DSLR-ENG
最近筆者の周りでは、DMC-GH2等マイクロ4/3inchのミラーレス一眼をベースにB4マウントのENGレンズを付ける所謂「DSLR-ENG」と言うスタイルがだんだん確立されてきた。この背景にはB4マウントのレンズがマイクロ4/3の丁度1/2サイズであることから、エクステンダーを入れることで2/3inch×2倍=4/3inch(大凡の概算上)としてイメージサークルにピッタリ填まるからだ。もう一つは60i収録と言うことも理由に挙げておきたい。
そんな中でコンデジ系ではなくビデオとして最初からスタートしているSONY NEX-FS100と同VG20なのだが、共に最初から60iフォーマットを積みENGでも実は使えるのではないか?実際に現場で使ってみたらどうなのか?と言う疑問からSONYさんに協力いただき、NEXシリーズでのマルチカメラ運用と言う事を試すことになった。
意外とイケル舞台撮影
マルチカメラと言うと筆者の得意分野でもある舞台撮影に焦点を当てて見た。流石に一発本番で慣れないカメラを仕事で使うのも少々怖いので、出来ればロングでやっている舞台が良いのだが、丁度良いタイミングでゲネから本公演まで4日間と言う舞台撮影が舞い込んできたので、この千秋楽午前の部に投入することに決定。もちろんゲネプロと途中でテスト廻しすることで、レンズの感覚を慣らしておいた。このEマウントのレンズはフォーカス・ズームともENGレンズの逆転仕様なので咄嗟のレンズワークでどうなるか心配だった。
この日は相方の西村カメラマンもFS100に初めて触るレベルだったが、後で映像を見ても全然問題はなかった。逆転という事で使い難いという刷り込みが先行してあるのがやはり問題なのか?こと舞台撮影のように滑らかな操作が要求される場面では特に問題はなかった。もっともこれがENGとのチャンポンだと厳しいかも知れないが。
筆者(左)と西村カメラマン(右)との撮影スタイルの違い
大判撮像素子は有利か?
これが気になる方も居ると思うが、一番の違いは暗部のディテールがどの様になるかだと思う。先に結果を言ってしまうと間違いなく階調が乗っているために黒で潰れているように見えてもしっかりと映っていると言う結果だった。これを検証をする為に一公演の引きカメラをENGカメラ(JVC GY-HM700)とFS100で同じように廻しその映像を見てみたが、FS100に標準装備されているレンズは残念ながら明るいとは言えない。例えば標準感度のGAIN 0dB同士で比べると明らかにHM700の方が明るい。それも半絞り明るいとかそう言うレベルではない。
FS100を業務でバリバリに使ってるユーザーならお解りの方ばかりだろうが、ハイアマチュアの方でVG20を購入した物の普通の民生機カメラの方が明るく感じてしまう方へのワンポイントアドバイスとしては、この手のカメラの0dBは今までのカメラの0dBとは全く違う考え方で良い、という事だ。何故ならFS100で例えると+18dBまでGAINを上げてもノイズ感は感じられない。逆に通常のカメラで+18dBまで上げてしまうとザラ付いてお話にならない場合が多い。つまりは0dBのベースの意味が全く違うと言うことでこう考えれば+9か12dB辺りを常用で考えるとすっきりする。今回は舞台進行が全体的に暗めで、一ヶ所究極に暗いシーンがある。HM700の設定は+9dB、FS100は+15dBで撮影を行っている。その比較は動画にて見て欲しい。YouTubeなのでかなり圧縮されてしまってる分厳しいかも知れないが、暗部の階調とダイナミックレンジの広さが解ると思う。
今回ついでなのでミラーレス一眼NEX-5Dもその中に混ぜてみた
かなり舞台撮影にこの手のカメラと言うのは好感触の手応えを掴んだが、慣れるとは言え純正レンズは決してレンズワークがいい訳ではない。約10倍のズーム比はやはり厳しい。最低限14倍は欲しい所。価格は若干高くても良いので、Eマウントで使えるENG系のレンズを是非登場させて欲しい。
ロケの現場では?
やはり何回も書くが逆転レンズの癖をどう覚えるかがポイント。その映像はPRONEWSのCP+の記事内でも見ることが出来る。この様に感じた何ヶ所か怪しい場面もあるが、この手の取材なら大旨OKかと。実はこの時にはズーム操作を間違えないようにプロ機材ドットコム製のズームレバーを使っていて、ゆっくりとしたカメラワークを心がけた結果この手のENGロケでも使えることが解った。但し、特にFS100では本体そのままではENGロケには向いていない。プロ機材ドットコムさんからRIG一式をお借りして装着しているが、これがないと流石に厳しいと思われる。
Apple ProRes 422はWindows環境に混ぜることが出来るか?/Ki Pro Miniの可能性
Ki Proに関しての性能等はもう色んな所で語り尽くされているので、性能等はそちらで見て欲しい。筆者は全く興味なかったと言っても過言ではない。理由は簡単。Mac環境でしか使えない(と思っていた)Apple ProRes 422コーデックをメインフォーマットとしているからだ。筆者は、Win環境でEDIUSベースであったこともある。Ver5程度なら全く問題はなく取り扱えるのだが…。
ENGカメラとの親和性
と言う事で、使えるなら使わない手は無いKi Pro Mini。Vマウントバッテリーが使えるアダプターと一緒に早速ロケ現場で使ってみた。入力のI/OはHD-SDI端子を使用しカメラ側のトリガー関係なくバックアップ的な意味でKi Pro本体は廻しっぱなしの設定だ。
最初設定が違って(クリップのカウント)巧く動かなかったが、設定を一度リセットしその後再設定でしっかり動くようになった。カメラ本線とは別にこの様に収録で廻っていると助かる。またS270JはHDVフォーマットなので画面サイズは1440×1080なのだが、外部収録をHD-SDI入力にすることにより1920×1080となり、他のHD素材と混ぜるときには大きい。
あり合わせのパーツでRIGに組み込んだが流石に重い!
さて今回、Ki Pro Miniのアップデートの一つとしてFS100のTCをHDMI経由で引き継げると言う物だったのだが、これも全く問題なくOKだ。勿論RECトリガーもFS100からコントロール出来るので、Ki Pro Miniをメイン素材とすることも出来る。つまりトリガーが効くと言う事はFS100だと同時に3種類のメディアに収録することが出来ると言う事で、しかもTCは引き継がれているからデーターの軽いAVCHDでオフライン編集をし、そのまま、高ビットレートのProResに置き換える事も可能という事だ。
WindowsとProRes 422の関係
ProRes 422がMacだけのフォーマットと決めつけている方も多いはず。筆者もその一人だった。しかし、しっかりと検証した方が大勢おり、Windows(EDIUS)環境でKi ProファイルであるProRes 422がネイティブにタイムラインに載ると言うのが今回の一番のポイントだ。
実際に扱ってみると思った以上に軽くTL上で動く事が解った。一つ欠点として挙げるならば、せっかくTCが引き継がれているのにEDIUS上では00:00:00スタートになってしまってるという事。この事自体もかなり有名な事でそれの解決策もある。その一つとしてNext-Zeroにこれらを解消するフリーソフトウェアがあり、最も簡単に対処出来る方法なので紹介しておきたい。リンクは、こちら。
総評
今回ベースになる大判撮像素子での60i収録、及びENGスタイルというのはこの先のカメラの使い方としてもメジャーになっていくと思われる。筆者自身DSLRを否定してきたが、それから技術が進み慣れた使いやすいフォーマットが搭載された事によりプラスの方向が多いならドンドン使っていきたいと思う。プログレッシブで撮らなきゃ意味がないじゃん!と言われる方もいるだろう。しかしそんな時代では無いのかも知れない。昨年の特集で「理想のカメラ」を書いたが、現実味を帯びてきたと感じているのは、筆者だけではないはず。
カメラ本体は撮像素子の大きさや枚数を選び、レコーダー部分はフォーマットとコーデックをチョイスする。その組み合わせのノウハウがもしかしたら将来のカメラマンのスキルになるかも知れない。もしそうなったら本当に面白いが、ここで忘れちゃいけないのはEVFの存在だ。現状でEVFと言うのが中々種類が少なく価格も高い。どんなにカメラを買うことができてもEVFは自分の物を使いたいと言う欲求も出てくるはずなので、メーカー・サードパーティー問わず、是非質が良く、そこそこの価格のEVFの販売を切に願いたい。