アラフィフからのSteadicam
本編NewFinder Vol.43でスタビライザーの面白さを再確認したのが、少し前の出来事。MoVIとSteadicamという真逆のスタビライズ機能をもつ両機材に出会い、その二つをオペレート出来るチャンスもあり、その面白さに魅了されてしまった。という事で今回は前編後編に渡りハイブリッド・スタビライザーの可能性を御届けしたい。まずはSteadicamから。
やはりこの手の機材はレンタルでは技術が習得できない。いつまでも壁を越せないのは過去の経験で解っているのでどちらかを所有したくなったのである。ではどちらを?メカニカル好きな筆者の性格を考えると間違いなくMoVI…では無くSteadicamを選択した。
筆者の年齢から体力勝負でもあるSteadicam Pilotは無謀かと自分でも思った位だ。この業界に入って初めてSteadicamを見たときから何時かはSteadicamと思っていた位なのだ。そしてその背中を押してくれたのは、Steadicam正規代理店である銀一の柳下氏(現在はフリーランス)。自社内のデモ機を所有しているのに自ら購入し、フライトする“Mr.Steadicam”と呼ばれる漢に絆されての事である。半分冗談の様な本当の話である。
開封式w。このケースの中にモニターを含め全てがワンパッケージで入っている。このパッケージの良さもSteadicamの特徴だ
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選んだ機種は「Zephyr」。柳下氏の言葉を借りると、ここから上位機種が本当に面白い機種だという。筆者が所有してるカメラ(HVR-S270J&GY-HM700&PMW-350)なら一つ下の「Scout」でも十分足りる。しかしこの2機種の差はセッティングの幅の違い、HDCAMまで載せられる事を思うと選択は、「Zephyr」になる。価格の差もこの2台で一気に変わってくる。本気じゃないと買える値段じゃない…。
基礎の基礎
何事も触ってみないと分からないのは世の常。これまでは色んなカメラを載せても、ちゃんとバランスが取れるしオペレートも出来てると思っていたが、この考えが全部間違いであった…。そんな事に気づいたのは、最初のセッティングだ。
自己流じゃ全く駄目だと言う事。今回Steadicam購入に当たってセッティングからオペレートまでの基礎を徹底的に教えて頂いた。まずは機材セッティング。今更ながらSteadicamは言わばやじろべえと同じ。何処までその重心を芯に作るかがポイントだ。更に静止バランスから動的バランス(ダイナミックバランス)を作っていく。ここのポイントをしっかり出来ていないオペレーターが多いと柳下氏は言う。
ここの部分のバランスが出来てないと動き出しと静止時にSteadicamに変な動きが出てしまう。「えっ、その部分は画として使わなきゃ良いのでは?」そう言う方も多いと思うがSteadicamの基本ワークは、FIXからスタートしてFIXで終わる。なので動き出しも止まり際も安定した画を作らなきゃ駄目。知らないというのは怖い、安い買い物じゃないのに大丈夫か?
基礎の直線、まずは真っ直ぐ進むのが超難しい
セッティングが終わったところで次の基礎は動く事。まずは直進、コレが出来なければ話にならない。今回は駐車場での基礎講習、お題は真っ直ぐにぶれずに進む事。最初何を言ってるのか意味が解らなかったが本当の意味で真っ直ぐぶれずに進むのは難しい。よく考えればスポーツも車も自転車も真っ直ぐ進むと言うのは非常に難しい。しかもただ進むならそこそこ何とかなるが、動き出しと静止までの映像をしっかり作るというのを意識するととたんにハードルが高くなる。
特にイメトレでは無く被写体に入って貰うと真っ直ぐブレずに進んでいたつもりが全く駄目なのが解る。まずは静止状態から前進、静止してFIXキープ、そのまま流れで後進、最後は静止してFIXを1ルーチンとしてそのワークを繰り返し練習。その際にグリップの指導もしっかり受ける。ポイントはバランス点のチョイ上、ドロップタイムを計るポイント付近をつまむ感じ、チルト方向の微振動は小指で制御をする。逆のアーム側は無駄に動かないようにしっかりと、握り込む感じでOK。
初日はこんな練習をほぼ1日繰り返し、続く2日目は初日の直線の復習から始まり、ハイモードとローモード、更にレフティドライブを練習、最後にカメラ捌きの練習(S字やOターン等)で濃い特別講習は終了。
総評
見た目が派手な物ほど基本が大切なのは何でも同じだ。このSteadicamを入手し、講習の二日間で今まで自己流でやってきた事は、意味がなかった事を痛感。まだまだやっと入り口だ。それ以降は時間があれば、バッテリー1パック練習と決めている。まずは100時間のフライト目標だ。
そして、もう一つの気になるスタビライザーMoVI。正直個人的にはモーターとICで制御するのは好きではない。カメラマンが対話できないイメージのある3軸ジンバルアシストは疑問点を持ってしまっている。しかし前回のTESTでその考えも若干変わった。次回はMoVIを題材に動きのコントロールとそのワークを考えてみたいと思う。