DSLRとの決別?!

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何だかんだこの1年間での大型撮像板ビデオカメラという物が完全に定着し、高画質カメラ=3枚撮像板、と言う常識が無くなって来た。もちろん、今までのシステムを否定するのではなく、新技術が進化していると言うことだ。それにしてもCanon EOS 5D MarkIIが登場してDSLR=デジイチのオマケ機能と言う部分から完全に一つのジャンルを確立したのは、やはり昨年登場したSONY NEX-VG10の存在は大きい。

しかし残念ながらVG10は、ある意味メーカーの実験機と言っても良いくらいの内容で、その中身は完全にコンデジからの流用。外見こそビデオカメラであったがそのレンズも含めて中身はビデオカメラの形をしたデジカメ(+オマケ動画)的な位置付けと言っても良いだろう。悪意はない!

特にカメラの根本的な動作(シャッター速度・絞り・GAIN)が完全にデジカメの概念で在った為に、手にとってすぐにシューティングと言うのは少々無理があった。そんな諸々の不満点がある中、SONYが出してきた回答は完全に業務機としての機種でその外見も方向性もVG10とは若干違う物としたNEX-FS100をInterBEE2010で登場させたのは記憶に新しい。しかしFS100は価格も踏まえてガッツりと色々な計画(含む調整)をしなければならない機種になってしまった。それは正しい姿ではあるが、やはりVG10のコンパクトなボディ+レンズ交換は欲しいところである。

エボリューション

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VG10のコンパクトな部分を優位として、創意工夫で業務に使っている方も多い。筆者もVG10の基本操作だけでも何とかならないかと思っていた所に登場したのが後継機種のNEX-VG20である。見た目は殆ど変わらないボディ、まるで間違い探しでも在るかの如く、その外見に違いを見つけるのは難しい。ざっと見て解ったのは撮像板の位置を意味するマーキングと、グリップ部分に増設されたRECボタンとリモコン受光部、それにVG10の一番の弱点であった三脚マウントの1/4inchネジはしっかりと強化されていた。さてVG20とVG10が数値的にはどれ位変わったのか改めて対比してみた(ついでに民生機最高峰のAX2000も引き合いに)

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この簡易表を見ると外見は同じに見えても中身は総取り替え位の内容と言える。一番重要なのはセンサー部分。大きさこそ横方向で0.1mmしか違わないように見えるが、有効画素数を見ると全く別物だと言うことが読み取れると思う。この件に関しては直接メーカー技術者から聞いた訳ではないので個人の推測見解なのだが、LCDが同じ性能だとすると明らかに画質の違いが目で確認出来る位に両者は違う。これはサンプル動画を見て貰えば一目瞭然だが、当に立ち位置が2歩は確実に下がる。これは大きい進歩だ。

さらに記録フォーマットを見るとその差は歴然。VG10はせっかくプログレッシブでセンサーは出力しているのに最終的には60I変換をしているが、VG20は最大60Pにも対応していることが解る。最低被写体照度も数値的には明らかにVG20に軍配があがる。重量も若干だがVG20が重いがそれでもキット標準付属レンズを付けても約1.2kgに収まっている。数字的に見ればかなり軽い方だろう。

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さてここで比較されているAX2000だが最低被写体照度が他の2機種に比べるとずば抜けて数値が良い。これで単純に”明るい!”と思うのは早計であり、この部分の考え方が大型撮像板ならではの所だと思う。単純に考えれば0dbの基準が違うと言う事で良い筈だ。とにかく撮像板が大きいので受光部が大きく取れるので感度は良い。

AX2000で+9dbでギリギリ使えるかどうかの部分でも、VG20なら+18db位までならノイズ感も無く常用できる。この差は大きい。その他でVG10からの進化で特筆できる物はLCDモニターの回転可動部分の増大(対面撮りOK)HDMI出力時にもLCD(またはVF)の映像が切れることが無くなった。つまり外部レコーダーへの接続が楽になったと言うことだ。

このカメラは買いか?

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もし「VG20を買いたいんだけどどうかな?」と相談されたら、間違いなく「他のカメラにしなさい」と言うアドバイスになる。それはこのカメラが買うに値しないのではなく、人に聞いて買うカメラではないと言うことだ。つまり「目的をもって」ということになる。このカメラで何をしたいのか、何を撮るのか、在る程度明確にしてから手に入れるべきカメラだと感じる。とは言えVG10に比べるとVG20はかなりビデオカメラになっている。

メニュー画面自体もNEX系のコンデジから一般的なハンディカムの物となり、かなり直感的に分かりやすくなった。操作パネルもシャッター、絞り、ゲインと一目瞭然になっている為にコンシューマー機と言えどもマニュアルで在る程度撮れる位の知識が在ればVG20は扱えるはず。特にVG10の時にはシャッター速度とISOの関係が解りにくかったがそれも無くなり、かなりビデオライクに扱える。

特にそれを感じたのがホワイトバランス関係。VG10では多彩に在ったWBメニューもVG20では単純に、自動/ワンプッシュ/屋外/屋内、の4項目。VG10のように色々な色味で初めからWBを調整できないのでこの部分に不満を持つ声も多く聞くが、ワンプッシュがあるのだから特に問題は無いはず。どうしても色味を調整したいならレンズ前に照明で使うカラーフィルターサンプルをレンズに通して気に入った色味を作れば全く問題はない。

しかしVG10からの唯一の欠点はやはり引き継がれていて、NDフィルターは搭載されていない。Eマウントのフランジバックの小ささから考えると、あの場所にメカニカルなNDを入れるのは不可能であるのはしょうがない。現状ではレンズ毎に可変式のNDフィルターを用意するかリグを使ってフィルターをセットするしかない。ダイナミックレンジが多少犠牲になるがマイナスGAINが在ればこれも若干は緩和されそうなのだが。

総評

VG10から正常進化し、微妙なデジカメとビデオの中間的な位置付けが、VG20に変わって完全にビデオカメラになった。ND等の問題も在り若干価格も高くなってしまったが(その代わりにレンズ無し設定もあり)現状ではレンズ交換式のビデオカメラとしては最安値である。

これなら学生でもちょっと頑張ればレンズ無しのボディは買えるはず。なにもEマウントレンズを使わなくても、ニコン変換を使って玉数の多い旧型ニッコールを使うというのも手な筈。

SONYにしては若干ボディが洗練されていない気もするが、それも今回の様にリグを使えばその不格好さが逆にシネマカメラっぽく見えない事もない。強いて言えば、これでマイク入力がキャノン端子で在れば言う事無しのカメラだったに違いない。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。