SMODEを使ったバーチャルプロダクション実証実験の様子

フランス生まれのリアルタイムレンダリングツール「SMODE」の魅力とは?

最近、リアルタイム2D/3D制作やビデオマッピングなどの映像表現に関わるクリエイターたちの間で、フランス製ソフトウェア「SMODE」の名前を聞くことが増えている。SMODEは、リアルタイムコンポジットやレンダリング、アウトプットの機能に加えてxR制作にも対応するソリューションで、バーチャルプロダクションの現場でもxRの制御としても名乗りを上げつつある。

そんな今話題のSMODEの魅力を、ブリッジリンクのバーチャルプロダクションシステム実証実験の現場でSMODE JAPAN岡本恵太氏に聞くことができたので紹介しよう。

――SMODE日本法人はいつ開設されたのでしょうか?

岡本氏:

2019年夏にスタートしました。正確にはSMODE JAPAN自体は日本法人ではありません。ジェイミー・グッドイナフが代表の合同会社「HEADFULL」がサポートやトレーニングを提供する正規オフィシャルパートナーです。メンバーはテクニカルとクリエイティブの両方をHEADFULLのジェイミー、クリエイティブ担当として月原康智、私がセールスマネージャーを担当しています。

virtualproduction-vol12-SMODEインタビュー説明写真
SMODEを操作するジェイミー・グッドイナフ氏(左)とカメラトラッキングの検証としてLED前に立つ岡本恵太氏(右)

――SMODEの本社はどちらになりますか?

岡本氏:

本社のSMODE TECHはフランス・パリにありまして、約6人で開発をしています。まだフランス以外では莫大なユーザー数ではないので、バグフィックスへの対応は早いです。各国のユーザーとの情報交換やサポートはコミュニケーションツール「Discord」を使っています。

SMODE JapanのYouTubeチャンネルでは日本語のチュートリアルを公開中

フランスのショーやライブ現場で高いシェアを誇るソリューション

――主にどのような現場で選ばれていますか?

岡本氏:

SMODEは、イベントやショーの演出をリアルタイムレンダリングでコンテンツ生成が可能です。ステージシミュレーションも同じUIの上で確認でき、最後にプロジェクターや大型LEDディスプレイにアウトプットまでをSMODE1つでまかなえます。リアルタイムレンダリングソフトはNotch、Unreal Engine、TouchDesignerなど色々ありますが、その中でもSMODEはショーのオペレーションにも特化するように作られています。
例えば、ショーの本番前に変更点が発生したらこれまでは妥協せざるをえませんでしたが、SMODEはクオリティーや要望にとことんギリギリまで応えられることが強みです。採用いただいている現場では、リアルタイムレンダリングに注目して選んでいただいていますね。
あと、SMODEで作成したネイティブコンテンツ以外にもNotch、Unreal Engine4の動作もサポートしているため、ソフトの特徴を組み合わせた使い方もされています。

ステージを作成し、ビデオプロジェクター、大型LEDディスプレイ出力の様子をシミュレーション

――SMODE機能の特徴を教えてください。

岡本氏:

SMODEにはレイヤーベースのリアルタイムコンポジットツールが搭載されています。ノードやコード(コーディングは必須ではないが、対応可能)はなく、プログラミング知識がなくても操作できるのが特徴です。レイヤー、モディファイア、マスクの3つの機能で、2D、3Dコンテンツをリアルタイムに作成・操作できます。パラメーターの変更は即時反映されるため、ディレクターやクライアントと変更内容をすぐに確認できるのが特徴です。
タイムラインやループスを使ったアニメーション、MIDI、OSC、DMX、アートネットでのコントロール、ビデオ入力、Spout入出力、NDI入出力、オーディオ入力を使ったインタラクティブなコンテンツを作成。ビデオマッピング、LEDマッピングの機能で3Dステージシミュレーションを行うことができます。作成したシミュレーションは、出力先を切り替えるだけでステージに反映されます。

virtualproduction-vol12-SMODEインタビュー説明写真
SMODEはレイヤーベースのツールでAfter Effectsに似ている。それでいてすべてリアルタイムでコンテンツの出力が可能

――最近のバージョンアップの近況を教えてください。

岡本氏:

2020年7月にメジャーアップデートのSMODE 9を公開しまして、NotchBlocksのサポートなどが含まれる大型アップデートでした。2021年5月にはSMODE 9.1を公開しました。xRのプロジェクトをSMODEで作成と実行ができます。曲線LEDスクリーン、角LEDスクリーン、グリーンスクリーンなどの拡張現実プロジェクトの制御に対応し、またNotch VFXとUnreal Engine 4.26/nDisplayの統合に対応しました。

――Unreal Engineにバーチャルプロダクションの機能のサポートが増えていますが、その中でSMODEを選ぶ理由を教えて下さい。

岡本氏:

Unreal Engineの動向は当然私達も大変注目しています。もちろんゲームエンジンではありますが、アウトプットもできます。最近ではバーチャルプロダクション対応やDMX対応も実現しています。
現時点で言えるのはUnreal Engineはゲームエンジンです。ショーのオペレーションに特化しているわけではありません。ショーの本番を作り上げるには、SMODEや他のソフトが使用されていると思います。

費用は出力の規模に応じてI/Oチャネルをライセンス契約

――システム導入のコストを教えて下さい。

岡本氏:

コストに関しては全然優位だと思います。業界標準の半額以下です。ラインナップはソフトのみのSMODE Designerと、ハードウェアとセットのSMODE Stationがあります。
ソフトウェアのSMODE Designer Demoは無料でダウンロード可能です。すべての機能を利用するにはドングルが必要です。Demoは保存できません。ドングルは19,000円で、ドングルを使用することですべての機能が使用できます。
プロジェクトが完成して再生の準備ができたら必要な数の入力と出力のI/Oチャネルのロック解除のライセンスを契約していただく形になります。I/Oチャネル1つにつきフルHDに対応しています(1 I/Oの最大解像度は2048×1200ピクセル)。4Kは4つのI/Oチャネルが必要になります。4つのI/Oチャネルで4Kを1つ入れて4Kを1個出力するか、フルHDを4つ入れてフルHDを4つ出力することが可能です。8Kは16のI/Oチャネルが必要になります。
xRコンテンツの制御は24チャンネル以上が目安です(xRすべての機能を使用するには24 I/Oが必要。拡張ステージの以外の機能、AR、グリーンスクリーン は使用可能)。その場合の年間費用は約223万円、永久ライセンスはその約2.5倍の価格になります。I/Oが少数の場合は1ヶ月単位のサブスクリプション(2万円~)もご利用いただけます。
ハードウェアに関しては市販のPCにインストールしていただいても利用可能です。またSMODE JAPANでは使用用途に応じた性能、入出力の数をカスタマイズ可能なハードウェアの販売もしております。

――最後にSMODE JAPANからアピールをお願いします。

岡本氏:

私自身は前職から現在でも常時コンサートなどのライブやステージの現場に関わっています。なのであまり頭でっかちにならず、「こういう使い方ってあるよね」というユーザー目線でのサポートが可能です。ジェイミーもオペレーションとクリエーションの両方を今でも行っているので同じ気持ちです。
私達は「こんな感じのものをやりたいんだけれども」という要望に対して的確な答えを返せると思っています。そんなサポート面も含めて、ぜひSMODEに注目していただければと思います。

virtualproduction-vol12-SMODEインタビュー説明写真

◀︎Vol.12 [Virtual Production Field Guide] Vol.14▶︎