txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部
大手前大学が取り組むeラーニング映像のコンテンツ制作とは
大手前大学では、2010年からは独自のeラーニングシステム「el-Campus」を開発し、教材の企画から編集までを学内で一貫して実施している。映像コンテンツの制作は、すべてキャンパス内で行い、教員自らが出演・ナレーションを担当、学生もスタッフの一員として参加することで、実践的学習の場としても活用されている。
今回は、大小様々な教室で、eラーニングのコンテンツ制作が行われているさくら夙川キャンパスで、学校法人大手前学園 情報メディアセンター 課長の西尾信大氏、辻井美奈氏にお話を伺った。
西尾信大氏(左)、辻井美奈氏(右)
――学内スタジオ機器の選定ポイントなどについて教えてください
西尾氏:クロマキー合成にも対応した専用スタジオを中心に、PTZカメラなどとスイッチャーを複数セット用意して、主に通信教育向けの映像コンテンツを制作しています。
スタジオ開設当初はDV収録で、SD画質での収録体制になっていましたが、HD化するにあたり、システム全体の刷新を行いました。また、オンデマンドでのコンテンツ配信だけではなく、ライブ配信にも対応したシステムを構築する必要がありました。
授業の収録は、スライドPC 1台とカメラを寄りと引きで2台の合計3ソースが主になるので、Roland VR-50HDをメインスイッチャーとして使用しています。学生も収録に参加していることもあり、操作が複雑でなく簡単に習得できる製品を中心に選びました。
オールインワンであること、特にオーディオ面での機能が充実しているのが、講師の方の声の大きさの違いや環境音の低減などの面でVR-50HDを選んだ理由です。
VR-50HDを使って組まれた授業の収録・配信システム
直感的に操作できることが重要
――学内イベントのライブ中継なども実施されているそうですが、こちらの機材構成は、どのようなものになっているのでしょうか?
西尾氏:2018年の7月に、オープンキャンパスの学内中継をV-60HDを中心としたシステムで実施しました。イベントのライブ中継となると、カメラの台数も増えてくることもあり、V-60HDを使用しています。
教育機関として、学生・教員とともに映像コンテンツを制作していく中で、先輩スタッフから後輩スタッフへの指導のしやすさなども重要と考えています。VR-50HDにも言えることですが、直感的に操作できることが、重要なポイントだと言えます。
V-60HDによる学内イベント中継ブース
辻井氏:私自身もオープンキャンパスの中継で、生まれて初めて映像用のスイッチャーを操作しました。正直、最初は出来るかな?とも思いましたが、簡単なレクチャーですぐに操作することが出来ました。自分がスイッチングを経験したことで、コンサートの大型ビジョンや、テレビ中継など見ていても、気になるポイントが変わったなぁと感じています。
V-60HDとV-1HDを組み合わせたシステムを構築
西尾氏:映像機材に馴染みがなかった人でも操作できるという意味では、V-1HDと組み合わせることで、様々なスキルレベルの学生に、ちゃんと役割を持ったポジションを用意できるのもポイントです。
V-1HDは、テロップやタイトル用として使っています。タイトルの出し入れを担当することで、イベントスタッフとして集中力を持って参加してくれますし、先輩たちが操作するメインスイッチャーの様子や、マルチビューに映し出される各カメラの様子など、理解度もアップしているようにも感じます。
多くの学生スタッフがそれぞれに役割が用意されている
――V-60HDのスマートタリーも活用されていましたが、学生スタッフの反応などはいかがでしたか?
西尾氏:今回のタリーシステム導入の目的が、カメラマン向けに自分の映像が使われているかを示すことだったので、その点では大成功だったと思います。
これまでは、インカムのみでの指示ということもあり、実際に選ばれているタイミングや何がポイントなのかということを直感的に理解することは難しかったように思います。
スマートタリーを導入することで、現場という緊張感と集中力が要求される中で、より効果的に実践経験を詰めるという意味でも、導入の効果は大きいですね。
イベント中継の現場ではスマートタリーを活用している
香川氏(左)、綿抜氏(右)
学生スタッフ 香川氏:いま自分の映像が選ばれていると思うと、嬉しかったですし、次も選んでもらえるように、絵作りを意識的に行うことが出来ました。
学生スタッフ 綿抜氏:自分のカメラ映像が選ばれていないときに、どうすると次に選ばれるかを意識できますし、インカムで指示がないときでも自発的にカメラを操作することができるようになったと思います。
色々な機材構成を試しながら収録システムの最適化を行なっているという
――今後の展開などあれば、教えてください
西尾氏:V-02HDを用いて、学外でも収録できるコンパクトな収録システムの構築を行なっています。カメラ、レコーダーに加えてスイッチャーも小型化したことで、宅急便サイズでシステム自体を構築できるようになりました。
V-02HDを用いたコンパクトな収録システム
受講生からのアンケートなどから、スライドだけでなく、講師の顔が写っていることで、授業自体の理解度も高まり、継続性や満足度に繋がっているという結果が出ています。
直感的に操作できる機器の幅が広がることによって、学習コンテンツの質もアップしていくことができるということで、これからも色々な活用方法にチャレンジしていく予定です。