txt:茂出木謙太郎 構成:編集部

日本の文化や技術をVRでケニアへ紹介する

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2016年8月27日・28日にアフリカ、ケニアの首都ナイロビで開催されたアフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development):通称TICAD(ティカッド)における、JETRO主催の「第6回アフリカ会議ジャパンフェア」の展示をお手伝いした。

ケニアは、アフリカの東に位置していて、ソマリアやエチオピア、南スーダンといった内戦や紛争、テロ行為、襲撃事件など、とても物騒な国と隣接している。ケニアも渡航中止勧告が出ている場所が多く、なかなか緊張を強いる状況であった。実際、ナイロビに滞在している間、移動は全て特別に手配された車のみを使用することが徹底され、ホテルと会場以外、街中を徒歩で移動することはほとんどなかった。

ニュースを見ている人ならば耳に入っていたであろう、安倍首相がケニアで行った「ナイロビ宣言」。筆者も当日は、かの地アフリカでVRの展示を行っていた。おそらく、日本からアフリカへVR展示を持って行ったのは今回が初めてではないかと思う。

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今回お手伝いを行ったのは「日本の文化や技術をVRで紹介する」という展示。さらに、来場者には「ハコスコ」のビューアーをプレゼントし「いつでもVR動画をスマートフォンで見ていただけるようにする」というおまけ付き。そこで、大掛かりなVR展示ではなく「ルクルク」というアプリを使ったものにしようということになった。

「ルクルク」は「誰でも簡単で手軽にVR・ARコンテンツを体験できる」というコンセプトで、筆者が開発したアプリ。画像認識技術を活用して、展示物のパネルや、おみやげに渡しているポストカードを認識させ、その画像に合わせたVRコンテンツやARコンテンツを表示が可能だ。一つのアプリでVRとARが体験でき、スキャナーで認識させることでメニューを排除できるため、説明は最小限に抑えられ、言語の壁を気にすることなく利用できる。

「ルクルク」を使用して、掲示しているパネルを認識させVR動画で日本の風景、文化を紹介する動画を6本用意した。期間中、600人以上のアフリカのみなさんに楽しんでいただけた。ジオラマにかざしてみることで、ジオラマの上にアルファチャンネル付きの動画を表示させ、ジオラマ上に様々な技術が展開するさまを見て頂いた。まさに、VRとARを一つのアプリで体験していただくことができた。

現地では、ほかにVRの展示は2箇所、ケニア観光協会と技術展示で展開されていた。どちらもカードボードを利用した360°写真の展示で、アクセスフリーでなかったことから、あまり存在感を出せなかったようだ。実際、会場では(ケニアの街ではおそらく全体的に)頻繁に停電が起こっていたため、こういった展示にPCを持ち込んでいたらPCのリカバリー作業だけでもかなり面倒なことになっていたのではないかと思うと、スマートフォンでのVR展示は正しい選択だったと思う。安倍首相が会場視察に来るときも、準備中に電源が落ちてしまい、かなり慌てている企業もあり、実際に回っている最中にも一度落ちていたようだ。

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帰国後、入れ違いにFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏がアフリカ各国を視察で回っているというニュースが入った。アフリカは、未だインフラもきちんと整備されていない印象だが、スマートフォンは完全に普及していることからも、SNSを始めとしたコンテンツ分野などこれから飛躍的に伸びるフロンティアである。次回のTICADは3年後だが、それを待たずして、多くの企業がアフリカに行くだろう。ところで、仕事が終わったらすぐに帰ってきてしまったので、ケニアでアフリカの動物などをVR撮影してくることが全くできなかった。残念。

WRITER PROFILE

茂出木謙太郎

茂出木謙太郎

株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員