2008年の夏にはアメリカでは最近の状況と同様にガソリンの市場販売価格が急上昇しました。その時にアメリカでは「E-85」というエタノール85%とガソリン15%を混合した自動車用の燃料が市場に登場しました。

アメリカ国内で豊富に産出するトウモロコシを主体原料としたバイオ発酵により製造されるエタノールは当時ガソリンの市販価格が1ガロン当たり4.09ドルに達するという高騰でしたので、価格面でも安価で安定な供給が市場へ行えると言う事からガソリンに代わる救世主となるかと思われましたが、それ迄牛などの家畜の飼料として使用されていた分のトウモロコシがその多くを自動車燃料用に振り向けられた事から価格の上昇をまねいて大きな問題となりました。

また、当時このE-85には下記の様な不具合点が指摘されています。

  1. E-85を給油して使用する自動車にはエンジンがいわゆるフレキシブルタイプと言って通常のガソリンとE-85 のどちらも支障無く使える物となっている事が必要である。
  2. E-85を給油出来るガソリンスタンドが少なく、それをみつけるのに大変手間がかかる。
  3. E-85を満タンにして走れる総走行距離がガソリンの時に比べて10%から30%短くなる。
  4. 価格の方は上記の各項目を犠牲にしても購入したくなる程安くなっていない。

と言う事で、コロラド州全体の月間売り上げは936,007ガロンの記録を最高としてその後低下して来ており、人気がありません。この936,007ガロンという数字はコロラド州全体の全自動車への燃料売り上げ金額で0.41%に相当します。

ところが、ここへ来て再びガソリン価格の高騰が問題となってきており、今回はオバマ政権ではこのE-85の普及浸透に力を入れており、下記の様な戦略を実施しています。

  1. フレキシブルエンジンの自動車の普及の為にGM、フォード、クライスラーの3社は来年迄には全体の半分のモデルについてE-85 対応のフレキシブルエンジン搭載とする。
  2. フレキシブルエンジンの車のガソリン注入口のキャップの色は明るい黄色として、ガソリンスタンドのE-85のポンプのガソリン注入ホースの色も明るい黄色とする。
  3. エタノールの製造にはトウモロコシに代えて木の切りくずやおがくず、そして海藻などの食料ではないセルローズ質の材料を使う様にして、その製造者には政府ではその製造設備に必要な投資に対して資金援助融資を行う。
  4. このセルローズ質のエタノールの製造目標としては2011年中に全米で2億5000万ガロンとする計画であり、更に2013年迄には10億ガロンをE-85に使用する事を目指す。そして、2022年迄には360億ガロンのエタノールの製造が行われている様にする、としています。
  5. ここ5年以内に全米で1万カ所以上のE-85のポンプを装備するガソリンスタンドが存在する様にする。そして、新たにE-85のポンプを設備するガソリンスタンドには、その資金援助融資を行う。
     ちなみに、現在全米には800万台のフレキシブルエンジンの自動車が使われており、E-85のポンプを有するガソリンスタンドの数は2300カ所となっています。
  6. アメリカがガソリンを抽出するのに使用する輸入原油の量を2025年迄に現在の1/3に引き下げる事を目標とする。

と言う事で、いよいよアメリカでは本格的なE-85への対応策がとられることとなって来ています。ちなみに、デンバー地区でのごく最近のレギュラーガソリンの平均市販価格は1ガロン当たり3.61ドルとなっており、それに対してE-85の平均市販価格は1ガロン当たり2.99ドルとなっています。

今後、E-85の購入需要が本格的となり、価格がいま一段の魅力的な安価となればアメリカでの自動車燃料としてのE-85が主役となる日が来ると思われます。

オローラ市内のガソリンスタンドの価格表示板

私の住んでいるオローラ市内のE-85を扱っているConoco系列のガソリンスタンドの価格表示版です。レギュラーガソリンが1ガロン3.799ドル、デイーゼル車用燃料が1ガロン3.999ドル、そしてE-85は1ガロン3.099ドルが今日の販売価格となっています。アメリカでは日本と違って業務用の大型トラックでよく使われているデイーゼルエンジン車用の燃料は特別優遇の税金控除がありませんのでレギュラーガソリンより通常高い価格となっています。このガソリンスタンドでの給油をするお客さんの様子をしばらく眺めていましたが、E-85を給油するお客がレギュラーガソリンとほぼ同数の割合で来ています。この近辺ではこのスタンドきりE-85を扱っていないので多いものと思われます。


E-85の給油を行うスタンド

このガソリンスタンドではE-85専用のスタンドが2基裏表に設備されていて通常のガソリンのスタンドと操作については同じです。お客が通常のガソリンと間違わない様に給油ホースの色が黄色になっています。また、フレキシブルエンジンの車のタンクへの給油口のキャップの色も黄色となっていますので間違い難くなっています。また、このガソリンスタンドはConoco系列の店ですが、E-85についてはConocoで製造した燃料ではない旨印されています。

なお、E-85を扱っているガソリンスタンドの場所に付いては下記のアドレスのWebから丁度Mapquestで地図の検索を行うのと類似の要領で全米のどの地域についても探す事が出来ます。
www.afdc.energy.gov/afdc/locator/stations/

また、このロケーターではE-85の他に下記の各自動車用燃料の購入出来るスタンドに付いても検索する事が出来る様になっています。

  • Biodiesel (B20 and above)
  • Compressed Natural Gas (CNG)
  • Electric
  • Ethanol (E85)
  • Hydrogen
  • Liquefied Natural Gas (LNG)
  • Liquefied Petroleum Gas (Propane)

これから電気自動車を購入しようかと思っている人や電気自動車で遠距離ドライブをするときなどこのWebサイトは大変便利に使えると思います。


コロラド州に於ける電力、発電事情

ミネソタ州に本社を置くXcel Energy社はコロラドでの主要な電力と天然ガスとを一般家庭や企業、商店などへ供給している会社で、ちょうど日本の関東地方でいえば東京電力と東京ガスとを合わせたような存在の企業となっています。

デンバーのダウンタウンに在るXcel Energy社のビル
Xcel Energy社のデンバー事業所の入っているビルはデンバーのダウンタウンの18番通りとLarimer通りの角に新しく建設されたこの建物です。ビルの外壁の彩りがユニークなモダーンな感じのこのビルの最上階の屋根の横の部分にはXcel Energy社のロゴマークが取り付けられています。
Xcel Energy社のビルの入口に出ているテナント表示板
看板の1800の数字はこのビルのハウスナンバーでLarimer通り1800番地に在ります。Xcel Energy社の他に2社がこのビルに入っている様です。

日本と同様に電力は日常生活の基幹をなすエネルギーであり、Xcel Energy社のコロラド州内での活動や事業推進は州政府や州議会の制定する法規に基づいて運営されており、コロラド州の重要な企業の一つとなっています。

コロラド州は近年特にカリフォルニア州やテキサス州から移住して来た人達や中南米の国々からの移民の人達などによる人口増加が著しく、電力の消費需要は急激に増加しており、州のエネルギー局のこの需要に対応する政策は州の将来を決める非常に重要なテーマとなっています。

また、現在ガソリンやデイーゼル油を主体とする燃料で使われている自動車からの排気ガス公害や地球温暖化の対応策として電気自動車への転換が始まっていますが、電気自動車への移行はとりもなおさずその電池への充電を行う電力が必要となり、電気自動車の普及は、新たに加わる電力消費需要の増加となります。

コロラド州内でも良質な石炭が多く産出されますが、その北に隣接するワイオミング州では良質な石炭を多量に産出しその埋蔵量も多い事から、石炭を燃料とする発電は現在のところ最も発電コストが安く、現在のコロラドでの需要を満たすには不可欠のソースとなっています。

しかしながら、現在稼働している主な火力発電所は燃焼効率面でも、また排出ガスの面でも旧式な設計です。現在の最新鋭の石炭を熱源とする火力発電所はそれらの性能が非常に改善されており、電力供給の直近の課題はこれらの古い発電所を廃棄して新設計の発電所に切り替える事となっています。

Xcel Energy社がコロラド州内の全顧客へ2010年の年間で供給した電力の発電に使用したエネルギー源の内訳は下記の様になっています。

石炭 61.31%
天然ガス 27.12%
風力 10.26%
その他 1.31%
水力 1.09%
太陽光 0.05%
原子力 0.07%
重油 0.02%
バイオマス 0.05%
地熱 0.03%

この原子力による電力は他州より購入した電力でありXcel Energy社で はコロラド州内に原子力発電所は所有していません。

前コロラド州知事のBill Ritter氏の主要政策の一つとして在任中に展開されたRenewable Energyによる発電としては特に風力発電と太陽光発電とに注力されてきていますが、全体の10%を越える風力発電が行われる様になっています。現在これに加えて太陽光発電はその気象立地条件から特にコロラド州南部の砂漠地区を中心に設備投資が積極的に行われています。そして、現在Xcel Energy社はアメリカでの風力発電量では最も大きな電力を供給しています。

天然ガスはコロラド州内で多量に産出しており、またその埋蔵量も豊富な事から有効な発電エネルギーの一つとなっていますが、排気ガス面ではクリーンエアーの熱源として有効ですが、地球温暖化面ではCO2の排出は多いので、現在は家庭での調理や暖房のための熱源として主に使用されています。

Xcel Energy社の計画では、2012年迄に400メガワットの発電量分の旧式な石炭を燃料とする発電所の閉鎖を行い、さらに2017年迄にはこれに加えて338メガワット分の旧式火力発電所の閉鎖を行う事にしています。また、現在稼働中の352メガワット分の発電所は石炭から天然ガスへとその燃料の変更を行うのに対応する設備改装を予定しています。

今回新たにコロラドの南のPuebloの町の郊外に建設された最新鋭の設備を誇る石炭を使用する火力発電所「Comanche 3」750メガワットが稼働を始めており、更にコロラドのLongmontの町の近くのFort St. Vrainsに新設された天然ガスを燃料とする発電所300メガワットも稼働を始めています。

コロラド州知事の直轄のエネルギー室ではコロラドの将来の発電に使うエネルギー源は全体の1/3を石炭で、1/3を天然ガス、そして残る1/3をRenewable Energyで、と言うバランス目標として、2020年にを達成期限にエネルギー政策を進行してきました。

5月13日(金)にXcel Energy社よりその目標達成に対する現在迄の経過報告の発表が行われました。その発表内容によりますと、現在迄の進行状況からすると同社ではRenewable Energyの比率は2017年迄に30%に達する見込みであるとしています。この報告に対してColorado Solar Energy Industries Associationでは歓迎の声明を出して、今後もXcel Energy社に全面協力をして目標を達成したい、と言っています。そして、Renewable Energyの達成分の90%は風力発電となるだろうとしています。

また、目標達成時のRenewable Energyの35%は風力と太陽光発電とをうまく組み合わせたコスト的に有利な方法が見いだせる様になるとしています。

ご参考迄に、アメリカの主要各都市に於ける現在の500kWhの電力料金を比較してみると下記の様になっています。

都市 電力500kWhの使用料金 Xcel Energy社のサービスエリア
テキサス州 Amarillo $46.98
コロラド州 Denver $53.26
フロリダ州 Tampa $61.76
ミネソタ州 Minneapolis $62.35
カリフォルニア州 San Francisco $64.28
オハイオ州 Cleveland $64.50
ミシガン州 Detroit $66.41
ワシントンDC $74.75
マサチューセッツ州 Boston $84.98
ニューヨーク州 New York $105.52
全米平均 $65.13

このデータから見るとデンバーは全米でも電力料金は安い方に属している様ですが、現在その価格が上昇して問題となっているガソリンの価格に付いてもコロラド州は全米で安い方になっているのと類似しています。

コロラド州に於ける原子力発電所建設の動き

コロラド州のロッキー山脈東山麓を南北に縦断している国道ハイウエー25号線の南部にPuebloという町があります。Puebloはかっては大きな製鉄所が有って繁栄していた町でしたが、30年前に閉鎖となってからは、Boeing社の宇宙開発ロケットSaturnの製作所が町の主要企業となっていました。そのSaturnロケットも次世代の新型モデルに切る変わる事となってその中心事業所はアラバマ州Huntsvilleへ移り、Puebloでの宇宙ロケットの事業所は現在では今迄に出荷したロケットの保守アフターサービスを行うだけとなっています。

また、最近では町の郊外に石炭を燃料とする最新鋭の750メガワットの大火力発電所Comanche3の建設が昨年行われて町はその建設のための雇用で経済的にしばらく潤いましたが、そのComanche3も完成して既に稼働をしています。Puebloでは将来の町の経済的な繁栄と雇用の確保をするために新たな大きな事業を町へ誘致することを検討して来ましたが、その有力案として、新しい原子力発電所の建設誘致が俎上に載って来ています。

Puebloで生まれ育って、Puebloの町の有力者として良く知られている不動産関係を専門とする弁護士のDonald Bannerさんがこの新原子力発電所の誘致建設計画の推進役として選ばれ,その具体的な計画を練って来ています。計画案では町の南東に広がる広大な土地の24000エーカー部分を「Clean Energy Park」と言う名称で整地開拓を行って、その中心建造物として50億ドルの建設費が投入される最新鋭の原子力発電施設の建設を誘致しようと言うものとなっています。

このDonald Bannerさんの申告により、4月15日(月)にPueblo郡のコミッショナーによるこの新計画の公開審査会が開催されました。審査会には約100名にのぼる人々が公聴して行われましたが、結論として「原子力発電所の誘致建設を行う計画案としてその計画内容情報が欠落し過ぎている。」と言う事でコミッショナー3名の投票結果は3対0で否決されました。コミッショナーメンバーからの指摘として次の様な項目が挙げられています。

  • 原子力発電所の各施設の配置などを含む設計図としての情報が何も示されていない。
  • 原子力発電所にはそのシステムの冷却に要する多量の水の確保が不可欠であるが、どこからその水源を得るのか示されていない。
  • 原子力発電所の建設工事を何処の企業が行う事となるのか示されていない。
  • 原子力発電に使用された残りの放射性廃棄物が出てくるが、それらの保存方法、処理方法などが現在大きな問題となっているが、その対応について示されていない。

などと言うかなり基本的な条件をクリアー出来る様な計画案の内容が提示される事を必要としています。

日本での福島第1原発での大事故が発生した直後でもあり、原子力発電の危険性について世界中の人が強い関心を示している最中での今回の公開審査会でしたので、「時期が悪い」と言う事も有りますが、コロラドでは地震や津波といった大きな自然災害としては、心配するとすれば大型な竜巻の発生が気になりまが、それもPueblo地区では全くと言って良い程有りませんので、福島第1原発のケースとはその条件が大きく異なります。

地元の経済発展や雇用の創出といった重要な目的の為に於いても原子力発電所の建設誘致を活用する事はその実現には大変な困難を伴う事が認識された審査会となりました。

アメリカではかって1979年にペンシルバニア州「スリーマイルアイランド」にある原子力発電所に於いて発生した大事故以来新たな原子力発電所の建設については凍結されて来ましたが、世界の地球温暖化をめぐるCO2排出量削減の活動はエネルギーの最大の消費国であるアメリカに突きつけられた重要課題であり、至急その効果的な対応策と取り組まなくてはならない認識が強まって来ています。

エネルギー需要が増え続けている中にあって、その具体的な施策としては原子力発電が非常に有効と言う事から、安全性を最重要視した原子力発電の再構築に取り組む事が検討されて来ています。

今回の計画案の作成に当たってDonald Bannerさんはスリーマイルアイランド以前で最後に建設されたTennessee Valley Authorityによって建設された原子力発電所はアメリカでの最新の原発ですが、現在では年間100億ドルの電力を産み出しているといった実績に注目していると言っています。

コロラドでのウラニューム鉱山事情

Energy Fuels Resources社の入っている建物
デンバーの西に接しているLakewoodの町に在るこの建家に今回コロラド州からロッキー山脈西山麓地区にウラニューム精製所の建設運行の認可を受けたEnergy Fuels Resources 社が在ります。この建物の手前は広大な駐車場となっていていくら大勢の人達がこのビルで働く様にになってもその駐車場に困る事は無さそうです。

アメリカは現在でも世界で最も多く原子力エネルギーを使用している消費国であり、それに使用されるウラニュームの95%を外国からの輸入に依存しています。そして全米での総発電電力の約20%は今日でも原子力となっており、各原子力発電所では「Yellowcake」と呼ばれているウラニュームの燃料棒を使用しています。

このウラニュームの燃料棒は鉱山から掘り出されたウラニューム鉱石を数多くの精製工程を経て「Yellowcake」に精製所で形成されて原子力発電所へと供給されます。そして、現在アメリカにはこの精製所で稼働しているのはたった1カ所だけとなっています。


コロラドにはかって第2次世界大戦中にアメリカでの原子爆弾の開発を行った「マンハッタン計画」のためのウラニュームの採掘、精製が行われた鉱山がロッキー山脈の西山麓に何カ所か残っており、掘り出した鉱石からウラニュームの精製を行った製錬所跡やそれにより残された放射性残滓やプルトニュームを保管しているRocky Flat と呼ばれている広大な場所がデンバーから北西へBoulderの町へと行く国道ハイウエイ36号線沿いのBloomfieldの町とロッキー山脈の麓の間にあり、厳重な警備を行っている立ち入り禁止区域となっています。

Energy Fuels Resources社の建物の正面入り口
ビルの正面入り口右側にはこのビルに入っているテナント表示板が建っています。よく見るとEnergy Fuels Resources社の名前は上から2番目に記されています。その他に9社がこのビルを使用している様です。44の数字はこのビルのハウスナンバーでUnion通り44番地にあるLake Plaza Centerビルだと言う事になります。また、写真左端の正面玄関の上部にもこの44の数字が大きく取り付けられています。

過去何度かこのプルトニュームをコロラド州の南に接しているニューメキシコ州にある処理施設へ運んで処分する計画が立てられましたが、運搬移動に伴う危険性やテロ攻撃の可能性などのリスクから実施がのびのびになって、第2次大戦終了後66年も経過していると言うのにいまだに処理出来ずにいます。

デンバーの西に接しているLakewoodの町にあるEnergy Fuels Resources社はロッキー山脈の西山麓でユタ州との州境に近いMontrose郡のPinon Ridgeウラニューム精製所の建設運行の申請を最近コロラド州政府に行っており、州の公衆衛生環境局の放射線課では先週その認可をおろしました。


このウラニューム精製所の公式運行認可はかってソ連との冷戦以来アメリカでは始めての事で、Energy Fuels Resources社ではこの精製所を従来の形式ではなく、最新の化学工場といった構成で建設して運用する計画です。公衆衛生局ではEnergy Fuels Resources社の申請に基づき公衆衛生面から大気への影響、河川や地下水への影響などの面から詳細なチェックを行った結果、今迄になく非常に進んだ処理工程と設備を有しており問題無しとしています。

同社はこの精製所へ1億4000万ドルの投資を行って1日に500トンのウラニュームおよびバナジュームの鉱石の破砕を行う能力を有する計画にしています。今回のこのPinon Ridge精製所の運行がうまく行くとこの地域に数多くかってのウラニューム鉱石の掘削を行って来た鉱山がありますので、これらが再び活動を始める事になります。

一方、コロラド州の北端で国道ハイウエイ25号線の東側にあるNunn村に近い広大な平坦地ではカナダに本社をもつPowertech Uranium社のテスト掘削申請をコロラド州に行っており、その認可を待っています。

Powertech Uranium社の掘削方法は天然ガスの掘削と類似な方法で、地面に大型リグを据えて地下深くパイプを通し、ウラニューム鉱石層に達した深さで、地表からポンプで圧力をかけた水を注入し、ウラニューム鉱石層を緩めてから今度はそのパイプを通して地表へ地下水と一緒にウラニューム鉱石泥を吸い上げるという方法をとります。地表へ吸い上げられたウラニュームを含む泥を化学処理して精製を行い、最終的にYellowcakeに仕上げると言う事になります。

アメリカでの原子力発電所の新たな建設が始まる気配からその熱源となるウラニュームの需要が増加すると予測され、かってウラニュームを原子爆弾の開発の為に掘削していたコロラドの各鉱山が活発な活動を始める気配となっています。

石炭の燃焼効率改善、排出ガスのクリーン化を目指す技術

石炭を燃料として使用する火力発電所のシステムもその燃焼効率の改善や排出ガスのクリーン化などの面での改善技術は現在では非常に進んで来ていますが、コロラドのデンバー市に本社を置くEvergreen Energy社では「K-Fuel 技術」という名称で、燃料の石炭自体を燃焼効率と排出ガス正常化の面から改善する技術を開発してその事業化を各石炭供給会社と共同で推進を計る事にしています。

Evergreen Energy社の入っている建物
石炭のクリーン排ガス化技術「K-Fuel Technology」の開発会社Evergreen Energy社がある17th Street Plaza ビルです。この建物はデンバーのダウンタウンの中心街に在って、デンバーで最も高い建物です。そしてこのビルの30階には日本の総領事館もあります。

今回そのEvergreen社より発表があって、オーストラリアの鉱山会社WPG Resources社とこの「K-Fuel技術」の商用事業化に向けて共同で推進する覚書きに両社が調印したとしています。そして、WPG社はEvergreen社がこの事業化に投資する1600万ドルのうちの200万ドルを負担する事になっています。

Evergreen社では「今回の我々のジョイントベンチャーはオーストラリアに「K-Fuel技術」による石炭の加工工場を建設してオーストラリアから輸出される石炭の付加価値を高める計画で、オーストラリアは世界の約8%に及ぶ膨大な石炭の埋蔵量を有しており、 産出量全体の約75%を輸出している。」としています。

基本的にこの「K-Fuel技術」とは掘り出された石炭に高い気圧下で加熱して内部に含まれる水分を除去する、というもので、例えば、コロラド州の北に隣接しているワイオミング州にはPowder River盆地の広大な露天掘りの炭田が有りますが、そこから産出する石炭は通常1トン当たり12ドルくらいを上限とする価格で取引されていますが、「K-Fuel技術」で加工された石炭は1トン当たり50ドルで取引されている、としています。

中国は現在世界で最大の石炭の産出国ですが、急成長する工業化の為に多量の石炭を外国から輸入しており、オーストラリアからこの「K-Fuel」加工された石炭を中国向けに1トン当たり80ドルで輸出する事を計画しています。このEvergreen社の技術は既にワイオミングを始めとする北米の出炭現場で証明済みの物であり、今回のオーストラリアでの合弁事業はアジア各地向けの石炭での実績を示す上で大変魅力的な技術の適用となるとおもう、と言っています。

「K-Fuel技術」の加工に必要な熱源はその場にある石炭をK-Fuel加工して使用すれば良く、また、不要な水分や灰分が石炭から抜ける為にエネルギー/重量の比率が大幅に増すので、現在鉄道貨物列車や大型船舶に依存している輸送面では大変有利になる事も特長としています。加熱している中国の石炭エネルギー消費によるCO2や排気ガス公害を低下させる事となり、そのうち日本の各火力発電所でもこのコロラドのEvergreen Energy社の「K-Fuel技術」で加工された石炭を使用している事となるかもしれません。

あとがき

2007年にアメリカの連邦議会を通過成立した法律で「現行の白熱電球を製造しているメーカーは今後製造する物は同じ明るさで少ない消費電力のものにしなくてはならない。」と言う規定があって、現在既にアメリカでは従来の白熱電球の製造は行われていません。

電球サイズのCFLランプ
日本でもこの電球サイズの蛍光灯CFLランプはポピュラーだと思いますが、我が家で使っているCFLランプ2種類です。右の小さい方が13ワットのCFLで白熱電灯60ワットの明るさに近く、左の少し大きい方が20ワットのCFLで白熱電灯100ワット明るさに近いと言っています。

この規定に合致する代替え電球としては、いわゆるCFL(Compact Fluorescent Lamp) という蛍光灯の細長い管をグリグリと丸めて電球サイズに押し込んだ形状の物があります。

このCFLは1個が約1.50ドル位の価格で買えますが、従来の白熱電球は1個が約50セントと安い事からCFL普及のキャンペーンとして、これまでに節電の広告などでCFLの方が75%も消費電力が少なく、尚かつその寿命面では約10倍ももつので、その寿命期間を通じて約40ドルもの節約となるのだ、というその利点がいろいろな媒体を通じてアピールされて来ています。


しかしながら、アメリカの人々が一向にCFLへの切り替えを行おうとしないのでこれまでの宣伝やPRが無駄になっていると言う状態でしたが、いよいよ今迄の白熱電球の製造在庫が底をついて来始めていますので、アメリカの消費者はCFLを購入せざるをえなくなって来ましたので、今後アメリカの家庭では白熱電球は見られなくなるとしています。

一方、私の住んでいるAurora市では市内の道路の交差点を始め多くの場所に設置されている交通信号灯を従来の白熱電灯の物からLED (Light Emitting Diode) のものに切り替える作業が進行して来ていましたが、市内で約総計320カ所に設置されている交通信号灯のうち2010年の始めにはその約1/3しかLED化が進んでいませんでしたが、その後アメリカエネルギー局のエネルギー効率と節約資金の援助を受けて、切り替え作業を積極的に進めた結果、市内の全ての交通信号灯をLEDとすることが出来ました。これにより市が支払っている電力料金は年額で20万ドル近い節約となっているとしています。

交通信号等の場合は、今迄の白熱ランプでは一個当たり69ワットから150ワットの電力を消費していましたが、LEDでは7ワットから24ワットの消費電力で済みます。そして、ランプ自身のコストアップ分はその消費電力の節約分の3年から4年で回収出来、白熱ランプの寿命は約5年から7年でしたので、その補修のための交換作業も大幅に節減される様になった、としています。

また、新しいLEDの信号灯の方が特にグリーンの表示部分は周囲が明るくてもハッキリ見える様になって信号灯としての機能も上がったと言えます。

日本でもこの様な2件の事例は同様に進んでいると思いますが、むしろ家庭での照明用としてはLEDの方へ日本では需要が直行してより効率の良い方向へと進んでいるのではないかと思っています。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。