クリエイターは、なぜMacを使うのでしょう。シンプルに、Macの色再現に長年培われた安心感がある、というのが強いと思います。もちろん、UI/UXが洗練されていて、Windowsに比べて安定、高速などの複合的な要因もあるかと思いますが、その中でも液晶一体型のiMacやMacBook Proのアドバンテージはなんでしょうか。
それは、Retinaディスプレイと呼ばれる液晶パネルでしょう。これはDPIも高く、色再現性もとことん突き詰めたもの。正直、F1的な性能を街乗りカーに乗せてしまった、と言われるくらいです。それゆえにデスクトップを拡張するために外部モニターを利用したいが、その選定が難しい。目の肥えたユーザーの眼鏡に叶うものが果たしてあるのだろうか。筆者的には、純正は高すぎてちょっと引いてしまったりして、悩みがつきなかったわけです。
ところが、BenQ「PD3220U」を使ってみて、そのモニター選定が容易な時代になっていることを目の当たりにしたのでした。
BenQ「PD3220U」を導入してみた
PDシリーズはBenQがプロフェッショナル向けに展開しているAQCOLORシリーズの製品です。AQCOLORは部材の選定にこだわり、設計を徹底的に、色の再現性を正確に計測・調整、そしてそのプロによるキャリブレーションの結果の診断書を添付する、という本気度MAXのブランドの証だそうです。
31.5型という絶妙なサイズ感に4Kの高解像度、sRGB100%、Display P3 95%準拠の広色域表示が可能。MacBook Proの液晶表示特性とPD3220Uの表示を揃えるM-Bookモードを搭載。多種多様なコネクタを装備し、私のようなノートパソコンの端子の無さからくる散らかりがちなデスク周りをスッキリ整理できます。
組み立て
しっかりした台座にモニター支柱を差し込んでネジを回すのですが、ネジがなくならないように台座に付けてあります。
別になくても根本的には困らない。でも、あると便利。こうした工夫は製品を大事に育てているな、と感じる部分です。
あとはモニターを引っかけるだけの簡単組み立てでした。
抜群の接続性・拡張性
この数年でリモートワークは大きく発展しました。働き過ぎの日本人も、移動時間に費やすコストがなくなった分、ゆとりを持てるようになりました。自宅に居ることが長くなったので、それにともなって光熱費や作業スペースの問題も多くあったようで、引っ越しとか新規で戸建てやマンションを購入するとか、ちょっとした不動産バブルも勃興しましたね。
筆者は昔からホームオフィスで作業していたので、大きなインパクトにはなりませんでしたが、省スペースで最大限快適な環境を構築するにあたって、モニターに求めるものが大きく変わってきました。ハイパワーのPCはどうしてもノイズが大きくなりますが、サーバールームなんてないので、どうしてもハイパワーのノートPCがメインになります。すると、
- 画面が狭い!
- 接続ポートの足りなさからHUBだらけ!
- デスク周りがごちゃごちゃしててなんか嫌だ!
となります。筆者の現状は、
(1)に関しては、現状はハードウェアのキャリブレーションのついたモニターを1枚、あんまりカラー精度は良くないけど広い作業画面が欲しい、ということでHDレベルの解像度のモニター2枚使っています。(2)に関しては、どうしたってHUBで解決。MacとWindowsを行ったり来たりもするし、HDMI切り替え機もあります。結果、(3)のデスク周りがごちゃごちゃしてる!となります。
PD3220Uの背面には
- HDMI 2.0×2
- ディスプレイポート 1.4×1
- Thunderbolt 3×2(85Wと15Wの給電機能付き)
- USB3.1×3
側面に
- USB Type-C×1
- USB3.1×1
が搭載されています。
MacBook Proを背面の85WのThunderboltポート(PCマークがついているのでどちらが85W対応かは一目瞭然です)に接続すると、
- Thunderbolt接続で給電
- USB3.1×4(Upstream抜くなら×3)
- USB Type-C×1
というHUB無双が実現します。デスク周りが一気にスッキリしますね。
PDシリーズを導入した制作ワークフロー
PD3220Uを使用してみて、ワークフローがどう変わったかを見ていきましょう。
画面の狭さが解決
これまで2枚のモニターを使い、片方に資料を展開、もう片方で実作業としていました。表示エリアが広く使えることは良いのですが、どうしても視点の移動が多くなります。PD3220Uの31.5型は、大きすぎず小さすぎず、正面から見たときに目線を動かさなくても全体を把握しやすい大きさで、没入感が程良い感じです。
そこに資料とこの原稿を執筆する際にあれこれ展開しても、すっきり表示できました。正直、これ1枚で快適な仕事が出来て、印象がかなり良いです。
動画編集時
リモートワーク全盛でも、やっぱり人と会って作業することが多くなったこの頃。「現場編集をMacBook Proで行い、自宅で大きな画面で編集する」、これは今までも変わらずですが、このときの接続スタイルがスマートになりました。
DaVinci Resolveでは、MacBook Proをセカンドスクリーンとして常時プレビュー表示し、作業自体はPD3220U上で行う、としました。
カラーモード
MacBook Proの液晶は、色再現性が非常に良く、カラーマネジメントにもきちんと対応してくれるので、視聴環境に合わせた色確認が行えることが魅力です。常時プレビューのモニターとしたときにも、設定1つで正しい色味が再現されている安心感があります。
そうした時の作業モニターはこれまでは参考程度で、作業モニターの色で判断してはいけない、としていました。ですが、PD3220Uを接続する際にインストールするDisplay Pilotで、カラーモードをM-Bookモードに設定すると、PD3220Uの色味をMacBook Proの表示に限りなく寄せてくれるのです。
M-Bookモードによって、作業モニターとプレビューモニターとの差異が取り除かれ、カラーマネジメントのしっかりとした広大な作業空間が手に入ったのでした。
デュアルビュー
ちょっとした時に、違うカラースペースで見比べてみたい時があります。そんなときにデュアルビューモードが非常に役に立つのです。メインはカラーモードの設定を踏襲、右半分に比較したいカラーモードを設定します。これはスクリーンキャプチャでは撮れないので、スチルカメラで撮影した写真で雰囲気をお伝えします。
デスクトップ分割
十分な広さのディスプレイ。その広さを使って、複数の入力を1画面に表示して同時に作業することが出来るモードとして、デスクトップ分割があります。
表示の分け方も多種にわたり、面白いですね。コンソールの育てゲームをやりながら作業とか、遊びと仕事の両立を目指しましょう。
ホットキーパック「G2」
何でしょう、これは?と最初は戸惑う付属品ですが、実は3つのファンクションキーやダイヤルによく使用する機能を割り当て、カスタマイズしてアクセス効率を向上してくれるデバイス。ダイヤルで明るさ、コントラスト、音量調整の切り替えも可能であることと、KVMの切り替えが出来ます。このKVMの切り替えがとても良い!
KVM機能
KVM機能は、PD3220Uの豊富な入力を使って、1枚のモニターを2台のPCで切り替えながら使いましょう、という機能です。MacとPC、どちらも同時に作業しているときに、さっと切り替えられるのが非常に便利です。マウス、キーボードも共用できるので、デスクトップの整理につながりますね。
想像力を掻き立ててくれる1台
こうしてみてきたように、PD3220Uはカラーマネジメントを支えるモニターとしても、デスクトップのHUBとしても、高次元にワークフロー、ワークスタイルを改善してくれました。少し長い期間触らせてもらっていたのですが、ちょっと元の生活に戻れないですね。この原稿を入稿したら、本気で手配しようと思います。
創造力を加速する、絶対損はさせないモニターです。