422カメラってやっぱり必要?!
PDW-700とPMW-500
地デジ化以降、そして3.11で一時的にではあるが収録テープの供給がストップされた経緯も踏まえて、キー局や地方局では、半ば神話化されたHDCAMから次世代のファイルベースカメラへ急速に乗り換えていると聞く。しかし地域に密着しているCATVや地方自治体制作部等はそうそうチェンジできる訳でもなく、未だSD放送が多い。地域性も踏まえて考察中の所が多いはずだ。 単純に購入予算とコストパフォーマンスだけを重視するなら業務用小型ハンドヘルドという選択肢も十分考えられるが、上位メディアと言う事も考えるとやはり422MXFと言うフォーマットは中々無視出来ない項目でもある。XF305や最近登場したHPX250でも十分パフォーマンスは得られるはず。しかし今現状で持っている資産(バッテリーやワイヤレス等)や絶対的な使い勝手を考えるとやはりENGタイプのカメラが真っ先の候補になるだろう。
2台の兄弟機種?
心臓部はほぼ同じ2機種だが、そのボディは随分と違う
XF305やHPX250では若干物足りないのはわかった。ではENGタイプならどんな機種を選ぶことになるのだろうか?4:2:2コーデックを使用しているカメラだと業務用の中でもかなりハイエンドで高価。その割には情報も少ないのも事実。最近のカメラとしては、Ikegami GFCAMやSONY XDCAM HDシリーズが挙げられる。Ikegami GFCAMは今年のNABで何やら4/3inchでの展開も考えているような展示をしていたので今後が楽しみだ。
今回はSONY XDCAM HD422シリーズを選んでお借りした。今回の2機種を選択した理由は、カメラ部分はお互いに2/3inchCCDを使用し、収録には4:2:2コーデックを使用しながらその収録部分はBDとソリッドメモリーと言う全く違った記録メディアに収録するタイプとなっている。まずは簡単にその2機種を比べて見よう。
※PDW-700 / MPEG-2 MP@HL:35/25/18Mbps PMW-500 / MPEG-2 MP@HL:35Mbps 両機とも422フォーマットは同じ
比べてみるとPDW-700とPMW-500はその心臓部(撮像板まわり)は2機種とも数字上の違いは見られない。つまりカメラ前半部分は同じ物でその収録部分だけが違うだけと言う認識で間違いない。しかしPMW-500はXDCAM HD422フォーマットとEXフォーマットの2種類を搭載しているので多種な環境に順応することが出来るはずだ。相対的な差分を見てみると一番興味深い部分は消費電力だろう。メモリーとディスクの違いだけで約13Wも違うというのが興味深い。これはモーターだからと言うより単純にレーザー照射の電力だろう。因みにモーターの消費電力は回ってしまえばたいした負担にはならない。その辺はZ5JとNX5Jの消費電力の違いを見てみれば解るはずだ。そしてその画質の差も基本的には同じはずだが若干のセッティング違いはあるのだろう。
左:PDW-700 右:PMW-500付属していたレンズの差が、若干ディテールの違いに影響しているか?
現場への導入
SCN 西村 氏
今回、早々にXDCAM HDを導入したというSCN(湘南ケーブルネットワーク株式会社)の技術部 西村和俊氏にその経緯をお聞きすることが出来た。
実はまだ送出部分に関してはまだSDです。その前に収録部分の機材は先行して入れ替えたというのが経緯ですね。最も今のシステムが20年経っているので良いタイミングだとは思ってます。
確かにこのタイミングで全ての物を全て変えるというのはキー局クラスではないと予算的に厳しいと言う。また、今回のタイミングは地デジ化と言うのも理由の一つにある。試しに「地デジ化が無かったら今回の選択はありか?」という質問には即答で「無しです(笑)」との事だった。
HD化へのシステム変更のロードマップは既に1年前から動いているんです。実質的に動き出したのは2月位で、あと2年以内で完全HD化を目指しています。
割合早いレベルからHD化へのタイミングは計っていたというだけあって、CATVでこの決断は筆者の知る限りでも確実に早い。しかし良く聞いてみればSCNが受け持っている地区は結構広いと言う事も先手で行く必要があるのだろう。
機材選定自体は最大の予算の振り分けを考えつつ選びましたが、一番重視したのはランニングコストを含めた安全性です。P2でのシステムも検討しましたがP2カードの高価さと余り良くない噂(データーが飛ぶ等)も耳にしてしまい、シンプルで安価なメディアという意味でXDCAMを選びました。
まぁ納得ではある。この安全性と言うのはおそらく何か収録トラブルがあったときのサルベージ機能の事だとは思うがこの辺はXDCAMは確かに強固ではある。
実はウチのXDCAM HDって300シリーズの方なんです。今回は予算の都合と未だHD422を本格導入している同業他社の情報が無く、使い勝手やトラブル等も踏まえて今回はHD422は選ぶことが出来ませんでした。この先予算が出来たとしてもやはりディスクベースでの運用になると思います。やはりメモリーベースは取り扱いの難しさ、特にファイルを”消去”すると言う事に違和感を覚えてしまいます。
確かにディスクベースなら素材をそのままアーカイブとしても数千円の出費で済むが、それをSxSカードでやるとすれば桁が一つ確実に違ってしまうと言うことだ。
422に関しては現状では必要性を感じていません。高ビットレートと言うのは画質向上もあるので良いのですが、プロキシデーターを含む422コーデックは運用の仕方が解らないと言うのが正直な部分です
確かに422コーデックとは切れないメタデーター(プロキシデーター)部分の使い所が前例がないので解らないと言うのはまさに正論でもある。某キー局ではXDCAM HD422の仕様変更でプロキシデーター自体を高画質化したスペシャル仕様で、最悪の場合はそれ自体でもOA出来るようにしたと言う噂はあるが、この様な使い方はまず出来ない。422を使いこなす前にメタデーターを使いこなすと言うのがこの手のカメラの使い方かも知れない。因みにXDCAM HDを繋げるためのNLEはEDIUSのターンキーモデルを使用している。確かにこのモデルならどんなフォーマットが来ても取り込む事が出来るだけに有効な選択だと思う。
総評
端的に言ってしまえば、422の実用性は感じるが導入時の予算を考えると今回取材したCATV局でも中々導入し難いというのが本音だ。特にメタデーターによる素材管理をするならばまたエクスチェンジサーバー等の機器が必要となってしまう。しかしCGやVFXではキーヤーでの運用からやはり422のデーターは欲しいところ。収録方法にしてもソリッドメモリーを使うのかディスクを使うか。メディアのみの価格、さらにアーカイブする為の道具としてコストパフォーマンスを考えるなら確実にディスクが有利。しかしこの先メモリーの価格が急下落するのなら、また白紙に戻して再検討と言う事だろう。
422自体がこんなに一般的に使われるようになったのはやはりCanonXFシリーズを代表としたハンドヘルドでもデーター管理が出来る高画質収録機器の登場かも知れない。そう言った意味も踏まえてPDWとPMWを現場で運用してみると確かに筐体の頑丈さバランスの良さも踏まえてPDWの良さが目立った。
実際この先422コーデックと言うのは、HD化に伴ったハイビットレート環境では無くてはならない存在になるだろう。それはつまりメタデーターの活用法が浸透しているという意味でもある。現在ではコストパフォーマンスを考えると躊躇してしまう機種が多い中、その辺の問題点が片付けば我々のようなミドルレンジ層にも普及するはずだし=(イコール)その辺りから本当の意味での422元年が始まるのではないだろうか?少なくとも現在では本当の意味での422の必要性は感じてはいないと言うのが大半の本音だろう。