ハイビジョンの定義って?

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1440…1920…なんか呪文の様に唱えてる方がちょっと前までは良く見かけていた。これは、お解りのようにHDでのサイズの事。元々一般的なHD収録でのデフォとも言えるサイズはHDCAMである1440×1080であった。しかし民生機モニター(地デジテレビ)での謳い文句は”フルハイビジョン1920=HDは1920だけ!”の様な風潮が出てしまい自ずと1440って何よ?位の事を言い出す方が出てきた。

特にミドルレンジと呼ばれる業務機での仕事のレンジ(企業VP・舞台撮影・ブライダル等)をしていると、したり顔でチョイ映像の事を知ってるクライアントだと、「フルハイビジョンじゃないと困るよ」等と言われる事が妙に多い。でも納品はDVDだったりするので何の意味もないじゃん!的な発想になるのだが、このフルハイビジョン=1920神話が妙に困りもの!

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クライアント的には放送と同じようにしてくれよと言うのもよく解るのだが、問題はその放送用カメラ=1920と言う認識が強い。前記したHDCAMやDVCPRO-HDを1920×1080での収録と思っていると思って間違いないし、もっと問題なのは中間にいるプロダクションの担当者までもがその様に思っていて、業務用HDカメラ=1920収録が出来ると思っていることだ。もう!

1440で何が悪いんだ?

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確かにHDVというフォーマットはHDTVの初頭から存在するフォーマット。その発表は2003年と7年前のフォーマットである。HDCAMが更に6年前である1997年からの運用であり、この当時のHDと言うのは1440で全く問題なかったのだ。業務機より先に民生機がAVCHDフォーマットとなり1920を実現してしまったのがこの様に変な1920神話を生み出してしまった結果だと思われる。では実際HDVと言うフォーマットは本当に駄目なのだろうか?考え方や運用方法にもよるが筆者的にはまだ第一線のフォーマットだと思っている。

もちろん他フォーマットよりも劣っているところも確かにある。その最たる部分は磁気記録エラーのひとつであるクロッグだろう。HDVフォーマットの定義通りこの現象で15f程映像ノイズが出てしまう。此を確実に防ぐ方法と言うのは無く、もう単純にテープと記録ドラムの微妙な相性としか言い様がない位だ。新品のHDVテープを使っても駄目…、かと思えば再記録のDVテープでは問題がなかったりする。クロッグに悩まされる人は、悩まされる人もいれば全くクロッグで悩まされた事が無い方もいる。個体の問題かもしれないが、ある意味”運”と言う言葉で表現するしかない。次に音声関係が弱いと言う指摘。リニアPCMが記録できない為に、音楽系の収録には評判が良くないのも確か。しかしクロッグに関しては純正でCF録画ユニットを出すことでブロックノイズというのは物理的に0に近くなっている。また音声に関してはリニアPCMには音質では負けてしまうがその代わり4ch入力をする事が出来る。つまりは使い方と言う事に話が戻る。<.P>

だから今こそHDV?!

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1920録画と言えば最近では、色々なフォーマットがありHD422やIntra100、EXやMXFフォーマット、AVCHDもある。しかしコストパフォーマンスを考えればDV時代の資産を全て引き継げるHDVの方が遙かに利用価値は高い。そして実は消費電力と言う事を考えると定回転で廻っているモーターよりもエンコーダーの方が、実は電力の消費が大きい。全く同じ筐体でフォーマットの違う機種であるZ5JとNX5Jを比べると解るはず。

Z5J=HDV記録時:7.1W(マイク・VF使用) NX5J=7.9W(マイク・VF使用)

この筐体で0.8w違うと言うことは、同じバッテリーでも収録時間が変わる、実はカタログにも載っていないが微妙にNX5の方が実測値の重量は重かったりする。SONYコーデックは他のメーカーよりも小電力で動いているのでHDVフォーマットがHDとしては一番バッテリーに優しいと言うことになる。さらに編集時の事を考えると最近話題になったEDIUS6では上位バージョン意外ではMXFコンテナを採用しているフォーマットは全てアウトになった。元々HDVはNLE上でネイティブに軽く動くのは周知の通り。

AVCHDでは現状4ライン程がストレスフリー(レンダリング無し)だがHDVならチョット前のデュアルコアでさえ4ライン動く。更にVPの収録現場では撮影終了後にそのまま素材を持って帰る場合が多いのでCFとテープとがハイブリットで記録できるHDV意外では中々面倒な事になる。

結局は…?

少なくともHDVが1440だから映像良くないかと言われればそんな事は絶対に無い。質感や色の事を問題視する声も在るがキッチリとピクチャープロファイルを追い込めば全く問題がない。しかもS270JやZ5J等はプロセスが10bitで動いている。HDCAMが8bitで動作ということを考えればその潜在能力は想像できるはずだ。例えばスタジオ撮影等でS/Nを稼ぐ為にマイナスGAINを入れるが、その場合はDレンジも普通は狭まるが上記のカメラはDレンジを保持したままマイナスGAINが打てるという事だ。

HDVは確かに古いフォーマットであることは間違いない。しかし古い=使えないと言う事ではなく、使いやすいフォーマットという認識が正しい。ブライダルの現場でも言われるが、その様な1920信者的な発言をする人に限って何も自分で努力・検証すること無く語る方が目に付く。しかし1440しか撮れないHDVを否定するのは全く持って問題外の事…。

さて次号はInterBEE直前になるはず。今年のInterBEEは今の所もの凄く静かな分、何が来るか解らないのも確か。もう少し情報が出るのか妄想が勝つのかこの時期は結構楽しんでいたりするのでその辺を伝えていきたいと思う。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。