大きな地震とは殆ど縁がないアメリカの東海岸地域では第2次世界大戦後始めてと言われる地震の大きな揺れに8月23日(火)の午後2時少し前に見舞われ、震源地から80マイル(129km)北東に在る首府のワシントンの国会議事堂内や政府官庁のオフィスで働く大勢の人達を驚かせました。
9月11日の大規模テロ攻撃の記念日が迫っている中、その大きな揺れはテロによる攻撃があったのではないかと思った人が多く、建物から外へ飛び出す大勢の人々が見られました。
今回の揺れの規模は日常頻繁に地震を感じている西海岸のカリフォルニア州の人達の基準からすると「穏やかな中くらいの揺れ」と言ったレベルだったのですが、日常地震とは全く縁がない東海岸の人達にとっては大変な驚きだったようです。
時をほぼ同じくして8月22日(日)の深夜12時少し前には、アメリカ西部山岳地区で日常地震とはやはり殆ど縁がないコロラドでも地震があり、州の南部のニューメキシコ州との州境に近いTrinidadの町では大きく揺れて夜中だったのですが、大勢の人々を驚かせました。
今回の2つの地震は下記の通りです。
地震発生日時 | 震源個所 | マグニチュード | 過去の記録 |
8月23日(火)午後2時少し前 | バージニア州Richimond北西40マイル(64.4km) | 5.8 | 東海岸地区では1886年サウスカロライナ州でマグニチュード 7.3 |
8月22日(月)深夜12時少し前 | コロラド州Trinidad南西9マイル(14.5km) | 5.3 | コロラドでは1967年今回と同一エリアでマグニチュード 5.3 |
コロラド州では、その翌日の8月23日(火)から学校は新学期の最初の日で震源の近くの各学校では生徒達の大きな話題の中心となり、理科の先生が地震についての解説を特別に行っています。
また、コロラドは山岳道路が多い事から道ばたの崖に岩石がせり出している場所が多く在って、地震により岩石の支えが緩んで道路へ落下してくるといった状況が多々ある事から、各道路での安全確認作業が行われています。
ところで、コロラドの地震の震源地から175マイル(282km)北へ離れているオローラの私のところでは全く地震の揺れは感じる事がありませんでした。もしかしたら、私が寝込んでしまっていたのかもしれません。
オローラの市内に最近開校したRenewable Energy産業が必要としている専門家を育てる大学Ecotech Institute
- Renewable Energyの専門家を育てる大学
Ecotech Institute(1) - オローラ市に出来た9月の新学期から開校するRenewable Energy業界で活動する専門職を育てる事を目標とした大学です。正面入り口を中心に示していますが、建物の前は非常に広い駐車場となっていて、かなりの台数の自動車が停められます。正面入り口の軒先屋根上面にはソーラーパネルが取り付けてあり、その発電能力は9.4kW有しています。入り口の雨よけともなる他に日よけとしての機能も有りながら発電電源として共用すると言う提案です。
私の住んでいるコロラドのAurora市におそらく世界で始めてのRenewableエネルギー及びその耐久設計に目標を特化した専門大学が開校すると言う発表が7月21日にあり、その校舎及び内部施設について今年の初めより工事にかかっていましたが、いよいよ完成してこれまで新入学生の募集が行われ、9月初めの新学期に向けての開校が今回公表されました。
この大学では現在コロラドでのいろいろなRenewable エネルギー関連する各企業をサポートして、そこで働くメンバーを養成する事を目的としているのだ、と言っており、まさに産学協同、産学連携の見本の様な大学です。
- Renewable Energyの専門家を育てる大学
Ecotech Institute(2) - 道路側に出ているEcotech Institiuteの看板です。この大学はオローラ市を南北に縦断している国道225号線ハイウェイと平行に走っているAbilene Streetに沿った場所に在って写真の看板に書かれている数字の「1400」はそのハウス番号です。手前の一台のSUV車が右の方向に走っているところがAbilene通りで、その向こうに多くの自動車が走っているところが国道225号線ハイウェイになっています。
校舎の方はこれまでJakesというゲームアミューズメントセンターが使用していたのですが、昨年中旬にどうした理由か閉鎖となって、そのかなり大きな建物の構造物を使用して今年始めから大工事が行われていましたが今回完成したものです。
この新校舎の内部には7つのコンピューターラボ、9つのクリーンエネルギーラボ、そして11の教室とから構成されており、これらのラボは電気、エレクトロニクス、太陽光エネルギー、風力発電、安全保全などの実習を目的として造られており、太陽光エネルギー発電の為の屋外での実習を行うラボも備えています。
各ラボには最新の各種装置や計測器が設置されていて、それぞれの分野での基礎と、風力発電及び太陽光発電にまつわる応用、そして電気、エレクトロニクス、電力、太陽光発電の各ラボ内にはそれぞれの供給電力システムが設備されています。
卒業した学生が各Renewableエネルギー関連の企業などの現場で働く様になった時に使用する事になる設備と出来る限り合わせる様に配慮して設備していると同大学では言っています。
それらの各ラボの設備の中から主要なものをいくつか拾ってみますと、下記の様なものがあります。
- 風力発電を専攻する学生を対象として、Wind Safety Lab が設けられており、25フィート(7.6m)の高さで学生達が実物の風力タービンの内部を昇り降りして作業する訓練を行う様になっています。また、タービンの可変ピッチシステムや可変周波数発電の駆動装置、クレーン装置、各種訓練装置を有しています。
- 多くの教室には最先端のコンピューターシミュレーションソフトウェアが備えられていて、学生達は多次元の各種フォーマットでの学習が出来る様になっています。
- Programable Logic Controllerラボでは、最も重要な製造の基礎について教える様になっています。
- Ecotech Institute の前の駐車場に設置された Solar Tree
- 非常に広い駐車場の一部に太陽光発電を行うソーラーパネルのアレイ構成のブロックが2基設置されています。Solar Treeと呼んでいます。このSolar Treeの下側の場所は予約済みの人のみが駐車出来る場所という表示が付いており、ソーラーツリーが日よけとなっています。このソーラーツリー1基の発電能力は16.9kWで年間で5万キロワットアワーの発電量を提供するとしています。そして、これを1基将来の電気自動車の充電用の電源として応用すると、電気自動車1台当たり2時間から4時間でフル充電する設備となると言っています。
- Ecotech Instituteの正面入口の前に建っている垂直駆動軸型の風車タービン
- 風力発電用の風車で垂直軸型に設計されたタービンが建って
います。この風車1基で4kWの発電能力を有しているとしています。
また、正面入り口の上の屋根部分には小型の通常の風力発電風車が左右に4基ずつ合計8基取り付けられています。この小型風車タービンは1基が4.8kWの発電能力を有しています。
Ecotech Instituteの講師のメンバーは大学の教授の人よりも、実際にRenewable Energyの世界で事業として運営している各会社で働いている専門家が多くなっていて、より実践に近い教育が行われると考えられ、研究開発の色合いはむしろ少なくなるものと思われます。
今後学生達にこのEcotech Instititeがどのくらいの人気を得る様になるか大変興味が持たれるところですが、現在のアメリカ経済の不況下にあってアメリカの失業率は非常に高い水準が長期間にわたって続けていますので、大学の卒業生達は「大学は出たけれど」と言う事で希望の就職が大変難しくなっていますので、何とか現在世の中が必要としている分野での確実な就職を目指すと言う事で、このRenewable Energyの専門職を作る事に特化しているEcotech Instituteの人気が高まり入学希望者が増えるかもしれません。
コロラド州は昨年迄コロラド州知事を務めたBill Ritter氏がその在任期間中に採用した州の強化政策として「New Energy Economy」というタイトルでコロラドに於けるRenewable Energyの強化が集中実施されましたが、その成果として研究機関ではデンバーの西のGoldenの町に在る名門大学 Colorado School of Mine のRenewable Energy学科が拡充されて、更には同じGoldenの町にNational Renewable Energy Laboratories(国立リニューアブルエネルギー研究所)が設けられたりしており、事業している企業としては風力発電で世界的に有名なデンマークのVestas社がその大型風力発電用のタービン風車のブレード組み立て工場を設けて本格的な量産体制に入っており、そのタービンを支える支柱タワーの製造を行う事業所についてもコロラド内へ2ヵ所新設を準備しています。
- Ecotech Institute校舎の壁に面し取り付けられたソーラーパネル
- 12枚のソーラーパネルで構成している太陽光発電アレイが校舎の壁に取り付けられています。 この12枚による発電能力は2.8kWとなっているとしています。この様にしてEcotech Instituteのこの校舎に取り付けられているいろいろな風力発電や太陽光発電システムによる総発電量は同校が使用している総消費電力のピークの5%以上を得て賄っているとしています
更に太陽光発電に関してもそのソーラーパネルの製造から更には設置、運用面についても、コロラド州の南部に展開しているGreat Sand Dunes 砂漠地区での実用運用が始まっており、今後その研究成果は大きな期待が持たれています。
また、コロラド州への電力供給会社であるXcel Energy 社は早くよりこうしたRenewable Energyを使った風力発電や太陽光発電を自社の発電量に取り込む事に熱心でこうした事業のコロラド内に於ける最適な主要顧客として活動する様になって来ています。
「何でも統計」のアメリカ
何でも数値化して統計資料としてその順位付けをするのが好きなアメリカ人社会ですが、最近発表されたものからコロラド州やデンバー市に関するもののいくつかを以下に紹介します。
(1)今年は暑い夏だったか?
非常に暑い日が長く続いたと言う印象の残るこのコロラドの夏でしたが、早くも8月末、何か吹く風の中にも秋の気配を感じるこの頃です。
地元新聞のDenver Post紙の金曜日号ではこの8月末を迎えて、デンバー市でのこの夏の暑かった記録のレビューを行った記事をその第1面に載せています。
その各記録についてピックアップしてみますと
- 今年1月1日より8月25日迄の間でデンバー市の一日の最高気温が華氏90度(摂氏32度)を上回った日数は44日で、2008年の61日より少ない。
- 今年7月15日から8月1日迄のデンバーでの最高気温が18日間連続で華氏90度(摂氏32度)を上回った連続日数では、今迄の記録では2008年の24日間連続には及ばない。
- 公式記録がとられ始めてから「139年の間で最も暑かった8月」という記録は1937年で、今年はそれに次ぐ2番目に暑い8月となった。
- 8月はまだ終わった訳ではない!この8月25日(木)には最高気温は華氏99度(摂氏37.2度)となり、この日付での今迄の記録の1913年の華氏96度(摂氏35.6度)を越したし、その前日の水曜日には華氏98度(摂氏36.7度)、そしてその更に前日の火曜日にも華氏98度と3日連続でのこの時期としてこれ迄の新記録を示しています。そして、これ迄の30年間に於ける今週の各期日での最高気温の平均値は華氏86度(摂氏31.7度)となっています。
長い非常に暑い夏だったと言う感じですが、もうしばらくデンバーでは新記録となりそうな暑い日が続きそうです。
(2)FOURTEENERS
コロラド州の中央少し西よりを南北にロッキー山脈が走っていますが、その中でも峯の標高が海抜14,000フィート(4,267m)以上の嶺峰の頂上の全てを踏破征服しようとする登山者達の事を「Fourteeners」短縮して「14ers」と呼んでいます。
この対象となる峯の数はコロラド州内に54ヵ所在ります。そしてその中でも最も高い峰はMount Elbertで、その標高は14,433フィート(4,399m)となっています。
また、その頂上の間際まで自動車で行く事が出来る道路が設備されている峰は2ヵ所在って、
- Mount Evans 14,264フィート(4,348m)
- Pikes Peak 14,110フィート(4,301m)
となっています。
そして、Mount Evans山は対抗2車線の舗装道路となっていて、途中では角が巻いているのが特徴の山羊(Mountain Goat)の群れが岩山を上り下りしているのを見かけたり、野生の馬が餌をもらいに車へ寄ってくるのに出くわします。
Pikes Peakの方はその途中迄は対抗2車線の舗装路ですが、途中から上の部分は今迄荒れた山岳道路だったのですが、この夏シーズンから簡易舗装工事が進んで、頂上迄伸びています。また麓の町Manitou Springsからケーブルカーが出ていて頂上駅まで連れて行ってくれます。
コロラドのこうした14ersの山々は冬の期間は寒さが厳しく降雪量も多いので一般の人には危険ですが、夏の登山は人気があって多くの登山愛好者達が挑戦しています。何れの峰も4000m級の標高ですので空気が薄く体力を非常に要しますので事前の訓練を良く行ってから登山しないと酸素欠乏症や心臓発作などで危険が伴うことになります。
今シーズンも14ersの活躍の時期を迎えて、その峯の一つで滑落による登山者の死亡事故が発生しています。デンバーの北のArvadaの町に住んでいたLeith Roseさん50才は彼の50才の誕生日を記念して30日間でこの14ersの50の峰を踏破すると言う計画を立てて準備をして来ました。
そして、先ず最初はPikes Peak(14,110フィート / 4,301m)、そしてHumboldt Peak(14,064フィート / 4,287m)の二つの峰を8月初旬に登頂して、8月8日(月)に1日で2つの峰を征服するDual Climb を試み、先ずCrestone Peak( 14,294フィート / 4,357m )に成功し、次の Crestone Needle(14,197フィート / 4,327m )にかかっていた時、濃い霧が周囲を覆って視野が悪くなる時Roseさんは脚を踏み外して約30フィート(9m)滑落して死亡しました。
Roseさんの親しい人達はあの準備の良い登山家の彼が亡くなるとは信じられない、と一様に言っています。そして、Custer郡の遭難救助隊のチームにより彼の遺体の撤収が試みられましたが、天候悪化のため翌々日の夕方に家族に引き渡されました。
(3)デンバーはアメリカのBest Beer都市で第2位にランク
雑誌『Travel & Leisure』の読者達を対象とした「Best City in America」のアンケート調査の結果によると、
- Best Beer City in America(アメリカでビールを最も楽しく飲める都市)部門ではデンバーが全米第2位
- Night Life(アメリカで夜の街が最も楽しめる都市)部門ではデンバーが全米第9位
- Food / Drink / Restaurants(アメリカでレストランでの飲食が最も楽しめる都市)部門ではデンバーは全米第13位
にランク付けされています。
(4)25Top-Earning Towns
世界の金の生産量で1、2位を競う金鉱山会社Newmont Mining社の本社や各種のハイテク企業が集中しているDenver Technology Centerなどが在るGreenwood Villageはデンバーの南西の地域にあって、デンバーの町を南北に縦断している幹線国道ハイウェイ25号線がこのGreenwood Villageの中央を走っています。
雑誌CNNMoneyがその最近号で発表した「アメリカの今最も稼いでいる25の町」のリストにそのGreenwood Villageが18位にランキングされています。ちなみに、25の町のリストは下記の様になっています
順位 | 町名 | 州 | 中流家庭の平均年収 | 中流の家の平均価格 |
1 | Great Falls | バージニア | 367,760ドル | 1,090,000ドル |
2 | Hillsborough | カリフォルニア | 319,240ドル | 2,277,500ドル |
3 | Scarsdale | ニューヨーク | 250,124ドル | 1,200,000ドル |
4 | Weston | マサチューセッツ | 248,871ドル | 1,004,000ドル |
5 | Los Altos Hills | カリフォルニア | 243,406ドル | 2,273,250ドル |
6 | Glencoe | イリノイ | 237,874ドル | 807,500ドル |
7 | Winnetka | イリノイ | 236,222ドル | 990,000ドル |
8 | New Canaan | コネチカット | 231,957ドル | 1,210,000ドル |
9 | Darien | コネチカット | 227,195ドル | 1,253,800ドル |
10 | Chappaqua | ニューヨーク | 219,258ドル | 825,000ドル |
11 | Paradise Valley | アリゾナ | 195,637ドル | 1,185,000ドル |
12 | West University Place | テキサス | 194,232ドル | 521,250ドル |
13 | Potmac | メリーランド | 191.677ドル | 797,200ドル |
14 | Town & Country | ミズーリー | 185,555ドル | 524,000ドル |
15 | Franklin Lake | ニュジャージー | 182,004ドル | 870,000ドル |
16 | Warren | ニュジャージー | 180,363ドル | 617,500ドル |
17 | Wellesley | マサチューセッツ | 177,132ドル | 848,000ドル |
18 | Greenwood Village | コロラド | 160,962ドル | 545,000ドル |
19 | Palm Beach | フロリダ | 155,610ドル | 650,750ドル |
20 | Radnor Township | ペンシルベニア | 152,493ドル | 515,000ドル |
(5)クリーンエネルギーに関する業務従事者数でコロラドは全米13位
最近Brookings Institutionから発表された環境保護や自然資源保護に寄与しているクリーンビジネスに製品として製造を行ったり、サービスを提供していると思える仕事に従事している従事者数でコロラド州はその総数51,036名となっているとしており、その数はコロラド州全体の業務従事者数の2.2%に相当し、全米でのクリーンビジネスが集中している各州の中で第13位となっている、としています。
昨年迄コロラド州知事を務めたBill Ritter氏がその在任期間中に採用した政策として「New Energy Economy」というタイトルでコロラドに於けるRenewable Energyの強化が集中実施されましたが、今回のクリーンビジネスの従事者数という面ではまだ全米でのトップをきるところまで達していないようです。
(6)経済的に苦しくなって家計を切り詰めるとしたら一番最後にあきらめるものは何か?(裏返して言うと、何を最後迄残しておきたいか?)
National Foundation for Credit Counselingがアメリカ人3,148人を対象に6月1日から6月30日の間に行ったオンライン調査の結果によると最後まで残しておきたいものは
セルラー携帯電話 | 53% |
家庭でのインターネットサービス | 32% |
ケーブルTVサービス | 8% |
レストランでの食事 | 4% |
高級コーヒーを飲む | 1% |
インターネットやカタログショッピング | 1% |
となっており、アメリカ人の85%(53%+32%)の人々はセルラー携帯電話やインターネットサービスが重要であり、それらをやめて節約をする前にケーブルTVの受信やレストランでの外食、高級コーヒーを飲むのをあきらめると言っています。
(7)ケーブルTVや衛星放送TVの視聴者数が減少
通信社のAP (Associated Press)の第2四半期事業レポートによりますと、不景気の波がTVを見て自由な時間を過ごしているアメリカ人の多くの人々に波及して来ており、ケーブルTVそして衛星放送TVの視聴者数に視聴契約を解消したり、止めたりする数字が増えて来ているとしています。
アメリカのTV視聴者数は一年前には僅かに減少を示しているだけでしたが、今年に入ってからその減少は一つのはっきりした傾向となって来ている、と言う事で、この主たる原因は相変わらず継続している高い失業率、そして多くの人々がその両親と一緒に1軒の家に住む比率が多くなって来ており、ケーブルTVの毎月の勘定書をそれぞれ別々に支払う事を控えるようになって来ているためとしています。
また、ケーブルTVの契約をキャンセルしたり契約をしなくなったりして代わりに安価なインターネットビデオを見る様になって来ており、業界ではこうした傾向に畏怖の念を植え付けつつあるとしています。
AP通信社の調べによりますと、今年の4月から6月の第2四半期ではアメリカの主要9社のPay Program TVのうち8社の総計で19万5700軒の視聴者数の減少となっています。この主要9社はアメリカ全家庭数の約70%をカバーしており、そのビデオ視聴者数の8320万軒の0.2%の減少に当たります。
その9社の中の主要5大ケーブルTV社のうちの4社はここ数年継続して視聴者数の減少となっており、電話会社のVerizon Communications社とAT&T社、そして衛星放送TV社のDirecTV社とDishNetwork社のそれぞれに付いても同様である、としています。
(8)アメリカ人の映画プログラムのレンタルはDVDなどのセルビデオを売り上げ面で追い越して来ている傾向
映画スタジオや電気機器メーカーの業界団体であるDigital Entertainment Group の最近の発表によりますと、レンタルビデオの業界売り上げは1年前に比べて11%上昇して20億6000万ドルとなり、一方ディスクやオンラインでのセルビデオについては4月から月迄で15%減少して19億3000万ドルとなったとしています。
こうしたアメリカ人のレンタルビデオがセルビデオを売り上げ面で追い抜いて来ていると言う傾向は、DVDが世の中に出て来てより過去2回目の現象であり、経済不況の中で人々がNetflixやRedboxといった安価なレンタルビデオでの視聴に移る人口増加は一つの消費者傾向となってしまっているとしています。
1回目の現象が現れたのは2000年で、それ以前は人々はVHSテープによるレンタルビデオが低迷して、それを新しくDVDが出て来て、それを購入すると言う事が盛んとなった時期の以前で、DVDは1995年に市場へ出て来ましたが、VHSカセットに比べて人々のホームライブラリーが薄く、軽く、長持ちすると言う事で人々の購入意欲を高めた事からこれまでそのセルビデオがレンタルビデオより強かった、としています。
(9)アメリカでの映画館への入場券の価格は高くなる傾向で、映画館への入場者数は減少傾向
アメリカ人の映画館での映画鑑賞好きは良く知られていますが、もし入場券がもっと安かったらもっと多く映画を見に行くか? と言えば「もちろん、今は毎月2回だが毎週末には1回は行きたい。」と言う答えが返ってくるのが通常です。
昨年価格上昇が続いた入場券価格は昨年の第4四半期の平均価格8.01ドルから今年の第1四半期では7.86ドルと少し短期間ですが低下しましたが、この夏に入って再び上昇傾向に転じています。
アメリカ国内で最大の映画館チェーンのRegal Entertainment Groupでは今年の年末にかけて約3%の平均価格の値上がりとなるだろう、と言っています。
そうだとすると、これは17年連続しての価格上昇となる事となり、1999年以来の一般消費者物価のインフレ率の50%以上の上昇と言う事になります。
この期間に映画館への入場者の総数は約10%低下しており、人口の増加率を考慮に入れても入場者数は低下して来ている事になります。そして、この同一期間中での全米の入場券販売所Box Officeに於ける売り上げは68億ドルから64億2000万ドルと5.55%の低下をしていると雑誌Hollywood.comは伝えています。
あとがき
カメラや光学機器で良く知られているPentax Imaging Company社は日本のホヤガラス社のアメリカの子会社ですが、デンバーの西のGoldenの町にそのアメリカ本社を置いて営業活動を全米に行っています。
2003年にそれまでデンバーの北と南西のDenver Tech Centerとに在った2つの拠点を統合してゴールデンの町へ移して活動して来ましたが、今回その日本の親会社であるホヤガラス社がこのPentax Imaging Companyを日本のリコー社へと売却を決めて、現在その手続きを行っているところです。
そのリコー社への売却に伴って、これまでのゴールデンの町の拠点をデンバーのダウンタウンの17th Streetに在るTower One of Colorado Plaza Towerビルの26階のフロア全体をリースし、その機構を引っ越す事となり、10月1日から新拠点での営業開始の予定となっていると発表しています。
また、併せて同社ではデンバーのダウンタウンの何処か1ヵ所同社の商品の直販店舗を解説する事を計画しており、その準備を進めているとしています。
これまでPentax Imaging Companyは比較的地味なマーケテイング展開でデンバーの郊外の町Goldenで堅実な営業活動をして来ましたが、今回デンバーの中心街へと進出する事で同社の存在を積極的にPRする事を決めたものと推測されています。
また、直販店舗の成功例としてはApple社の直販店として高い実績を挙げて、いまやアメリカの各主要都市に広く展開されている事で知られる「Apple Store」がありますが、こうした直販店はその自社商品のその地域への浸透と言う面では大変有効な手法ですが、一方、既にその地域でその商品を扱っている小売店の顧客を奪う事ともなりますので、どうしても売り上げ販売重点よりも商品や会社イメージのPRを主体としたショールーム的な色彩が強くなりがちです。
今回Pentax Imaging Company社がもし直販店を開設するにあたってApple Storeの実績を目標にするのであれば、この面でも同社の積極的な事業展開への方針転換が伺えます。今後の同社の動きが注目されるところとなっています。