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テレビや携帯、はたまたウェブなど日々様々な場所で私たちがふれる「映像」。従来からそれは存在していたけれど、最近特に顕著な変化が見て取れるようになってきている。その変化のキーワードとなるのが、「インタラクティブ」という言葉だ。このキーワードを元に最近の映像を紐解いて行きたい。

一口に「インタラクティブ」と言っても様々な切り口の物が存在するだろう。そのなかでも注目したいのは次の2つの要素だ。1つは、映像を見る者の動きを読み取って、それに伴って映像が変化するといういわゆる身体性を取り入れたインタラクティブ性だ。もう1つは、TwitterやFacebookといったいわゆるソーシャルメディアやウェブと連携した、言ってみればバーチャルなインタラクティブ性だ。

身体性を取り入れたインタラクティブな映像というものは、デジタルサイネージからプロジェクションマッピングまで幅広く見ることが出来る。単に情報を受取るだけでなく、観るものが自分の身体的な動きで映像が変化するという特徴のため、より深いユーザ体験をもたらすことができるものとして活用されることが多くなっている。例えばレペットが行ったインタラクティブなデジタルサイネージが例としては挙げられるだろう。この身体性を取り入れたインタラクティブな映像を語る上で、忘れてはならないのがマイクロソフトが発売したモーションコントローラ「Kinect」の存在だ。これは、本来はXbox360用のコントローラとして発売されたものであるが、赤外線を放射することで平面ではなく立体的に物体認識を行えるというものなのだ。このKinectの登場により、従来敷居が高かった人間の動きのトラッキングを簡単にできるようになった意味は非常に大きく、それをうまく使った映像作品も登場している。

例えばサッポロビールがカナダで行った「伝説のビール」というプロモーションでは、Kinectを使って体の動きを読み取り、その動きを欧米人の典型的な日本人像である侍、力士、そして芸者というような人の形に変えて、投射するというものだ。体を使って映像をコントロールできるという体験にはやはりインパクトがあり、今後もますますこのような映像作品は増加していくことだろう。

映像を視聴するメディアはWebへ

ソーシャルメディアやウェブと連携したバーチャルにインタラクティブな映像は、やはり主にウェブ上で見ることが出来るものだ。ソーシャルメディアと連携することで、例えばフレンドの写真といったソーシャルグラフと呼ばれるソーシャルメディア上にあるユーザそれぞれの情報を利用して、見る者ごとに映像自体に変化をつけるという作品が多くなっている。

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コンバースの「Desire」(http://desire.converse.co.uk/)は、パロマ・フェイスを中心としたユニットのミュージック・ビデオであるが、Facebookを利用することで観るものやその友達を映像中に登場させることができるという仕掛けになっている。さらにソーシャルメディアとの連携ではなく、映像自体をウェブを形作る技術で創り上げてしまおうという動きもある。例えばSOURの写し鏡やDANGER MOUSEなどによるROMEなどが例としては挙げられるだろう。これらの作品は高い技術力に裏打ちされることで、ウェブ上の映像表現として成立しうるクオリティとなっている。ソーシャルメディアを活用するにしろ、ウェブを形つくる技術で創り上げるにしろ、うまく活用することが出来れば観るものには今までの映像にはない印象を与えることができる反面、技術自体が目的化している作品も多く、本当に観るものに新たな価値を与えられるかを吟味する必要があるだろう。

このように、身体性とバーチャルなインタラクティブ性という特徴をもった映像作品が増えてきており、ウェブと映像の融合というのもますます進んできている。こうした流れのなかにのり、それを生かせる魅力ある映像作品というものがますます求められることになるだろう。

野澤智

メディアとしての技術の企画、実装を行う傍ら、映像、広告やWebなどの話題をblog「ニテンイチリュウ 」で日々更新しながら、ウェブ・雑誌にも寄稿。


Vol.05 [PRONEWS課題図書] Vol.07