txt:岡英史 構成:編集部

EFズームレンズ

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Canon CN-E18-80mm T4.4L IS KAS S。C100/300にマウントする時は一応レンズサポートをした方が良いとの事(折れると言う意味ではない)

業務レンジクラスで使用する大判センサー搭載のカメラに装着されているレンズは、純正レンズよりも圧倒的にCanon EFレンズが多い。それは総販売数1億本とも言われている絶対的なシェアもあるが、ビデオカメラという括りに入れた場合、レンズの回転数がENG系のレンズと同方向と言うのが理由の一つでもある。JVC GY-LS300CHはm4/3マウントと言う事もあり純正レンズを持たないが、フランジバックの短さを利用してマウント変換でEFレンズを使っていることが多いだろう。筆者もそのクチだ。何故m4/3を使わないかと言えば単純にスチルカメラがCanonなので、持っているレンズが自然とEFになる。もう一つ、ブライダルで使用しているSONY NEX-EA50JHもマウント変換してEFレンズを使用している。

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純正レンズ(18-210mm)も持っているが、これはズーム・フォーカスが通常のENGレンズと逆なので非常に慣れが必要だ。とは言え10倍の電動ズームはENGライクなレンズワークが出来るので手放せない。なので体を無理矢理慣れさせる。頭からEFマウントチップを抜いてEマウントチップに入れ替えるイメージ。だがこのスイッチは時々バグが発生し、本番中に冷や汗をかくのも事実。しかし上位機種のCNシリーズはコスト的に厳しい。何よりも大きさが基本ワンマンで廻す現場が多いミドルレンジでは扱いは難しい。そんな中で、以前技術者の方と冗談交じりで「F2.8通しで24-105mmのズームだとさすがにコストが厳しそうだけど、F4通しなら70万前後で行けますよね?」と質問したことがありその時は含み笑いで誤魔化させられたが、今年のNABで当に希望的空想で言ったレンズが展示されていて非常にビックリした。奇しくも価格も70万円と言うプライスだ。

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一番の特徴であるズームグリップ(オプション扱い)AF/AE+手振れ補正付

コンパクト電動ズームの利点

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ショルダーRIG付き

大きさ的には、EF70-200mm/F2.8(いわゆる大三元の長玉)と同じ大きさと思って良い。明るさはT表示で4.4となっているがF表示だと大体4.0となる。しかも開放値からこのレンズは使用可能。同じ画角感のEF24-105 F4.0では開放からは厳しい感じなので。またスチルレンズにありがちなズームボケもBF調整可能になっており、ズームワークでAFを効かせたりと微妙なフォローをしなくて済むのが一番のメリットだろう。ENGレンズを扱い慣れてる人には目から鱗落ちまくりだと思う。このレンズの不思議な所は、AFでありながらバックフォーカスでのピン合わせではなく前玉でのピントを掴んでいる。大きく重いレンズ部分を動かすのでAFの動作がイマイチになるかと思えば、その辺は流石にAFのノウハウが多いCanon、全く違和感のない追従をする。

ズームグリップは、レンズとの接続で20Pコネクターで接続するが、滑らかさはENGレンズと殆ど同じ可変速が可能となっている。また、ズームデマンドは最近のENGレンズで採用されている20Pのデジタルデマンド対応となっているので、手持ちの対応デマンドならダイレクトにコントロール出来る(変換アダプターを用いて従来のアナログデマンドも対応可能/一部機種)。

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ズームグリップも外した最軽量のバランスポイント(共にC100 MarkII)

さらにズームグリップが無くても本体の電動ユニットにT/Wのボタンが付いているので、そこでコントロールが可能。スチルスタイルでの撮影時にはこのボタンを使うほうがコントロールし易い方も居るだろう。CINEズームを謳ってるだけありマニュアルでの操作感も気持ちが良い。ズームは完全にメカニカルな為、ガチョーン・ズームもちゃんと追従する(笑)。フォーカスはAFを仕込んである為にメカニカルと電子式のハイブリット?方式を使用しているので素早い切り返しをすると若干のタイムラグを感じることもある。絞りはメカニカルではないので、レンズを外した状態で絞り羽を動かすことが出来ない。

ファーストインプレッション

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三環の操作感はこの様な感じ。ややフォーカスリングが遠いので筆者の手(男性Sサイズ)だと、小指での操作がやや重めに感じる。但しアイリス部分を本体のダイヤルにアサインすれば薬指も使えるので微妙なフォーカシングも難なくこなせる

さすがにまだ全世界に2本しか無いレンズなので長期貸出という訳にも行かず、展示会の合間の僅かな時間に無理してお借りしてみた。短時間では実現場で使うタイミングは無かったので、簡単に室内でのTESTシュート的に使ってみた。なので細かい話はなしで、あくまでも「触ってみた」レベルと思って貰いたい。用意されたカメラはEOS C300 Mark IIとEOS C100 Mark II。自前の他メーカーのカメラにも装着してみたかったが、まだβ機種なのでどういう動きがあるか解らないとの事で今回は遠慮した。

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C100 Mark IIが一番しっくり来る(スタビライズは3タイプ)

さてこの2機種での装着感はさすがに同じメーカー同士なので、デザインも含め全く違和感がない。更にレンズ側をオートにすると、ボディ側でアイリスやAFのコントロールが出来るようになる。その場合、ボディグリップ部分のダイヤルと十字キーがそのまま使えることになる。またダイヤルでのアイリス調整で通常のEFレンズだとクリック感が出てしまうが、このレンズは滑らかに調整が出来る。フルオートにするにはレンズとボディの両方をオートにすればいい。

総評

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CN-E18-80はこう言うレンズがあると業務ユーザーは喜ぶので是非!と技術者に言った物がそのまま出てきたレンズ。価格も本体70万円と言う、非常に良いバランスな所を付けてきた。NABの時も触りまくって、今回も短い時間の中でいじくり廻したが、本当に触っていて気持ちの良いレンズだった。

ENGレンズと雰囲気が似ているので非常に手に馴染むのが印象的だった。勿論4K対応レンズだが、センサーサイズはスーパー35がMAXなのでフルサイズのカメラに付けると当然の事ながらケラレてしまう。大体90~92%のクロップで抜くことが出来る感じだ。試しては居ないがEOS 7D Mark II等のAPS-CのEOSカメラなら、このレンズを使い切ることが出来るはずだ(但しマニュアル)70万円と言うプライス(OPのズームグリップを付けると77万円)を高いと考える方もいるとは思うが、まずはC100に装着した物を手にとって使ってみて欲しい。そうすればこの価格が決して高いとは思えないはずだ。これは筆者も久しぶりに欲しいと思ったレンズ。単焦点の高性能レンズを持つのも良いが、ミドルレンジの撮影スタイルなら断然こっちのレンズが良い。

最後に、メーカー&販社の方に提案したいのだがC100 Mark IIとのお値打ちのセットを出して欲しい。C100 Mark IIボディで実売40万円ちょっと、レンズが70万円なのでレンズセット100万円、初回限定でズームグリップ同梱済みと言うのはどうだろう?勿論NLEはEDIUS Pro 8のバンドルで!

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。