株式会社エンタミナの田口です。
今回は「マイク音声の取り扱い」をテーマに、ライブ配信ディレクションを担うビギナーの方に向けて解説します。目に見えない空気振動を捉えるマイク、その電気信号を取り扱う周辺機器。ライブ配信を通じて「良質な音声を、ユーザーの耳に心地よくに届ける」ためのディレクションにご活用いただけたら嬉しいです。
マイクの種類
ライブ配信に用いるマイクには、様々な種類があります。それぞれの特徴とメリットやデメリットについて、こちらの動画で解説しています。
- ハンドマイク:手持ちまたはスタンドに固定して音源を収音
- ガンマイク:遠く離れた音源を収音
- バウンダリーマイク:卓上または床上に設置して音源を収音
- グースネックマイク:卓上に設置して口元(音源)付近で収音
- ラベリアマイク:演者の胸元に固定して音源を収音
- ヘッドセット(ヘッドウォーン)マイク:頭部に固定して音源を収音
それぞれのマイクには特性があります。それは良し悪しではなく、用途に合わせて適材適所な使い分けが必要です。
参考までに、私が現場で使用しているマイクを含む機器(機種)について、こちらの記事内で紹介しています。 ▶https://note.com/webdirector/n/na8921b4f5b52
ダイナミック型とコンデンサー型の違い
マイクは、空気の振動を電気信号へと変換する装置です。
ダイナミック型は、電源供給が不要で丈夫なつくりなものが多く、様々なシーンで活用しやすいマイクです。吹かれ(息がマイクカプセルにあたる)に強いのが特徴です。
コンデンサー型は、電源供給が必要で繊細なつくりのものが多く、きめ細かな音を収音できるマイクです。しかし、人間の肉声を収音するにあたっては、リップノイズや息づかいなど、余計なノイズ成分まで拾う場合があるので注意が必要です。
ワイヤレス(無線)とワイヤード(有線)
ワイヤレスマイクは、物理的なケーブルを使わずに音声信号を無線で送受信できるメリットがありますが、場所によっては電波干渉(電波ノイズの混入)を受ける場合もあります。
ライブ配信の本番中に生じる電波ノイズは致命的なトラブルになるため、事前に入念なチェックが必要です。とくに複数本のワイヤレスマイクを使用する現場は、いざって時のトラブル対応が追い付かない場合もあるため、安全性を考慮してワイヤード(有線)を選択する場合が多いです。
マイクの指向性
マイクの指向性は、音源を収音する範囲に影響します。無指向性のマイクは幅広い範囲をカバーできますが、狙った音以外のノイズも収音してしまうデメリットが生じます。
演者の音声をクリアに(肉声のみを収音したい場合)は、単一指向性(または超単一指向性)を用いる場合が多いです。注意点としては、マイクの向き(角度)が口元(音源)から外れることで音を逃がしてしまう場合もあるので注意が必要です。
オフマイクとオンマイク
オンマイクとは、マイクの先端部(カプセル)と演者の口元(音源)を近づけて収音すること。演者の肉声のみを収音したい場合のマイキングです。
オフマイクとは、音源とマイクの距離を離して収音すること。この場合、環境音を拾いやすくなったり、演者の肉声が空間に反射した音も拾ってしまう場合があるので注意が必要です。床、壁、天井はもちろん、会議室の場合だとホワイトボードやテーブルなども反射要因になります。
オンマイクの音は演者の肉声をクリアに収音できますが、ライブ配信においては「空間の臨場感が失われてしまう」場合もあるため、オンマイクの音に加えて、空間の音(エア音)をオフマイクで別途用意してミキシングすることもあります。その場合、集中して演者のメッセージを届けたい場面ではオフマイクの音量を下げ、逆に、会場の様子を届けたい場面ではオフマイクの音量を上げたりといった演出もできます。
ノイズ対策
ライブ配信の現場で、演者の肉声以外の音(ノイズ)にどう向き合うか、どう対策するかは大きな課題です。
「ノイズ除去」は、専門的な音響ノウハウの領域ではありますが、私の経験に基づいたディレクター目線でのノイズ対策方法について、こちらの動画で解説しています。
ノイズ除去ソフトウェアの活用
私がライブ配信の現場で使用しているソフトウェア「iZOTOPE RX」シリーズを用いて、ノイズ除去の効果を確認できるサンプル動画を用意しました。
ノイズゲートとコンプレッサー
ライブ配信の音声処理に用いるエフェクターは、最近では多くのビデオミキサーやオーディオミキサーにも内蔵されています。
その中で、よく用いられる機能のノイズゲートとコンプレッサーについて、(これも専門的な音響ノウハウの領域ではありますが)私の経験に基づいたディレクター目線でこちらの動画で解説しています。
今回は、ライブ配信ディレクションを担うビギナーの方に向けて、「マイク音声の取り扱い」をテーマに解説しました。次回もどうぞお楽しみに!