デジタル一眼レフカメラでタイムラプス撮影

※画質設定を[オリジナル]で4K再生可能

最近「タイムラプス」撮影がにわかに流行っている。いわゆるデジタル一眼レフカメラなどを使用して、連写したスチル画像を動画素材として使う撮影だ。例えばタイムラプス撮影で1秒間に一枚の間隔で撮影した写真素材を、通常の一秒間30フレームの動画として扱うと、30倍の「早送り映像」になるということだ。もちろん早送り映像という説明だけではその価値が分かりづらいかもしれないが、雲の動きや星の動き、あるいは花の成長などといった30倍にして初めて面白さが伝わる現象は世の中にたくさんある。

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デジタル一眼レフカメラでタイムラプス撮影。三脚の使用は必須だ

そういった早送りの世界こそがタイムラプスの醍醐味である。今回は2回に渡って、このタイムラプス映像について記事にしたいと思う。執筆にあたり自然を中心に3台のデジタル一眼レフカメラを使ってタイムラプス撮影に挑んだ。使用したカメラはCanon EOS 5D MarkIIを2台とNikon D700を1台。ちなみに5Dには本体にタイムラプスの機能が搭載されていないため、別途タイマーリモートコントローラーが必要となる。

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5D MarkIIを使う場合はタイマーリモートコントローラーが必要。写真はTC-80N3

デジタル一眼レフカメラがもつ3つのアドバンテージ

DG_TL01_003.JPG 星を捉えるには長時間の露光が必要。今回は動画使用なので10秒で撮影
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このタイムラプス撮影をデジタル一眼レフカメラで行うと、いくつかの利点が挙げられる。まずは「長時間露光が行える」ということだ。通常のビデオカメラの中でもタイムラプスで撮影できる機能を持つものもあるが、どれもシャッタースピードは最大で1秒程度のものがほとんどだ。デジタル一眼レフカメラを使えば、事実上露光時間は何秒でも問題はない。例えば夜空の星をキレイに撮影するにはやはり10秒程度のシャッタースピードは欲しいところだ。天の川などのごく微妙な光を映像にしようとするならば、デジタル一眼レフカメラでしか捉えることができない。

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各スチルデータのサイズと4Kの関係

そして2番目に「4Kで制作できる」ことが挙げられる。例えばCanon EOS 5D MarkIIでは一枚の画像サイズが5616×3744もある。今回はNikon D700も使用したのだが、そのサイズは4256×2832だ。一回り小さいとはいえ、いわゆるデジタル一眼レフの画像の大きさは4K映像の大きさよりも解像度は大きい。これを映像にするとなると、十分に4K映像を制作できるというメリットを活かすことができるのだ。最終的に画角を16:9やDCI4Kの17:9にすることが想定されるため上下にクロッピングが生じてしまうが、その大きさはすでに4Kのサイズをカバーしている。

DG_TL01_005.png 現像設定の画面。RAWで記録すれば撮影後に様々な調整を行える
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3番目に「RAW」で収録できることだ。RAWで記録できるということは、多くの情報を収録することができる。色温度や露出、ノイズリダクションなど、多くの修正をポストプロダクションで行えるのは大きい。特に夜から朝にかけての移り変わりを演出したいときなど、時間とともに適正露出が変わる場合はRAW収録を行うことで多少の露出を修正可能だ。更にRAW&JPEGを同時に記録することもできるため、現場での確認やオフライン用としてJPEGを使うこともできるというのがデジタル一眼レフならではの特徴と言えるだろう。但しシャッター間隔が1秒などの短いストロークで撮影をする場合は、記録メディアのスピードが求められることがあるので、その際はSanDiskなどのスピードの速いカードを使うといいだろう。私はSanDiskのExtremeやExtreme Proなどを使っている。

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SanDiskのCFカード。メディアは信頼性が一番

RAWで撮影するメリットを活かす

DG_TL01_007.png RAWで撮影した写真のJPEGと調整後のRAWの比較。RAWで撮影すればいろいろと安心だ
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JPEGでタイムラプスを撮影する人も多くいること思う。もちろん間違いではないし、ファイルの大きさが5倍ほど違うRAWとJPEGのデータサイズを考えるとJPEGの方が撮影枚数が多く確保できることや編集やアーカイブが楽であることは事実だ。しかしRAWで撮影すれば、撮影後に色温度や露出を編集できることだけでなく、ノイズリダクションやレンズ補正などの現像設定がとても細かく行えるので非常にありがたい。しかもAfter Effectsなどで編集する場合、撮影のシーケンスごとで一気に現像できるため、そこまで作業は煩雑にはならず、できる限りRAWで撮影することを強くお勧めする。もちろんデータサイズの管理には注意が必要だ。一枚あたり25MB弱あるRAWで撮影するとなると、16GBのカードに500枚程度しか撮影ができない。30fpsの映像を制作するのであれば、動画に変換すると17秒だ。つまり1カットで16GB一枚を使用する感覚で収録を行うことになる。一日に何カットも撮影する場合はメモリカードの用意が必要で、今回は3台の撮影となったため、随時HDDにバックアップ&インジェストを行い、現場でCFカードをフォーマットし再使用する方法で収録を行った。

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現場でパソコンがあると便利だ。今回は山中での長い撮影だったため、VマウントバッテリーからMacBook Proに給電した

ちなみにタイムラプスの撮影は10分~3時間はかかる。撮影がいったん始まると、時間を持て余すことなる。バックアップや仮編集などの時間は十分にあるため、パソコンを持っていくといろいろ便利だ。今回はバックアップをしたり、撮影の確認をしたりするためにMacBook Proを一台現場に持っていった。

ポイントは「どれくらいのスピードにするか」

タイムラプス撮影を始める時には、まず撮影する事象を「何倍の速さで映像化」するかを決めて簡単な計算を行う必要がある。最終的に決める項目は2つだ。それがシャッタースピード(露出設定)とシャッター間隔だ。当然シャッタースピードはシャッター間隔よりも短くなくてはいけないし、CFカードなどに記録するための時間も確保しなければいけない。つまりシャッタースピード<シャッター間隔という関係が成り立つ。また先ほど述べたように16GBのCFカードには500枚程度しかRAWは記録できないため、30秒以上の映像にしたいときは32GBや64GBといったカードを用意する必要がある。今回の撮影では32GBのカードを多用した。

例えば雲の映像をタイムラプスで撮影することを仮定する。雲には流れの早い雲と遅い雲があるが、大体30倍~60倍のスピードにすると塩梅のいい動画になるため、シャッター間隔は1秒~2秒ということになる。シャッタースピードは当然1秒以内で十分だ。また星の動きを捉えようとすると、星は一時間に約15度動くことからシャッター間隔は10秒~20秒がいいだろう。シャッタースピードは10秒をお勧めする。星が若干動いてしまうが、どのみち最終的には動画で使用するため完全に点の形で捉える必要はない。それよりもISOを下げることでノイズの少ない撮影をすることを心がけたい。16GBのカードを使用する場合、流れの遅い雲の撮影でシャッター間隔2秒、つまり1000秒の撮影となる。約16分の収録時間だ。星の場合は15秒のシャッター間隔で約2時間かかることになり、星は30度動く計算になる。ちなみに下記の映像は、シャッター間隔2秒で撮影した雲の映像と、4秒で撮影した雲の映像、そしてシャッター間隔15秒で撮影した星の映像だ。露出の設定なども併せて記しておいたので参考にしてほしい。

ソフトウエアを使って賢く撮影

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結露で使えなくなったスチル素材。ピンボケのような画になっている

ちなみに今回は長野県での撮影にチャレンジした。特に白馬での撮影は山中となり、機材の運搬は大変だった。また夏とはいえ、標高2000mを超える場所では夜の気温が0度付近になるためバッテリーの消耗が非常に速い。交換用のバッテリーは常にいくつか用意しておく方がいいだろう。大体1500回のシャッターでバッテリー1つ、といった感じだ。それと気温の低い場所ではレンズの結露などにも注意したい。

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EOS Utilityでタイムラプスの設定などいろいろ行える。また撮影したデータがそのままパソコンに転送されるので、リアルタイムで素材を確認・現像できる

今回の撮影でいくつかのカットが撮影中の結露で使えない素材となってしまった。撮影時間が長いタイムラプスは一度撮影が始まるとレンズなどには触れることができないため、カイロなどでレンズを温めておけば、結露は防げる。それと撮影された写真を随時確認したいのであれば、USBなどでPCと接続しEOS UtilityなどといったソフトウエアでそのままHDDに取り込んでしまうのも手だ。シャッター間隔が5秒以上という制約があるものの、万が一の撮影の失敗をその場で発見することができるだけでなく、タイマーとしても使え、更にはバッチ処理で現像も可能という一石何鳥にでもなる。実にオススメだ。機材を持ち込めて、電源などにアクセスできる場所であればこういったソフトウエアを使った撮影方法が一番効率的かもしれない。フィールドであっても工夫次第で実現可能だ。

撮影中の露出調整はなるべく避ける

ちなみに撮影中にシャッタースピードや絞りの値を変えることをする人もいるようだが、私はオススメしない。RAWで撮影する場合、撮影した素材の露出プラスマイナス1.5Stopの3Stopであれば全く問題なく調整可能だ。例えば夜から朝にかけての撮影でなるべく多くの情報を捉えたいのであれば、最初から2Stop程度アンダーで撮影を開始して、最終的に2Stopオーバーまでに収められれば同じ露出で撮影できてしっかりと情報を収められる。最終的な露出の変化はポストプロダクションで行えばいいため、撮影中における設定の変更はなるべく避けた方がいいだろう。動画にした際に突然画が明るくなったり、暗くなったりするのは特別な演出意図がない限り、使えるシーケンスにはならない。

次回はスライダーを使った撮影テクニックと、After Effectsを使った実践的な編集方法について触れることにする。乞うご期待!

WRITER PROFILE

江夏由洋

江夏由洋

デジタルシネマクリエーター。8K/4Kの映像制作を多く手掛け、最先端の技術を探求。兄弟でクリエイティブカンパニー・マリモレコーズを牽引する。