人気のGH4を触ってみる!
予想通り、あるいは予想以上の人気といっていいだろう。Panasonicのデジタル一眼カメラの最新機種となるDMC-GH4(以下GH4)は、4K動画が撮影できる世界初のミラーレスコンパクト一眼カメラである。もちろん静止画撮影をするための一眼カメラであるのだが、一番の特徴は4K動画をSDカードに収められるというところだ。PanasonicもGH4の位置づけを「ハイエンド・ハイブリッドミラーレス一眼」とし、実質的には同社としても初めての4K動画カメラということで、正に待望のリリースとなったのだ。
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ミラーレス×レンズ交換×4Kという新たな形で登場したGH4。発売前から人気は高かった
発売からすでに1か月あまりが経つが、評判はかなり高いといっていいだろう。すでに多くの動画がYouTubeなどにUPされているが、マイクロフォーサーズのセンサーが捉える4Kデジタルシネマの質感は、なかなかのものだ。各社4Kカメラをこぞって発表・発売した2012年から大きく遅れてのスタートとなったPanasonicだが、期待を裏切らない一台であることは間違いないだろう。なにせボディーだけで16万円程度で購入できるとなれば、そのお手軽さも相まって人気は高く、現在出荷が追い付いていないというのも頷ける。
カメラの仕様も、動画に関しては大変効率的だ。まず4Kの収録はDCI4K(4096×2160)解像度では24pを、UltraHD(3840×2160)解像度は29.97p~23.98pまで対応している。4Kの収録コーデックは、YUV4:2:0のQuickTime/MP4のH.246形式で、ビットレートは100Mbpsとなっている。IPBのフレーム間圧縮を採用し、4Kでもデータ容量を効率的に運用できるというのが特徴で、SDカードでも収録が可能になった(SDHCのクラス10レベル以上を推奨)。
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SDカードに100Mbpsのビットレートを持つ4K映像を収録できるのが驚きだ。UHS-Iスピードクラス3(U3)規格までの高速転送速度を持つSDカードに対応
HDの画質では59.94pを時間圧縮なしのAll-Intraフレームの200Mbpsという高画質で撮影が可能だ。またHDの100Mbpsでの撮影では、バリアブルフレーム収録にも対応し、最大で96fpsまでのスローを記録することができる。24ベースであれば、4倍のスローモーションを収められるので、多彩な演出にも活躍する一台である。AVCHDにも対応するなど、広い選択肢を持つというのも大きな魅力だろう。
またデジタルシネマのワークフローを視野にいれたガンマカーブも用意されている。それがシネライクVとシネライクDだ。シネライクVは「テレシネ調」の映像スタイルを実現するガンマカーブで、シネライクDはLogのような広いダイナミクスレンジを収録することのできるカーブだ。実際の撮影ではおそらく、ポストプロダクションのカラーグレーディングを考えると、ほぼシネライクDで撮影することになるだろう。
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シネライクDでは、厳格に検証したわけではないが、10ストップ以上のレンジはあるというのが感想だ。4:2:0のような収録の場合、こういったガンマカーブは使いようによってはよりデジタルシネマカメラ感覚でワークフローを組めるというのがいい。もちろん実際のLOGやRAW、あるいは4:2:2といった撮影に比べると、カラーグレーディングの余地がかなり狭まることは否めないが、100Mbpsという大変ハンドリングのしやすいファイルで4Kを手にできるとなると、「機動性」の高い作品作りが可能になる。
またH.264は編集においてもマシンスペックをそこまで必要としないのがいい。4KであってもMacBook Pro一台あればおそらくポスプロ環境は問題なく整うだろう。ちなみに従来の4K映像というのは、デジタルシネマのカラーグレーディング作業などを視野に入れたものがほとんどで、圧縮画質も非常にキレイなものを目指しているものが多く、収録データのビットレートも平均で800Mbpsぐらいある。そのため記録媒体もSSDなどの高速なものを用意する必要があったり、カメラ自体のサイズも大きくなり、更にはポスプロでのマシンも相応なものにしなければいけない。
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例えば4Kの収録が30分に及んだとすると、Blackmagic Production Camera 4Kの場合、ファイルサイズが大体180GB程度になるのに対して、GH4の場合はその8分の1の22GB程度で済んでしまうのだ。もちろん画質とデータ容量はトレードオフの関係にあるため、どちらがいいかはここでは議論にならないが、取り回しのしやすい4Kデータの需要はかなりあるだろう。加えてレンズを併せても質量が2㎏程度のGH4は、軽量で立ち上がりも早く、「ポータブル・シネマ4K」という世界を実現した一台であると感じる。
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レンズを合わせて2kgという軽量さはカメラマンへの強力なアシストとなる。一日持っても疲れないのは大きな魅力だ
更に嬉しいのが、カメラのHDMI出力から4Kの出力をすることができるのだ。SDカードに4K記録をしながらの場合は4:2:2/8bitの4Kクリーンアウトを、そしてSDカードに記録をしない場合は4:2:2/10bitのクリーンアウトを出力することができる。外部での4K収録機さえ整えば、さらに高画質なレコーディングを行えるということだ。また4Kの収録やモニタリングを行わない場合でも、出力をHDにダウンコンさせることもできるため、HDによるモニタリングや収録もワークフローとして組み込めるのが素晴らしい。小型であるにもかかわらず拡張性の高いインターフェースによって、様々なスタイルで撮影に挑めるというのが、このカメラの特徴だ。
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micro HDMI端子からは4K信号が出力される。最高で10bit 4:2:2までを外部収録できるのは素晴らしい
またバリアングルの液晶モニターも非常に見やすい。今回は3インチの有機ELパネルを採用し、タッチの感度も素晴らしく少し触れるだけで反応する。メニュー階層もわかりやすく、Quick Menuをボタン一つで起動し、瞬時にタッチパネルで各パラメーターを変更できるなど、必要なメニューに簡単にアクセスできるインターフェースはなかなか具合がいい。もちろん3インチの液晶で4K映像のフォーカシングを正確に行うことはやはり難しいため、フォーカスアシスト機能は高性能でストレスなく使用できるように設定されている。今回使用したPanasonic純正レンズのLUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6はAF機能が優秀で、顔認識などのフォーカス追尾モードもある。インタビューなど被写体がそれほど動かない場合では有効なアシストではあり、安定した動きを見せてくれた。しかし、全てのショットでファインフォーカスを求めるのはまだ少し無理があるため、MFを選択するほうが確実なフォーカシングが行えるだろう。
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バリアングルはカメラポジションを気にせずモニタリングできるため、とても使いやすい。ただし、さすがに4Kでは3インチというサイズは心もとない
マニュアルフォーカスをする際に役立つのが、タッチパネル内で拡大したい部分をタッチして、PinPでその部分を拡大表示させる機能だ。任意にその表示を指のドラッグで移動させることも可能だ。拡大場所を設定すれば、あとはフォーカスリングを回すだけで自動的に必要な場所が拡大される。これまでのカメラのようにカメラ本体のボタンでワンクリックずつ拡大部分を移動させ、拡大ボタンを押してからフォーカスリングを回すという作業は、画角を決めてからの手間が多く、ストレスが多かった。しかしGH4ではタッチパネルで拡大場所を選び、フォーカスリングを回すだけのため、画角→フォーカス→撮影という流れをスムーズに行えるのだ。
また拡大倍率を1.0~6.0倍まで0.1倍刻みで選択できる。しかし、変更する際に露出調整のダイヤルと併用されているため、絞り調整やシャッタースピード調整をしているうちに不意に倍率をいじってしまい、倍率が変わってしまうことがあった。そうすると4K撮影ではフォーカスの精度はもちろん甘くなるため、倍率は6.0倍から変えないように注意するといいだろう。
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画面左側に東京タワーがあるのだが、東京タワーの先に拡大先を選択した。画のコントラストが強いため、フォーカスの視認性は高い
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GH4のセンサーがマイクロフォーサイズの大きさなので、S35mmセンサーと比較すると被写界深度は深くフォーカスは合わせやすい傾向にある。もちろん4Kであるため、シビアなフォーカシングが必要になる点に変わりはないが、ボケすぎない画は大きな4Kモニターでは見やすく、さらにフォーカスが合いやすいのは大きな利点だ。ただし、ローリングシャッターは顕著に出現してしまった。電車から車外を撮影したところ、建物の歪みは大きく、明らかに不自然さが目立ってしまう。極力、ハンディや速いパンは避けた方がよく、スピーディーなワークには厳しいと感じた。
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マイクロフォーサーズというサイズもフォーカスアシストの一つとなる。浅すぎない被写界深度により、4Kの中でも比較的フォーカシングは合わせやすいのである
GH4の設定で一つ気になった点は、ISO感度が200/400/800/1600/3200と一段ずつしか選択ができない点である。やはり1/3ずつ設定し、ノイズをできるだけ少なくして撮影したいところである。露出を一定にし、ISO感度のS/N比を見たところ、ISO800か400を基準として、最大の感度をISO1600にした方がいいと感じた。実際に暗部に対するノイズはISO3200~では顕著で、さらに色が赤に転ぶような傾向があるように思える。実際に都内の夜景を撮影したところ、ISO800のF4.0、シャッタースピード1/100では明らかに露出が足りないため、ISO1600にして撮影を行ったが、空の黒にはそれなりのノイズが出てしまった。4K制作ではポストプロダクションでノイズリダクションが、カットによっては必要になるのかもしれない。
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ISO1600ではややノイズが目立ってくるものの、ギリギリ許容範囲だ。ISO200~1600の間でISOをセッティングするといいだろう
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今回、UHDの29.97fpsのフッテージはPremiere Pro CCで編集を行い、編集マシンはHPのZ620、ビデオカードはNVIDIA GeForce GTX780を使用した。8bit 4:2:0 100Mbpsの映像素材はフル画質で再生しても引っかかることもなく、さくさく編集作業を行えた。他のカメラの4K素材ではスムーズに再生されることの方が少なく、フル解像度で編集できることはやはり気持ちがいい。Premiere Proの4K再生環境にも評価が集まるところだろう。カラーグレーディングはAfter Effectsで行ったのだが、Premiere Proからコピペでタイムラインを移せるため、実質レンダリングは最後の書き出し時の一度のみだ。私がいつも思うことなのだが、Premiere ProとAfter Effectsのコンビネーションは最強である。そしてGH4の4Kの映像も高い表現力があるというのが印象だ。きめ細かい被写体が非常に見応えがあり、ハイコントラストだとイメージも強く捉えられるため、GH4は4Kコンテンツに合ったカメラだと感じた。
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また、別売りとして販売されているインターフェイスユニット「AG-YAGHG」(業務用モデル「AG-GH4U」には標準付属)も面白いアクセサリーだ。SDIによる4K出力が可能な上、外部レコーダーを用意すればSDカードに収録される8bit 4:2:0とは比較にならないほどの画質で4K映像を収録できるのである。さらにXLRに対応したオーディオインターフェイスも用意され、オーディオメーターが大きく表示されるなど、DSLRとして足りなかった機能をアシストするユニットである。
ただし外部電源が必要となる点や液晶バリアングルが回転できなくなることを考慮すると、スタジオ撮影用としての傾向が強いのではないだろうか。ハンディ、さらにはリグに収納するためには一工夫必要になるため、撮影内容によって用意するといいだろう。
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AG-YAGHGによりXLR音声入力やタイムコードをカメラに入力できるようになった。さらにSDIを4系統使用して4Kモニタリングもできるなど拡張性は高い
総括
GH4は、手頃に高画質の4K撮影と編集を行える、ワンマンオペレーションに最適な4Kカメラだと感じている。本体が軽量のため一日持っていても疲れることはなく、さらに難しい4Kフォーカスも安定したアシスト機能とセンサーサイズにより言うほどシビアではなくなる。また、OIS機能を持つレンズを使用すればさらに安定性は増すため、ビデオ感覚で撮影することができるのである。まさにワンマンでも恐れることなく4K撮影ができるミラーレス一眼であろう。
そして、編集作業もサクサク行えるため、納品期間が短い場合などにも重宝できるカメラなのではないだろうか。ハイエンドシネマカメラと比較すれば、4K解像度でハイスピードが撮れないなど見劣りする部分はあるものの、その安定感はゆるぎなく、GH4で撮影された作品が今後増えていくことは間違いないだろう。
WRITER PROFILE
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