三脚だけじゃない!Libec

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Libecが何を作っている企業か?と問えば、半分以上の方が「三脚」と答えるだろう。そこで「ミニジブ」と答える方は珍しい。マニアックな方か実際に使っている方の筈。三脚と答えた方も最近のRSシリーズからの方が多いかも知れない。確かに残念ながらRSシリーズ以前のLSシリーズだと、従来の三脚メーカーと比べて物足りなかったのも事実である。

しかし、RSシリーズはLibecを一新するような素晴らしい三脚に生まれ変わった事は言うまでもない。そんなRSシリーズ登場から既に2年が過ぎ、そろそろ次の大きな話題が欲しいと思っていたところ。タイミングが良い事にNAB 2012が開催される前、Libecからも「ウチはやりますよ!」と力強い言葉を貰った。こりゃ確実に新製品登場だな!と考えるのは当たり前だろう。そしてNAB初日、いち早くLibecブースで見た物は最新型の三脚…ではなく大きな特機だった。

SWIFT JIB50はレボリューション

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左からリモートヘッド、レンズコントロール、ヘッドコントロール

元々LibecはミニジブとしてJB-30という製品を出していた。筆者も実は何回か真剣に購入を考えた製品で、その価格の割にはもの凄くしっかりとした特機であった。「これ利益ちゃんと出てるのかな?」という位の良い機材だ。単純に同価格なら明らかに作りが違うジブだったが、アームの長さが若干物足らないと言う声も出ていた。実際に直接ジブ毎にカメラマンがカメラを操作するなら丁度良い長さになるが、リモートヘッドを付けてとなるともう少し高さが欲しくなる。その点を今回のJIB50はちゃんとカバーしてきた。アームの長さを最短100cmから最長190cmまで無段階に変更が出来る。これならば高さが低いミニスタジオからオープンロケまでしっかり対応出来る高さになる。しかしこの高さまで上げるとなるとJB-30の様なオペレートは出来なくなる。

Remote Head/REMO30

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NABで登場したのはジブアームだけではない。リモートヘッドまでオリジナル自社製品として発表をしていた。これは驚くべき事でもある。機械製品を作っている会社が電子部品まで作ってしまったと言う事だ。しかもその精度が素晴らしく高い。この部分に日本の工業技術の高さを感じることが出来る。内容としてはリモートヘッドとそれをコントロールするリモコン部分、オプションとしてSONY・Canon・Panasonicに使用出来るレンズコントローラーに分けられる。このリモート部分はVマウントアダプターを積んであり、そこにVマウントバッテリーを付けると電源レスで動かすことが出来、オープンロケではその威力は大きい。

また、コントロール自体もジョイスティックにリニアに反応するため、動きが緩慢に感じることはない。スピードコントロールも個別に出来るので、初見でオペレーションしても2時間位練習すれば一通りの動きは把握出来る。

実際今回は千代田区秋葉原のパンダスタジオにて本番にいきなり使ってみたが、簡単な操作なら直ぐにでも出来てしまう。筆者もオペレーションをしてみたが、ある程度までなら直感的に操作出来る。RCヘリを操縦出来る方なら初見でもカメラリモートだけならほぼ完璧に動かせるのでは?と思えるほど。難しいのはレンズリモートをどうするかと言うこと。カメラヘッドを3D的な動きに合わせるのは、流石に練習がかなり必要だと感じた。

セッティング

こればっかりは1人では難しいだろう。しかし2人いれば何とかセッティングは出来る。ジブのバランスと、リモートヘッド上のカメラバランスさえ取ってしまえばそれでOK!他のジブ&リモートヘッドに比べて配線関係を極力内蔵型にすることによって無駄な応力が掛からず、断線からも強くなっている。しかも見た目もすっきりとしていて美しい。

またリモートヘッドはジブアームに対して据え置き方式とつり下げ方式の二つを切り替えることが出来る。更に価格が驚くほど安い。ざっとした概算でジブ・リモートヘッド・トラックレールまで入れても実売なら100万円以下で収まる。この様子は既にデモ機をお借りしてHD Usersの配信内で使用しているので見て貰えればと思う。

もう一つ追加するならば、付属しているこれらの機材全てをコンパクトに収納するためのケース自体もかなり質が高い。この手の特機だとどんなにコンパクトとはいえ、運び込みにハイエースクラスが必要になってしまう所だが、JIB50のセットならハッチバック式の普通車でも全部積み込んで運ぶ事が出来る。つまり、ハイエースクラスの機材車なら常時積載していても何ら問題ないと言う事になる。

総評

もう先に言い切ってしまうと、特機を導入しようと考えている方がいるならこのジブアームのセットは100%お勧め!これ以上の物になるとオペレーションとも難しく、機材的にもチームとして動かないと運用が出来なくなる。そこまで大きな物なら今まで通りレンタルした方が仕事の進みも良いはずだ。チョット高さが欲しいとか3D的な動きが欲しい場合に機材車に積んでおけるサイズなので、その辺は強力な武器になる。

筆者的にはLibec=日本を代表する三脚メーカーと言う認識があり、確かに技術力が高くこの様な特機も作れることは解ったので、今度は是非本筋である三脚で驚かせて欲しいと思う。カメラや周辺機器が日本製なのに三脚だけ外国製品がスタンダードになってしまっているというのは、やはり日本人として悲しいものだ。

確かに歴史のある海外メーカー三脚に対抗するのは難しいことだと思うが、そこは是非チャレンジをして貰いたいと切に願いたい。とりあえずは本年のInterBEE 2012で新規に三脚が出品されるのか?初日の午前中に顔を出したいと思っている。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。