4K野郎再び降臨
JVC JY-HMQ30 4Kレコーディングカメラ。やはりRIGで武装するとそれなりのカメラに見えてしまうから不思議だ
最近4Kカメラが市場に登場し、レンタル屋にも数が揃い、実際の現場でも色々な方が扱うようになって来た。 自分も同じく、この数ヶ月、仕事やそれ以外でも何かと4Kカメラとの関わり合いが多いのだ。F55・C500・1D C・HMQ10と各々特色のあるカメラに携わる事が出来ている。冗談半分で4K野郎と言うネームまで頂いちゃった訳だが、ここに来て新たに4Kカメラに触ることが出来た。それが今回取り上げるHigh Resolutionなカメラ、JVC JY-HMQ30である。
さて、4Kカメラを扱う上でみんな口を揃えて言うのが「ピンが掴めない」「ピンが見えない」と言う事だ。確かに4Kの様なハイレゾリューションになると、高精細なセンサーに対してその出口の第一段階であるVF(LCD)が全くそれに追従しておらず、ピンを正確に掴むのはほぼ不可能だ。
かといって、業務用4Kモニターをスタジオならともかくとして、オープンロケに持て行くのも余り現実的ではない。ではどうするのか?気合いでピンを掴む!コレに尽きる。「ふざけんなよ、そんなの出来るわけ無いじゃん!そんなピンで仕事できるって良いね!」…ごもっともであるが、SDがHDに変わったときも同じ事を言って最終的には小型LCDが高精細になるまでは、みんな気合いでピンを取って居たはず…といささか乱暴ではあるが、理想はこう出来れば満点。だが実際はかなり厳しい。
Nikonレンズの絞り機能をレバーによって強制的に動かすアイディアは凄い!
だがHMQ30のフォーカスアシストはなかなかの優れもので、一度この機能を使って細かく見え方と実際の距離感を掴める様になるとこのシビアな問題も及第点でクリア出来る筈だ。元々レゾリューション自体が4096pixでは無くて3840pixなのもピンのシビアさを軽減しているのかも知れない。そんな問題を抱えつつも我々は新しいカメラに向かわなくてはならない。
JVC2機種目の4Kカメラ
HMQ10はENGセットが似合ったがHMQ30はこのスタイルの方が似合う
HMQ30は既に発売されているHMQ10のエボリューション(正常進化)モデルである。傍目にはNikonレンズマウントを搭載したレンズ交換可能な4Kハンディカメラと言う位置付けになる。実はこの2台はボディも共通パーツを多く使って似ているところも多いが、撮像板の違いやFALCONBRIDを搭載されていると言う事以外はまったく別のカメラとも言える。まずベースとなる考え方が面白い。解像度を敢えてHD×4倍の大きさにする事で、4分割されたHDサイズを各々のメモリーに記録する。一つ一つがHDサイズなので汎用のSDHCカードに記録するのは全く問題が無く、面白いところに目を付けた4Kカメラである。またHMQ30とHMQ10はぱっと見た目はレンズ交換式かどうかだけの違いに見えるが、前述のとおり中身はかなり入れ替わっている。ここで簡単にその違いを見てみよう。
JY-HMQ30 | GY-HMQ10 | |
撮像板 | 1.25型/891万画素 | 1/2.3型/829万画素 |
手振れ補正 | 無し | 光学手振れ補正 |
レンズ | Nikon Fマウントレンズ | 光学10倍(42.4~424mm)※ |
※35mm換算
ここで一番注目したいのはセンサーサイズの大きさ。一廻り大きくなった分画素数も増えている。このサイズ感をよく考えてみるとコンデジカメラであるNikon1のセンサー大体同じ位で、35mmレンズを付けた場合の画角はおよそ2倍強になり、M4/3カメラよりも焦点距離は伸びてしまう事になる。現存のNikonズームレンズで一番短いのが14-24mm/f2.8なので単純に考えて30-60mm程度の画角になってしまう。この辺は注意が必要になる。
インターフェースは特に大きく変わったところはない
逆にこのセンサーの大きさは丁度16mmフィルムの撮像面と案外同じ様な大きさになるのかも知れない。と言う事は工業用に今でも豊富にあるCマウントレンズ辺りをマウントコンバーターを介して取り付けるとまた違った面白さが出てくるかも知れない。f値に関してはHMQ10はf2.8~4.5だったので、かなり優秀と言って良いだろう。ニッコールレンズでズーム全域f2.8のレンズはかなり高価な筈だ。
流石に4KはCPUに楽をさせてくれない
4Kの編集環境は?
さて、ハイレゾリューションで収録した素材をそのまま持っていても、勿体ない。今回の最重要課題は”4Kの編集について”である。4Kをどうやって編集するのか?。筆者は自他共に認めるEDIUSユーザー、いやマニアと言っても過言ではない。EDIUS 1から使っているユーザーはそう多くはないはずだ。今回もEDIUSでの編集になる。既にHMQ10+EDIUS 6での編集経験も在るが、今回は正式に4Kにも対応した(XAVC対応)EDIUS Pro 7を試用させて貰った。かなり機能面での性能が向上していると聞いて言るが、全く気にせずにネイティブファイルをTL4本作って各々をレイアウトで配置して終了、そのまま編集に…と言うわけには流石に4Kはいかない。ハイスペックマシンを使えば24p迄ならネイティブで動くとも聞いているが今回は敢えてのノートPC編集なのでそうはいかない。
3840×2160と明記されている
EDIUSの新バージョンに期待!
“EDIUSの奇数番号バージョンに間違いなし!”この事はEDIUS使いなら周知の通り。今回のVerはその通りに奇数ナンバーの7、否応にも気分は盛り上がる(あくまでもユーザーが思っている事ですよw)。今回のバージョンからドングルは無くなり、1パッケージ2ライセンス(同時使用不可)をネット経由の認証で行う。今回のバージョンアップで一番変わった部分は操作感とか新機能はともかく64bit化された事によるCPUの使われ方に尽きる。
色々な処理をするときに従来のようにCPUパワーをまとめてドカっと使うのではなく、上手く分散させ効率化されている。もう少し分かりやすく言うなら、これまでのEDIUSがタイムラインを全部纏めてCPUパワーでやっつけていたのが、マルチタイムラインになれば各々にCPUを何個割り当てて、エフェクトに何個割り当てると言う感覚に近い。64bitになったからと言って、意気込む必要はない。大量のメモリーを積んでも動作が劇的に速くなるわけではないので、8~16GBを積んでおけば十分なパフォーマンスを示してくれる。VGAカードも他のノンリニア編集ソフトと違ってそれほど重要では無い。GPUパワーもさほど最新スペックを要求することはない。しかし心臓部であるCPUだけは別でとにかくパワーを要求してくる、一番重要なのはCPUパワーである。
ちなみにHDDの転送速度が気になるところかも知れないが、筆者のノートPCではUSB3.0で4K/30Pはタイムライン1本は走るが、USB2.0でも4K/24Pでなら映像次第で何とか走るかな?と言う感じ。しかし60Pは流石に駄目、動きはするもののストレスだらけでしょうがない。
総評
最近のJVCは面白いメーカーという認識が強い。FALCONBRID発表後の画質が非常に良い事にあるのだが、ある意味エポックメイキングな技術だ。今回のHMQ30も何処でもシューティングを出来るカメラのサイズをそのまま落とし込んだと言う考えだと中々面白いカメラと言うことになる。何処でも手軽に4Kを撮るには小型軽量化が必要となるが、それはレンズの大きさにも比例し画質は反比例する。その部分を上手く割り切り、チョット大きくても4K画質をフォローできる35mmレンズを使って仕上げて来たのは流石だと言える。
さて、今回のテーマは、4K編集…という事だったが、あまり触れられてはいない(汗)!快適な環境での編集については、また次回以降にお話ししたいと思う。実際の4Kの作例を見て頂く事でご了承願いたい。
EDIUSは奇数ナンバーが本命!と言われるのはこのバージョンでも十分体感する事が出来る。また各種インターフェイスもAJAやBMD等の社外品にも対応した事は大きい。ようやく64bitすることで他のNLEが持っていたアドバンテージを一気にゼロにすることが出来た。そうなると元々の動作の軽さは定評がある分、使い比べれば解るが動作の軽さ=ワークフローの短縮という意味にもなる。Adobe Premiere CCも盛りだくさんの機能実装してきた事も含めて選択の幅は広がった。悩みは尽きないが楽しくなった事は言うまでもない。