txt:川井拓也(ヒマナイヌ)

2011夏、ライブ配信の新しいカタチはじまる

映像は絵画からはじまり、写真へ、そして映画、テレビと進化してきました。絵画の時代はキャンバスの大きさや比率は比較的自由でしたが、写真やテレビになるとハードウェアの制約によって決定づけられていくことになりました。アナログテレビからデジタルテレビへと移行し16:9という画面比率になった今、ふと気がつくとiPadなど縦長の画面をデフォルトとしたデバイスとして発売されていたりします。ケータイ文化は人間工学の上から縦長の画面となり写メという新しい写真文化が縦長の写真をデフォルトにしました。

しかし映像の世界だけは横長の呪縛から逃れられなかったのです。ライブメディアにおいてもそれは同じく、Ustreamでもニコ生でもツイキャスでも画面比率は4:3か16:9の二択でした。ところがUstreamではそこに異変がおきつつあります。Usrtreamは長らく16:9をデフォルトとしたユーザーインターフェイス設計がなされていました。例えば4:3で配信しても16:9の比率の左右にブラックが入った状態で4:3で配信されていたのです。

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しかし2011年8月のUI改訂でそこが変わりました。4:3で配信すると左右いっぱいにひきのばした状態で上下が伸びるようになったのです。それも映像が上下に伸びるだけでなく、ソーシャルストリームも伸びるようになりました。これは面白い逆転現象です。16:9より4:3で配信したほうが視聴者のパソコン画面に占める映像の面積が広いのです。同時にソーシャルストリームも一度に多くのコメントを読めるようになりました。このことに気がついて中継テストをしていたとき、ソーシャルストリームで「正方形も長方形もいけるみたいよ」というコメントが寄せられました。「え?本当?」というわけでやってみると、なんとこの新しいUstreamは画面比率が自由であるということが分かりました!

これは面白い!これまでテレビのサイズに縛られていた画面比率が自由になるということはどういうことなのか?いろいろ試して見ることにしました。Ustreamのデフォルト視聴画面は横608ピクセルなのですがこれをそのままに縦方向を伸ばしていきました。しかし普通のビデオカメラなどの入力では720ピクセル×480ピクセルですからそのまま縦に伸ばそうと思っても拡大することになってしまいます。それではクリアな映像になりませんからHD解像度を持つUSB接続のHD Webカムを使いました。機種によりますがこれだと縦が720ピクセルや1080ピクセルまで伸ばせます。

テストで縦をどんどん伸ばしていくと面白いことに気が付きました。画面の左半分が映像、右半分がソーシャルストリームになったのです。人を映せばポートレート写真のようになり、まるで画面から飛び出してくるような迫力があります。食べ物を映してみるとまるで雑誌の写真のように見えます。写真かな?とおもいきやスプーンやフォークがフレームインして「あ!動画か!」なんて思うくらい。

それいけ!ポートレートストリーム!

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縦長配信を「ポートレートストリーム」と勝手に名付けてFacebookにグループを作ると早速全国からUstreamerが登録してくれて、3日で110人にもなりました!このグループではいろいろな実験が行われています。ポートレートストリームの縦長中継は何に使うと面白いのか?ポートレートストリームの王道である「人」を写す場合はカメラ位置をどのあたりにして目線はどのようにすると視聴者がドキッとするリアリティを感じるのか?ペットを中継する場合どんなペットが面白いのか?窓からの定点中継をする場合どんな対象物がいいのか?などなど。ここで紹介している画像はそんなポートレートストリームの実験スクリーンショットです。このグループにいる人たちの間では縦長中継画面も慣れてきた感すら漂っているのですが、最初にポートレートストリームを見る人のインパクトはかなり強烈なものがあります。

Ustreamがテレビと決定的に違うのは「画面の中の場所に合流したり画面に映っている人に会いにいけること」だと思っています。その意味で見た瞬間に大きな画面占有率で人や風景が飛び込んでくるポートレートストリームは新しい何かを生んでくれそうな気がします。メーカーがハードウェアの都合で決めた画面比率から自由になりもっとグラフィックデザインなどの平面構成の要素も映像の世界に入ってくると面白いなーと思います。

Ustream側の仕様変更の隙間をついているようなポートレートストリームはいつまでそのスタイルで配信可能なのか分かりませんが、やれるうちに面白いことをしましょう!まだトライしてない人はぜひやってみてください!きっとやってみた人の数分のアイデアが生まれると思います。ポートレートストリームの詳しいやり方はFacebook「飛びだせユーストリーム!」というグループのドキュメントにまとめてありますのでぜひ参照して下さい。

川井拓也(ヒマナイヌ)

頓知を駆使した創造企業、株式会社ヒマナイヌ代表取締役。PRONEWSでのコラム担当はGadgetFinder。企業webサイトのプロデュースからソーシャルメディアの活用方法やアドバイスを手がける。mixi年賀状でTIAAグランプリ、文化庁メディア芸術祭ではプロダクツやサイトで3度入賞。現在はライブメディアコーディネーターとしてUstreamなどの中継クルーのコーディネートからページカスタマイズを行っている。
http://www.himanainu.jp


Vol.06 [PRONEWS課題図書] Vol.00