txt:茂出木謙太郎 構成:編集部
Gear VRついに発売
サムスン電子のヘッドマウントディスプレイ、「Gear VR(正式名称:Gear VR Innovator Edition for S6)」がGW中の5月1日に日本でも発売された。筆者も予約はしていなかったが、Facebookのウォールを眺めているうちに使命感にかられ、銀行に駆け込んで貯金をおろして秋葉原の家電量販店に駆け込んだ。
売り場で一通り説明を受けたあととりあえずGear VRを購入。しかし、すでにご存知の方も多いとは思うが、この商品「Galaxy S6/S6 Edge専用モデル」という、VR市場にものすごく期待をしているのか、または自社製品でガッチリ固めたいのか、いずれにしても購入にハードルがかなり高い商品となっている。
なぜなら、Galaxy S6/S6 Edgeも発売されたばかりの機種なので、このGear VRを使って何かしようと思うと、必ずこちらも購入しなくてはならない。本体とGalaxy S6/S6 Edgeで約10万円。スマートフォンは当然購入後の回線仕様料金など支払わなくてはならないので、実質はもっと高価になる。Oculus Rift DK2なら3つはすぐに購入できる価格なので、ちょっと興味がある人が支払うには金額負担が大きすぎる商品なのだ。
Gear VRの気になる(ちょっと意地悪な)仕様について
Galaxy S6/S6 Edgeを購入しても、Gear VRのアプリを見ることはできないので注意が必要だ。まずGalaxy S6/S6 EdgeをGear VRにセットして、はじめてセットアップが始まる。そして、Gear VR用のアプリはこの一連の作業を行わないとダウンロードできない。
また、ダウンロードしたアプリはGear VRにセットしないと起動しない。Gear VRの右手側にはタップできるエリアとクリックできるボタンがあり、この2つを使ってアプリの切り替えや操作を行う。専用アプリの中ではすでにゲームの販売も行われており、今後はゲームだけではなく通常の映画に加えてパノラマVR映画、パノラマ写真などのギャラリーなども展開されるようだ。
Galaxyただいま苦戦中
ところが、この原稿を書いている時点でちょっと厳しい情報が入ってきた。どうやらこのGalaxy S6/S6 Edgeの販売数が思うように伸びていないということだ。全国の量販店のPOSデータを日次で収集し、アイテム(製品ジャンル)ごとに集計した実売データベース、「BCNランキング」によると、5月第2週の売り上げはGalaxy S6が30位、Galaxy S6 Edgeが39位とかなり苦戦を強いられている(アメリカでも苦戦を強いられているようだ)。
ここで前述の問題、サムスンがVR市場に大きな期待を抱いていた場合、今後のヘッドマウントディスプレイの開発マップが変わる可能性がある。1つは縮小、もう1つはオープン化に軸足を変更。果たしてどちらになるか、いやでも注目をせずにはいられない。
Oculusの製品版の仕様ついに発表
そして同時期にもう2つ新しい情報が入ってきた。1つは本家Oculus Riftの発売時期。2016年の1月~3月頃には発売される予定。プリオーダーは今年の後半早々に受付が始まるようだ。
そしてもう一つは、必要とするPCのスペック。
グラフィック:NVIDIA GTX 970 / AMD 290同等もしくはそれ以上
CPU:Intel i5-4590 同等以上
メモリー:8GB以上
OS:Windows 7 SP1以降
ポート:USB 3.0ポート×2
ビデオ出力:HDMI 1.3 297MHzダイレクト出力
つまり現在販売されているノートPCではグラフィック性能がちょっと足りないようです。iiyamaのゲームPCが現状では良さそうですが、実際に見てみる必要がありそうです。
Gear VRの正しい使い方
現状まだ問題も山積みのような気がする製品ではあるが、それでもこれから夏にかけてVR体験のプロモーションも始まり、6月6日にはVRコンソーシアムのVRCクリエイティブアワードの発表も行われる。それに現在発売されているGear VRのエディションが「Innovator Edition」ということ。これは「Early Adopters Edition」でさえないという点において、今後を期待させるネーミングと思うのは楽観的すぎるだろうか。
Gear VRの良いところはPCを使わずに済むという点と、アプリベースのソフトウェア提供なので安定しているという点。これらのメリットを考えると、夏に向けてのイベント用に開発するには、Gear VRを使うという選択肢も充分検討の余地があると思う。もしかしたらGalaxy S6/S6 Edgeの実売価格も安くなるかもしれない。これはある意味現在の状況は好都合だ。
イベント運営の皆さん、今年の夏から秋にかけてのVRイベントは使いにくいOculus Rift DK2を使わなくて済むかもしれませんよ!