Vol.111 キヤノンEOS VR SYSTEM「EOS VR Utility/Plugin」Version 1.2リリース。さらなる快適性を実現した5つの新機能とは[Point of View]

キヤノン初となるVR映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」をリリースして約1年が経った。EOS VR SYSTEMは、レンズ交換式カメラEOSシリーズなどで培ってきた光学技術を活かし、高画質な映像と効率的なワークフローを実現するVR映像撮影システム。

同システムは、ミラーレスカメラと専用のレンズ、PCソフトウエアで構成しており、カメラに専用レンズを装着することで、VR映像の撮影を実現。PCソフトウエアで撮影映像のVR規格形式への変換から簡易的な編集まで行うことが可能となっている。

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EOS VR SYSTEMワークフロー図※画像をクリックして拡大

今回、そのPCソフトウェア「EOS VR Utility」※1「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」※2の新バージョンとなるVersion 1.2がリリースされた。同リリースの進化ポイントとして、5つの新機能を紹介しよう。

※1 ※2 静止画および2分以内の180° VR動画作成は無償で利用可能だが、2分を超える180° VR動画の作成については有償となる。有償版はCanon Imaging App Service Plansから申し込み可能(Canon ID登録が必要)

1.GPU対応オプション追加による高速化

EOS VR PluginのVR変換処理では、汎用性のあるCPUを活用しているが、GPU搭載PCを使っていてもGPU活用による速度改善ができない状況だった。今回のアップデートにより、EOS VR Pluginにおいても現行のCPU処理に加え、GPUでの処理を追加し、さらなる高速化を実現したという(CUDA for Windows/Metal for Mac)。

※EOS VR Utilityはv1.1.2ですでに対応済だが、今回さらに高速化した

2.速度優先オプションを追加(EOS VR Plugin)

Adobe Premiere Proで編集中にEOS VR Pluginの独自のVR変換処理が入るため、Premiere Proのネイティブな処理速度を活かせない場合があったが、魚眼画像の状態(「魚眼表示」ON)で編集を行い、編集後にVR変換処理を適用することで編集時間を短縮可能となった。

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3.RAW動画対応(EOS VR Utility)

EOS R5/EOS R5 Cで撮影できるRAW動画フォーマットにEOS VR Utility/EOS VR Pluginが対応しておらず、EOS R5 Cで撮影可能な8K 60fpsのRAW動画がVR180形式のデータに変換できなかった。同アップデートによりCinema RAW Development同等のRAW機能をVRに特化して移植し、EOS VR UtilityでのRAW動画処理機能が追加された。

※EOS R5 Cでの8K 60fps撮影には外部電源による給電が必要

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EOS VR UtilityによるRAW動画対応※画像をクリックして拡大

4.高圧縮HEVCの採用で処理を高速化(Win)(EOS VR Utility)

EOS VR Utilityでは、Windows環境下において素材交換フォーマット(中間素材)としてDPX(非圧縮)を採用しており、処理が重く時間を要していたが、今回よりDPXに加えて、中間素材として高圧縮フォーマットのHEVC 4:4:4 10bitが追加された。これによりさらに快適な作業環境が実現するだろう。

5.Apple Silicon 対応

EOS VR Utility/EOS VR Pluginは、Apple Silicon環境下ではRosetta2経由で動作するが非対応だった。また、Rosetta2経由では処理が遅くなる傾向にあった。同アップデートではVR市場で活用が増えてきているApple Siliconに対応。小規模クリエイターを中心に敷居の低いVRの快適環境を提供し、VR市場の裾野を広げるとしている。

対応機種/推奨動作環境

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Version 1.2リリースが与える制作環境の効率化〜ユーザーの声

今回、クリエイターでEOS VR SYSTEMのユーザーでもある由井 友彬氏にコメントをいただいた。

由井氏:

今回のアップデートにより、8K 60fpsで撮影する180°立体視VR映像の敷居はグッと低くなると考えております。今までVRの制作をしてこなかった映像製作者でもAdobe Premiere Proのような普段から使用している編集ソフトでそのままVR編集がGPU処理で素早く出来ますし、「EOS VR Utility」単体でもその中でRAW現像まで行えるので、今までVR編集で必要だったワークフローをかなり削減しシンプルで直感的な編集が可能です。

――Version 1.2により、今後制作ワークフローはどのように変わると思いますか?

由井氏:

今までVR編集において大きな壁であった編集PCのスペック問題や、色々な専門知識を要していた編集ワークフローがかなり簡潔化されたことによって、今まで編集段階で時間が取られてしまっていた単純な変換作業がかなりやりやすくなったので、その分コンテンツ自体の演出を編集時に追い込んだり、さらに凝った演出を試してみるということが一層やりやすくなったと感じます。
Adobe Premiere Proの専用プラグインを使用すれば一つのソフトで8KのRAW現像からカラーグレーディング、文字入れ、エフェクトの追加などソフト間を行き来することなく行うことが可能なため、制作フローの簡潔化だけではなく、シンプルにVRの世界があらゆるクリエイターにとって開かれた世界になってきたと感じます。

――Version 1.2はどのような制作ワークフローに役立つ機能だと思いますか?

由井氏:

もちろん今回僕が制作させていただいたVRコンテンツのようにじっくりと自分で色々な編集を加えていきたい制作でもしっかりと編集全体をカバーしサポートしてくれますが、もっと撮影から納品までの制作プロセスがタイトな案件であってもこのシステムなら可能だと思います。
これからVRでの映像制作が増え、制作スピードが速くなる世の中で、いわゆる「撮って出しに近い案件」を進める際にもその機能のシンプルさと快適さが大きな助けになると確信しています。

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