVLANが割り当てられたポートを確認しやすくするため、色分けすることを推奨する。今回は、NDIということで青色に設定した。

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■Step 4: プロファイルを各ポートに割り当て

③「Port Assignment」では、各スイッチのポートにプロファイルを割り当てる設定ができる。今回は赤枠内のスイッチ「PRONEWS1」を選択し、ポートのグラフィックを表示。そして、青枠内の23番ポートをクリックして、このポートのみプロファイルから除外した。

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さらに便利な機能として、設定したプロファイルを他のスイッチにコピーできる。

今回は、スイッチ「PRONEWS2」のポート設定を他のスイッチにコピーする操作を想定している。「PRONEWS2」の赤枠で囲まれた「コピー」アイコンをクリックする

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「Copy Port Selection」の画面が出てくるので、コピー先のスイッチを選び、Applyでポート設定をコピーできる
大規模なネットワークでは、複数のスイッチにVLAN割り当てを迅速に適用でき、現場作業が効率化される。ローカルルールでポートの役割が決まっている場合にも、この機能は大いに役立つだろう。

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■Step 5: 設定を保存

最後に、プロファイル設定が終わったら、設定変更を反映させるために赤枠内の「Apply」、そして画面右上の「Save」を忘れずに実行する。

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最新のAVプロファイル一覧

NETGEAR Engageには新しいプロトコルやデバイスに対応するプロファイルが追加されるため、最新の製品や技術に対しても柔軟に対応できる。

以下に、現時点(記事公開日)でのAVプロファイルリストをまとめたので確認してほしい。最近では、オーディオテクニカやBirdDog、Visionaryの機器も対応可能になった。今後も対応の拡大が予定されている。

プロファイルカテゴリー 説明
Audio AES67 IPオーディオAES67対応デバイスやコントローラーの接続用プロファイル。PTPv2のトランスペアレントクロック(PTP-TC)が必要。
Audio Audio-Technica オーディオテクニカ製の商業用オーディオ機器(マイク、スピーカー、デジタルミキサー、ワイヤレスシステム)に対応するプロファイル。
Audio Basalte Multiroom Basalte製のマルチルームシステム(例:Plano Aalto、天井スピーカー)向けのプロファイル。
Audio Dante IPオーディオDante対応デバイスおよびコントローラーの接続に使用。
Audio Q-SYS Q-SYS対応のIPオーディオデバイスやコントローラーを接続するためのプロファイル。
Audio Soundgrid SoundGrid対応のIPオーディオ機器やコントローラーを接続するプロファイル。
Audio Video AVB AVB対応のIPオーディオ・ビデオ機器を接続するためのプロファイル。
Audio Video SMPTE AES67対応のオーディオ機器とST 2110ビデオ機器の接続に使用。
BirdDog AV Network BirdDogのAVシステムを自動検出し、簡単に設定するためのプロファイル。
Crestron DigitalMedia AV Network CrestronのDM NVX(ビデオ)、DM NAX(オーディオ)、NDI対応カメラ、PCなどを接続するプロファイル。
Data PCやコントロールネットワーク機器の接続用プロファイル。CobraNetは別VLANでサポート。
Kramer AV KramerのIPベースのオーディオ・ビデオ配信システムを複数のVLANにまたがって接続するプロファイル。
Lighting 照明制御用のsACN、Art-Net、MA-Net3対応デバイスを接続するプロファイル。
NUCLEUS Converged AV Network EvertzAVのNUCLEUS Session ManagerやUXPゲートウェイを単一のネットワークで接続するためのプロファイル。
Sonos Sonosのスマートホームサウンドシステムに対応するプロファイル。
Video IPビデオデバイスとコントローラーを接続し、音声は別VLANで管理するプロファイル。
Video NDI4 NDIバージョン4(mTCP)対応のビデオデバイスやカメラを接続するプロファイル。
Video NDI5 / NDI6 with Dante Q-Sys or AES67 audio NDIバージョン5・6(RUDP)対応ビデオデバイスとDante、Q-SYS、AES67対応オーディオを接続するためのプロファイル。
Video with AES67 audio IPビデオデバイスとAES67対応オーディオを同一VLANで接続するプロファイル。
Video with Dante audio IPビデオデバイスとDante対応オーディオを同一VLANで接続するプロファイル。
Video with Q-SYS audio IPビデオデバイスとQ-SYS対応オーディオを同一VLANで接続するプロファイル。
Visionary AV Network VisionaryのAVシステムを自動検出・簡単に設定するためのプロファイル。

Neighbor(ネイバー): ネットワーク上の接続デバイスを一覧で確認

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Neighborは、スイッチのポートに接続されている機器の接続状況やIPアドレス、ポート番号などを一覧で表示する機能である。これにより、各ポートの状況を瞬時に把握でき、映像制作現場でのネットワーク管理が大幅に簡素化される。

さらに、PCとサブネットが一致しているIPアドレスのハイパーリンクをクリックすれば、Web管理対応のデバイスの設定画面に即座にアクセス可能である。この機能は、日常的なコンバーターや追加機器の設定、運用にも非常に便利である。

IP Addressのハイパーリンク
赤枠内の「IP Address」のハイパーリンクをクリック※画像をクリックで拡大表示
NETGEAR Engageの画面
NETGEAR Engageから直接、各接続機器の設定画面にアクセスできる※画像をクリックで拡大表示

また、ネットワーク全体の接続状況を確認できる「Site Neighbors」も備わっており、各種フィルターが用意されているため、VLANを超えたデバイス管理やDante、NDIなどのプロファイルに基づく検索、さらにスイッチごとの接続状況やデバイスメーカーごとに絞り込んだ検索も可能である。

大規模な現場では多くの機器がネットワークに接続されており、それぞれの状態を個別に確認するのは非常に手間がかかるが、Site Neighborを使えば一目で状況を把握できる

Neighborを使ったネットワーク状況の把握
豊富な検索フィルターを備える※画像をクリックで拡大表示

PoE(Power over Ethernet):ネットワーク経由で電力供給とデバイス管理を実現

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NETGEAR EngageのPoE管理機能は、リモートで電源管理ができる優れものだ。

NDI対応のカメラやその他のIPデバイスがPoEを利用している場合、各ポートごとの消費電力を監視し、必要に応じてリモートでデバイスを再起動できる。この機能により、たとえばカメラが突然動作しなくなった際、物理的にアクセスすることなく、ネットワーク経由で問題に対処可能だ。

PoE Resetボタン
ポートを選択し、赤枠内の「PoE Reset」ボタンをクリックで再起動が可能※画像をクリックで拡大表示

特に注目すべきはPoEスケジューリング機能だ。これにより、特定の時間に自動でデバイスの電源をオンオフできるため、電力消費の最適化が図れる。例えば、夜間に使用しない機器をオフにし、朝自動で再起動させることで、無駄な電力消費を防ぎつつ効率的な管理ができる。

PoEのスケジューリング
PoEの電源供給をスケジュール設定して、指定した時間に自動でオン・オフできる※画像をクリックで拡大表示

Port Configuration(ポート コンフィグレーション):ポートの設定を柔軟にカスタマイズ

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以前から大きく進化したのがPort Configurationだ。かつては、パラメータを確認するだけで変更できなかったが、現在ではポートの各種設定を細かく調整できるようになっている。

例えば、ポートの接続スピードを「Auto」ではなく、特定の速度に固定したい場合や、1番ポートを無効化するなどの設定が可能だ。

接続スピードの変更
赤枠内の「Speed」で接続スピードを変更可能※画像をクリックで拡大表示

また、NDIのパケットフレームサイズを1500バイトに固定したり、フローコントロールが必要な機器に対しても、用途に応じて柔軟に設定を変えられるようになっている。このような詳細な調整が可能になったことで、ネットワーク環境をさらに最適化できる。

多様な設定項目
多様な設定項目があり、詳細な調整が可能※画像をクリックで拡大表示

まとめ

NETGEAR Engageは、1〜2台のスイッチから複数の大規模なスイッチ群まで、すべての管理を1台のPCで完結させることができるソフトウェアベースの管理プラットフォーム。映像制作現場でのネットワーク管理において、その利便性から欠かせないツールとなっている。一度使い始めると、その機能の豊富さと実用性に驚かされるだろう。

ぜひ、NETGEAR Engageを導入し、ネットワーク管理の効率化を体感してほしい。