映像制作、放送分野で注目されている技術がリモートプロダクションだ。特にライブ中継や配信の現場において、インターネットの技術を使うことで従来よりも回線コストなどを抑えた配信が実現できると期待されている。

コロナ禍において映像配信が一般化したことで、企業や個人が業務で映像を制作して配信する例も増えてきた。単に会社の会議室で撮影するのではなく、バーチャルスタジオを使って作り込んだ映像のニーズも高まっている。

そうした映像制作の現場で期待されているのが、パナソニック コネクトが提供するIT/IPプラットフォーム「KAIROS」だ。IP伝送によるリモートプロダクションやバーチャルスタジオの現場で効率化と業務の短縮が可能になるというKAIROSのメリットについて、実際に利用している合同会社ロケッツのディレクターである吉富和博氏に話を聞いた。

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ロケッツのディレクターである吉富和博氏

バーチャルスタジオ「ロケットスタジオ」について

東京・東銀座にあるインターネット配信専門のバーチャルスタジオ「ロケットスタジオ」では、KAIROSを導入している。1日1組限定、最長8時間すべての機材が使い放題という料金プランで、機材の扱いに慣れたプロのスタッフも用意されているため、映像配信の知識がなくても高品質のインターネット配信が可能となっているのが特徴だ。

ロケットスタジオを運営する合同会社ロケッツは、2012年創業のインターネットライブ配信専門プロダクションで、企業のイベント、記者発表会、株主総会、エンターテインメント、スポーツ、学会など、様々な分野でライブ配信を行ってきた。

そうした中で設立されたロケットスタジオに用意された機材は、カメラ、スイッチャー、バーチャルシステム、デジタルミキサー、配信エンコーダー、照明など。必要な機材はすべて完備されており、スイッチャーに関してはKAIROSに加えてBlackmagic Design、ローランドも導入。利用者が選択できるようにするなど、幅広いニーズに対応できるようにしている。

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KAIROSを使った配信が可能なロケットスタジオ

KAIROS導入の理由について

吉富氏:

バーチャルスタジオ設立にあたり、これまで4M/E程度だったが、将来を見据えてもっと合成できるようにしたかったということがKAIROS導入の理由ですね。そのため、これからの時代にあったスイッチャーを探していました。
そうした拡張性の高いスイッチャーを探していたところ、2020年にKAIROSが発表され、ずっと注目していました。それ以前のIPスイッチャーは、配信の現場でフリーズするなどの不安がありましたが、KAIROSが安定していたことから導入に向けて検討を行いました。

導入機材一覧

  • メインフレーム Kairos Core 100 AT-KC100T ×1
  • コントロールパネル Kairos Control AT-KC10C1G ×1
  • GUIソフトウェア Kairos Creator AT-SFC10G ×1
  • オーディオミキサーオプション AT-SF005G ×1

吉富氏:

「時代にあったスイッチャー」というのは、今後リモートプロダクションがさらに拡大していくと予想される中、IPスイッチャーによる拡張性の高さが必要になると判断しました。ただ、他社のIPスイッチャーではM/E数に限界があり、それに対してKAIROSはGPUのリソースを最大限に使って合成できることから、「何十レイヤーという合成が可能」という点が魅力ですね。
コスト面でも他社に比べて高くなりすぎることもなく、安定して合成数が多いという点でコストパフォーマンスがいいと思いました。これまで、スイッチャーを2段、3段と組まないと複雑な合成ができなかったところを、KAIROSでは自由にレイヤーを重ねられます。複数台のスイッチャーで合成を重ねていると機材数が多くなってしまうが、KAIROSであれば1台ですべての合成をまかなえるため、システムとしてもシンプルにできるという点もメリットですね。
さらに、アプリケーション「Kairos Creator」によって直感的に、GUIの分かりやすい操作性も魅力だと感じました。当初は「難しい」という印象もありましたが、実際に使ってみると操作は簡単でした。急なレイアウトの変更にもすぐに対応できるので便利になり、マルチビューやボタンのアサインカスタマイズ機能なども用意されていて、使い勝手も良いですね。

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Kairos Creator上で合成中の画面

KAIROSの遅延の短さについて

吉富氏:

IPスイッチャーで合成のレイヤーを重ねていくと、その分遅延が伸びていくというのが一般的ですが、KAIROSであれば合成を重ねても遅延が1フレームにとどまるため、運用において大きなメリットがあります。さらに、バーチャルシステムだとリアルタイムレンダリングで遅延が発生してしまうが、KAIROSではソースごとにディレイを設定できるため、レンダリングの遅延とタイミングを合わせることができるという点は、バーチャルスタジオと相性がいいと考えます。

KAIROSのビデオウォールでの個別スイッチングについて

吉富氏:

KAIROSの便利な機能として、バーチャルスタジオ内にスクリーンを表示するビデオウォールに対して、KAIROSでは個別のスイッチングを設定し、配信用のスイッチングとは別々に設定することができます。例えばバーチャルスタジオ内のスクリーンに別の動画やプレゼンテーション資料を表示したり、複数のカメラの映像を組み合わせたり、リモートの映像を表示したり、そういった配信を手軽にできることがKAIROSを使うメリットの1つですね。

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バーチャルスタジオ内のビデオウォールに対して個別にスイッチングできるKAIROS

KAIROSの操作性について

吉富氏:

Kairos Creatorは自由にボタンアサインが可能で、自由にボタンを配置できるのが便利です。従来はスイッチャーを2台用意して、それぞれ別々に組み合わせていたので、それがシンプルな構成になるというメリットがあります。
また、これまで複数の合成画面を作る場合、マクロを組むような場合もあり、準備に時間がかかっていました。しかし、Kairos Creatorのシーン機能を使うと、Photoshopを使うように合成画面を作成でき、シーンは複数作成しておけるので、準備の時間が大幅に減少しましたね。

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コントロールパネルの「Kairos Control」
「Kairos Control」GUIソフトウェアの画面

機材の事前準備の効率化について

吉富氏:

事前準備に関しては、今までイベント前日に1日かけて多くのM/E数をセッティングしなければならず、リハーサルで変更があっても簡単に変更できませんでした。KAIROSだとスイッチャーとして使いつつ、Kairos Creatorで別のスタッフが設定変更できます。事前の仕込みもPCで行えるため、時間が短縮でき、修正もしやすいですね。実際、事前準備の時間は半分になりました。あたらしいものを導入したので、準備時間が増えていくのかと思ったら、逆にどんどん準備時間が減っていって、凄く効率的だと思います。

カスタマイズの柔軟性について

吉富氏:

従来のスイッチャーでは、カスタマイズの柔軟性が足りず、決められたカスタマイズしかできなかったのですが、KAIROSはマルチビュー画面のレイアウトが自由になり、ボタンアサインも自由で、全くカスタマイズの柔軟性が異なりますね。スイッチャーのカスタマイズ性は、オペレーターごとのクセもあり重要視されますので、そうした人それぞれのニーズに個別に応えられるのがKAIROSのメリットの1つですね。自由にカスタマイズできるので、プレビューの数を増やしたり2面のディスプレイに出したり、自分好みに設定できます。

ロケットスタジオ 今後の展望について

吉富氏:

ロケットスタジオ自体は、現時点で入力を含めて完全IP化をしていないのですが、将来的にはIP化を予定しており、KAIROS導入はその一環です。これによって、スポーツ中継などでのリモートサブの実現を目指しています。これまでは、スタジアムなどにすべての機材を持っていって、それで配信する必要がありましたが、IP化するとカメラマンだけが現地に行き、インターネット回線で映像をスタジオに送り、スタジオの実況や解説者がそれを受けてコメントを入れ、さらにテロップやスイッチングをする、といった映像配信が可能になりますしね。
スポーツ中継だけでなく、例えば企業の社長がスタジオに入り、全国の支店に対してメッセージを配信するといった映像にも活用しやすくなると思います。とにかく、「カメラマンが現場に行けば配信ができる」ということで配信がよりシンプルで簡単になる。そうした将来像に対して、KAIROSはさらに活かせると考えます。

今後、KAIROSに期待することは

吉富氏:

KAIROS内で作成するテロップに日本語が使えるようになることですね。普段Photoshopなどで作成したテロップを流し込んでいるので問題ないですが、使えた方がより便利です。ただ、ロケットスタジオに導入された第1世代のKAIROSの安定性、機能性には全く問題を感じていないです。
KAIROSはさらに第2世代が登場しており、GPU性能が向上したことによる大幅なパワーアップを果たしているということで、さらなる合成が可能になることを期待しています。多くのレイヤーを合成するという配信側のニーズは、コロナ禍以降高まっていて、オンライン配信の需要が一気に増えて、それまでは貸し会議室や自社内の一室などで地味に行われた配信が、よりリッチになっていって、背景や複雑な画面の演出にこだわるようになっていますしね。

ロケットスタジオでは2023年4月のオープン以降、既存の顧客に対してKAIROSを使った配信サービスを提供しているそうで、今後さらなる顧客拡大を目指しているという。KAIROSが実現する新たな配信の現場を、ロケットスタジオで体験してみてはいかがだろうか。

ロケットスタジオへの納入業者:株式会社レスターコミュニケーションズ
KAIROS導入のお問い合わせは下記まで
E-mail:info_mk@restarcc.com
Tel:03-5715-2480

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。