txt:茂出木謙太郎 構成:編集部

複数のユーザーが同じ環境内を自由に動き回る「フリーロームVR」

お台場の東京ジョイポリス内にある「ゼロ レイテンシー」のゲーム内容が、この夏リニューアルされた。ゼロ レイテンシーとはオーストラリアのZERO LATENCY社が開発した“世界初”となるフリーロームで6人同時プレイが可能なVRアトラクション。

今夏OPENしたVR ZONE SHINJUKUと何が違うのかといえば、まさにこのフリーロームVRアトラクションを設置しているかどうかという点が大きく違う。フリーロームというのは制限なく自由に動き回れる仕組みのことで、ゲームなどの場合には複数人のプレイヤーが同時にプレイできることも含まれることが多いようだ。

VRにもオンラインとオフラインそれぞれを採用したフリーロームアプリがあり、ゼロ レイテンシーはオフラインモードのフリーロームVRゲームという位置づけだ。ちなみに、オンラインフリーロームVRはRec ROOMかなと思うが、自由に歩き回るところに若干限界があるので微妙なところ。

フリーロームVRは複数のユーザーが同じ環境内を自由に動き回って体験できるVRコンテンツ。フリーロームVRの楽しさは「ひとりじゃない」という点だ。前述したゼロ レイテンシーでは、ゾンビに襲われる街をチームで救ったり、乗っ取られた宇宙ステーションをチームで取り返したりと、仲間で遊びに行けば最高に盛り上がるゲームが用意されている。先月、新しいゲームを体験しにお台場に行った際には、あいにく「ぼっち」で心細かった私以外の5人が、女子大生チームという至福の時間を過ごせた(笑)。

オフラインのフリーロームVRは、天井にモーションキャプチャ用のカメラを設置し、ユーザーの位置情報とポーズをキャプチャしてゲーム空間内に再配置する必要がある。5メートル四方程度の広さであれば、Valveのライトハウスを利用する方法もあるが、より広い場所で人数もある程度必要となると専用のカメラを導入する必要がある。このカメラがちょっと高額なことが導入障壁につながって、気軽に手が出せないという事情があるようだ。

ただ、精度を求めるコンテンツではない場合や、特に大きなエリアを必要としない場合にはカメラの金額がかなり安くなってきているので、今後状況は変わってくるかもしれない。導入メリットのあるコンテンツは、ゲームだけではなく様々なサービスにも向いていると感じる。

先日見た映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」では、キッチンレイアウトの検討でテニスコート上に実物と同じ大きさの配置図を作成し、オペレーションの確認をしていたが、これはVRでキッチンのレイアウトをどんどん変えながらオペレーションの確認をリアルタイムでチェックし、スタッフの動きに最適化することができると考えていた。

もちろん一店舗が導入するのではなく、多くのキッチンレイアウトをその土地の状況に合わせて行う必要がある場合、という前提付きだが、こういった複数人数で行うオペレーションの確認と最適化、教育などには向いていると思う。

ほかにも災害体験や避難訓練を複数人数で行う、例えば火災が発生した際の対応や機器の使用方法などを訓練することも可能だ。めったに動かすことのできない機材があれば、そういったものをVRに置き換えるだけでも価値がある。

一般的な事例だけではなく、もっと実験的な内容なども試してみたいという欲求が高まり、こういったコンテンツを「作りたい」と思ったときに気軽に使える場所がないかと考え、深圳のベンチャー企業Realis社と、デジタルハリウッド大学大学院とに協力していただき、デジタルハリウッド内に開発環境を設置することができた!

興味のある方はぜひご一報頂きたい。Realisのモーションキャプチャカメラの詳細は、Webサイトで是非ご覧ください。

WRITER PROFILE

茂出木謙太郎

茂出木謙太郎

株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員