映画「この夏の星を見る」のVFXシーンを支えた、BenQ初の5Kモニター「PD2730S」 Vol.12 [Monitor Review]

2025年7月公開の映画「この夏の星を見る」。直木賞作家・辻村深月氏による人気長編小説待望の映画化作品として注目が集まるなか、その美しくリアルな星空シーンが大きな話題を呼んでいる。

筆者はこの作品でアストロフォトグラフィー、VFXディレクター、3DCG、天文監修のほか、パンフレットや劇場掲示する大型ポスターなど紙媒体にも関わることになった。このプロジェクトを効率的かつ高い品質で進めていくため、弊社の編集スタジオに新たなBenQモニターを加えた。それがBenQ初の5Kモニター「PD2730S」だ。

© 2025「この夏の星を見る」製作委員会

筆者にとって最初のBenQモニターは「SW2700PT(27インチ2560×1440)」。Adobe RGB色域を99%カバーするハードウェアキャリブレーション対応のカラーマネジメントモニターで、雑誌やカタログ、ポスターなど紙媒体のプロジェクト用に導入したものだ。SW2700PTのパフォーマンスがあまりに良かったこともあって、長らく愛用してきた映像用2Kリファレンスモニターを4Kカラーマネジメントモニター「SW321C(32インチ3840×2160)」にリプレイス。さらにテレビのHDR(HLG)番組制作用に「SW272U(27インチ3840×2160)」と、節目となるプロジェクトに合わせる形でBenQのモニターが増えていった。

写真左から「SW321C」「SW2700PT」「SW272U」

BenQのモニターを選択するうえでこだわったのは、一貫してハードウェアキャリブレーション対応のSWシリーズでそろえている点だ。今回新たに導入したPD2730S(27インチ5120×2880)は、筆者にとって初の「PDシリーズ」となる。つまり、肝心のハードウェアキャリブレーションには対応していない。工場出荷時キャリブレーション済みなのでガンマ補正、色温度調整、色域補正、ユニフォミティ補正などは全く問題がないものの、複数のSWシリーズとの統一性の維持にはソフトウェアキャリブレーションで担保する必要がある。

今回はVFX用の星空の高解像度フッテージを大量に扱うことから5K解像度とコントラスト比2000:1で正確な暗部階調を再現するPD2730Sのスペックが、映画「この夏の星を見る」のプロジェクトで大いに役立つと考えた。

制作現場の視点で語る5Kモニター「PD2730S」の実力はいかに

わかりづらいBenQモニターラインアップ

BenQの液晶モニターは、ホームシリーズ、プロフェッショナルシリーズ、ゲーミングシリーズ、プログラミングシリーズという大きな括りでカテゴライズされているものの、抽象度が高いこの表現は具体的な製品に直結し辛い。どの製品ページを見ても似たような情報が一気に目に飛び込んでくるので、最初はかなり戸惑うかもしれない。その膨大な製品ラインアップがゆえに、予備知識がない状態でWebサイトを見ると情報の海に溺れてしまい最適な一台にたどり着くのは簡単ではないということだ。

カラーマネジメントモニターの選び方

映像・画像に携わるクリエイターにとってBenQの液晶モニターを選ぶ最大の理由は、正確な色再現を可能にするカラーマネジメントモニターであることに尽きる。ここに注目することで膨大な製品ラインアップから一気に着地点が見えてくる。BenQのカラーマネジメントモニターは大きくふたつに分類できる。ハードウェアキャリブレーション対応の「SWシリーズ」。もうひとつは工場出荷時に1台ずつキャリブレーションを行いガンマ補正、色温度調整、色域補正、ユニフォミティ補正を確認済みの「PDシリーズ」だ。

予算に余裕がある場合はSWシリーズを。定期的なキャリブレーションの手間をいとわないならリーズナブルなPDシリーズを、そんな大雑把な観点でまずシリーズを選択する。そこから解像度と色域のほか、HDRなど自分のクリエイティブに必要な機能をフィルタリングしていけばベストマッチな液晶モニターにたどり着く近道になるはずだ。

ただし、このふたつのシリーズでは搭載するカラーモードに違いがある。写真・映像クリエイター向けのSWシリーズは印刷媒体のプロジェクトで必須のAdobe RGBやモノクロが選べるが、PDシリーズではモードとしては搭載されていない。一方でデザイナー向けを謳っているPDシリーズにはCAD/CAM、デザイン(アニメーション)、暗室などSWシリーズにないカラーモードを持っている。

さて、BenQ初の5KモニターのPD2730Sを見ていこう。製品名にPDがつくということはハードウェアキャリブレーション対応ではなく、工場出荷時キャリブレーション済みのカラーマネジメントモニターということになる。

主な特徴

  1. AQCOLORシリーズ
  2. 広色域・高い色精度
  3. 5K UHD解像度・HDR対応
  4. 用途に合わせたカラーモード
  5. ナノマットコートパネル
  6. 接続端子・デイジーチェーン接続
  7. 作業効率アップの便利機能
  8. エルゴノミクスデザイン
  9. Display Pilot 2

Apple Studio Displayを意識したコンセプト

PD2730Sは、Display P3/DCI-P3 98%、sRGB/Rec.709 100%の色域カバー率で、幅広い色の表示に対応する。12種類のカラーモードをプリセットで搭載し1台で様々なジャンルのクリエイティブをこなすことができる。またThunderbolt 4によるMac接続に対応しMacbookと同じ色味で表示するM-bookモードを登載。スケーリング方式や最大輝度、サウンドシステム、センターフレームカメラの有無など、特徴的な違いも目に付くが、Apple Studio Display(27インチ5K Retina)がベンチマークになっていることは明らかだ。

Studio Displayは別売りのNano-textureガラス(反射防止)と傾きと高さを調整できるスタンドを合わせると価格差は10万円を超えることもあり、PD2730Sは競争力のある選択肢のひとつ。MacBookやMac StudioにマッチするデザインもMacユーザーに受け入れられやすいポイントだ。

美しい裏面デザイン

正面から見た時のPD2730Sはシンプルで当たり障りのないデザインだが、裏側は見せる背面デザインと言っていい。ドラマや映画の撮影では俳優の顔が主体になるカメラポジションがとられるので小道具のモニターは常に裏側を映すことになる。多くの製品はケーブル捌きを含めて無骨な姿をさらすことになるのだが、個人的には現場でこれがとても気になるタチ。ただただ美しくないのだ。

話が逸れたがPD2730Sの背面デザインは見ていて非常に気持ちが良い。にもかかわらず壁際に設置するしかない弊社の編集スタジオではケーブルを抜き差しする時以外背面を見ることはほぼなく、なんだか少し損した気分だ。

ちょこっと残念だった台座デザイン

レザーパッド付きの台座を採用したSW272Uでは、デットスペースだった台座が有用な空間として使えるようになりちょっとウキウキしたものだ。レザーパッドは適度なクッション性と滑り止め効果があり小物を置くのに便利なのだ。Macユーザーを意識しているPD2730Sの台座は、シルバーのアルマイト処理が施されたアルミ素材でスペースもかなり小さくなっている。デザイン的にとても美しいモニターなのだが、ツルツルとした金属製の台座は実用面でちょっと残念。

メーカーではPDシリーズをデザイナー向け、SWシリーズを写真・映像クリエイター向けとしており、シリーズによってターゲットユーザー層が異なる。PDシリーズを検討するMacユーザーにとって統一された美意識はとても重要だ。

90°ピボット機能で縦横表示が可能

付属するスタンドの調整範囲は、高さ150mm、ティルト角度(上/下)-5°/20°、スウィーベル(左/右)30°/30°、ピボット90°なので縦置きでも使える仕様。今回のプロジェクトでは縦置きと横置きを頻繁に切り替えることが多かったのだが、PD2730Sのスタンドはモニターの水平基準位置にクリック機構がないので、画面を触るたびに両手を使って水平の位置決めをしなければならないのが意外と面倒だった。

ナノマットコートパネル

27インチで統一した異なる解像度の3台がスタジオのデスクに並んだ。左から「SW2700PT(27インチ2560×1440)」、「PD2730S(27インチ5120×2880)」、「SW272U(27インチ3840×2160)」という配置だが実際にはプロジェクトによって中央のモニターはその都度入れ替えて運用する。

PD2730Sが到着し、モニター3台のレイアウトを考えていた時のことだ。制作フローの関係で当初はPD2730Sを左端に置きたいと考えていたのだがちょっとした問題があった。SWシリーズの多くに付属する遮光フードは、窓のあるスタジオでの日中作業を助けてくれる必須アイテムなのだがPD2730Sにはそれが付属しない。SWシリーズを左右に配置してみたところ見た目のバランスは良くなったものの遮光フードのないPD2730Sの画面表示への影響が心配だった。

この状況を補ってくれたのがTÜV認証を受けたBenQナノマットコートパネルだ。光を柔らかく拡散しグレアを軽減する反射防止コーティングは非常に強力で、窓からの入射光や天井の間接照明、ダウンライトなど光源の映り込みについては許容範囲に抑えられることがわかりひと安心。

写真左:SW2700PT、PD2730S
右が反射防止コーティングBenQナノマットコートパネルを採用したPD2730S。同じ条件で撮影しているが左のノングレア処理と比べるとその圧倒的な拡散効果が実感できる

ポート・端子類のレイアウト

ケーブルを下側に出す端子レイアウトだとモニターを最低位置にしたときDisplayケーブルやHDMIケーブルなどが台座と接触し画面にノイズが走ることがある。端子類の背面レイアウトではケーブルを上下方向で挿すか、奥行方向で挿すかは筆者にとって重要なチェックポイントのひとつだ。

その点PD2730Sの端子は奥行方向にケーブルが伸びるタイプなのでその心配がないのは精神衛生上非常に良い。挿したケーブルを支柱にまとめるフックの位置や形状もスマートで、本体を上下しても正面から電源ケーブルが見えないのは気持ちがいい。

端子類の背面レイアウトはどうしても抜き差しが煩雑になるため、結局ケーブルを刺したまま放置するか、あるいは便利さを捨てて使わなくなるという人は少なくないはず。本体やスタンドのデザインをいくらシンプルで美しくしても、そこからタコ足のように複数のケーブルが常に垂れ下がっている様を見るとちょっと悲しくなる。PD2730Sはこの裏面端子のほか、左底部にUSB TYPE-A(×3)、TYPE-C(×1)、ヘッドホンなど比較的頻繫に使う端子が別途レイアウトされているので便利。

上が背面、下が下側の端子群。頻繁に抜き差しするコネクター類が下側にレイアウトされているのは便利

ホットキーパックG3

BenQのディスプレイコントローラーといえばホットキーパック。3つのボタンに使用頻度の高い機能をアサインすることで、手元で瞬時に切り替えができる今やなくてはならないアイテムのひとつだ。ダイレクトボタンのほか、プッシュ機構付きのダイヤルはメニュー操作のほとんどが可能。PD2730Sに付属するのはワイヤレス化されたホットキーパックG3でモニターやMacと違和感ないホワイトカラーが採用されている。目立たないことは良いことと考えている筆者にとってはGood Job!

デイジーチェーン接続

90W給電に対応するThunderbolt 4を搭載し、MacBook等からケーブル1本で給電しながらモニターへの出力が可能だ。さらにThunderbolt 4によるデイジーチェーン接続にも対応し、5Kの画面を2つのモニターに拡張表示させることができる。今回のプロジェクトはデスクトップのシステムだったため使用する機会がなかったが、ラップトップをメインにしているクリエイターなら恩恵が大きい機能だ。

ソフトウェアキャリブレーション

これまではハードウェアキャリブレーション対応のSWシリーズをメインに編集室のモニターをそろえて来たわけだが、工場出荷時キャリブレーション済みのカラーマネジメントモニターであるPDシリーズPD2730Sが1台加わったことでシステム全体の一貫性にどんな影響があるのか気になるところだ。

PD2730Sはソフトウェアキャリブレーションに対応していて、BenQのサイトから専用ソフトウェア「Palette Master Ultimate」(無償)をダウンロードできる。筆者がこれまでSWシリーズで使用していたキャリブレーターはSpyderシリーズだったが、Palette Master Elemenとの相性はすこぶる悪く、キャリブレーションにがっかりするほど時間が必要だった。

そこで、PD2730S導入を機にキャリブレーターもリプレイスすることにした。最新のPalette Master UltimateはバージョンがV2.3.0.0以降であれば、Datacolor Spyder Proに対応するがメーカー推奨のキャリブレーターはCalibrite社の製品とのこと。今回はDisplay Plus HLを購入しソフトウェアキャリブレーションを試してみた。

メーカー推奨のキャリブレーターはCalibrite社の製品とのこと。Palette Master Ultimateとの相性は抜群だ

PD2730Sが3分10秒、SW272Uが4分40秒。Palette Master UltimateとDisplay Plus HLの組み合わせはコーヒーブレイクをする暇もないほどあっけなく終わってしまう。BenQユーザーでSpyder シリーズを使っている方はこの機会にぜひDisplay Plusに乗り換えてみては?ちなみにキャリブレーションは3ヶ月または100時間の使用ごとの調整が推奨されている。表示性能を維持していかなければカラーマネジメントモニターを使う意味がなくなるのでお忘れなきよう。

Palette Master Ultimateでソフトウェアキャリブレーションを行った直後のPD2730S(左)とSW272U(右)の比較、かなり近い表示結果が得られた。複数モニターを配置した編集システムでも違和感なく使える

PD2730Sが支える映画制作の舞台裏〜5Kで描く、リアルな星空とVFXの世界

Day for Nightによるリアルなナイトシーン

映画「この夏の星を見る」撮影風景

アストロフォトグラフィーの撮影とそれをVFXチームと組んで監督が求めるリアルさを追求するのが今回の筆者のミッションだ。映画「この夏の星を見る」は本編の1/3近くが夜、それも星空のシーンで構成されている。これを成立させるために本作品で採用されたのが「Day for Night」と呼ばれる手法だ。夜のシーンをあえて明るい昼間に撮影し最先端のカラーグレーディングで昼間の映像を夜に変えるというもの。さらにこのフッテージに対して、別撮りした本物の星空を組み合わせることで独特の世界観をもつナイトシーンを生み出すのだ。

星空は全てオーバー8Kの高解像度で撮影し、ダイナミックなカメラワークに追従させる場面では、焦点距離の長いレンズで少しずつ重なるように広いエリアを撮影しスタジオワークで数億画素の一枚画を作成するなど、VFX工程を踏まえた高精細フッテージ制作が求められていた。

高精細画像管理で必要な5K解像度

5K UHDディスプレイは、4K UHD解像度よりも77.8%多いピクセルを備えているため、広い表示領域においても画像を詳細に捉えることができる。とはいえ27インチの画面サイズで4Kと5Kの違いを肉眼で見分けるのは正直なところ至難の業だ。そんな中、5K表示のPD2730Sを選択する理由はどこにあったのか?

今回のプロジェクトでは「星空」というパーティクルで構成された高画素画像を扱う。VFXでコンポジットしていく星空の素材は、夜空に"奥行き"を表現するため星の数とあわせて星の粒の大きさも細かく管理していく必要があった。映画では表現できる明るさの最大値が決まっているため、明るい星を明るく表現するには面積を大きくするしかない。

しかし星の直径が大きくなると一気にリアリティがなくなってしまう。そこで暗い星を段階的に小さく表現することで明るい星との輝度差が際立つようにするわけだ。こうしたピクセル単位の表現をきちんと管理するには5K表示が役に立つ。暗い星、つまり小さな星の粒は4Kモニターでは見えなくなってしまうのだ。

専用のデザイナーモードが便利!

今回筆者が担当したのはフィニッシュワークではなくアンダートーンのVFX用素材の制作が中心だった。星空は真っ黒ななかにピンホールが散らばっているように思えるかもしれないが、星空のバックグラウンドとなる暗部には繊細なグラデーションが存在する。そのため輝度400cd/m2、2000:1のコントラスト比を持つPD2730Sで暗部の階調を管理しながらVFXチームとのやり取りを進めていった。

PD2730SはSWシリーズにはない専用のデザイナーモードをいくつか搭載している。今回は暗い階調の中の微妙なグラデーションの輝度管理が重要なポイントとなる。コントラストを高くし明部のディテールが把握しやすくなる「CAD/CAMモード」と、暗部の階調を見やすくする「デザインモード」や「暗室モード」をデュアルビュー機能(左右で異なるカラーモード表示ができる)で見比べながら進めることで作業効率も上がりとても便利だった。

    テキスト
左側が「CAD/CAMモード」右半分が「デザインモード」による表示。左右で異なるカラーモード表示ができるデュアルビュー機能はプロジェクトによっては作業効率の向上につながりそうだ
※画像をクリックして拡大

5Kの恩恵「劇場用大型ポスター」

VFXの作業と並行し映画館内に掲示するB0サイズの大型ポスターの制作も進められた。デザイナーのデザインに組み合わせる星空のフッテージ制作も筆者の仕事。B0サイズの印刷出力に対応するには12K以上の解像度が必要になる。少しずつ位置をずらしながら撮影した星空の素材から数億画素の星空を作成するため、PD2730SでB0サイズを実寸表示しながら各所をくまなく確認していく。「ここで見えているものは印刷でも見える!」。縦置き表示も含めてこれからのクリエイティブを効率的かつ高品質で進めるためにPD2730Sはかなり貢献したと思う。

映画館内に掲示するB0サイズの大型ポスター素材は12K以上の解像度が必要。ピボット機能で縦配置が可能なPD2730Sの5K表示は高精細の素材を扱う際に真価を発揮

ナノマットコートパネルのクリーニングは難しい?

余談だが、モニター画面は直接手で触れる機会はないと思っていても、設置場所を少し動かしたりスタンドで上げ下げしたりと、気がつかないうちに画面には指紋や油脂などが付着している。こうした汚れは、液晶モニター専用のクリーナーを使うか、薬局などで売っている精製水をマイクロファイバークロスに霧吹きした状態で画面を拭き取ると多くの場合きれいになる。

使用している複数のナノマットコートパネルのモニターはそれでも拭き取りが困難なムラが残るためベンキュージャパンサポートセンターに相談したところ70% IPA(イソプロピルアルコール)を含有した専用モニタークリーナーを少量、マイクロファイバークロスに噴霧し円を描くように拭く方法を紹介してもらったが、残念ながら未だ解決していない。

ナノマットコートパネルは反射が少ないのでモニターを使っている時にはあまり気にならないのだが、今回のような画面全体が暗い星空のフッテージを扱う場合には大きなストレスになっている。何か良い解決方法がないものかと思案中だ。

サポートセンターのアドバイスに従って様々な方法を試したがナノマットコートパネルのムラは酷くなるばかりでかなり困っている

モニターは測定機器

「新しく買ったモニター凄くきれいに映るんですよ」といった言葉を聞く。きれいという言葉は幅が広いので一概にはいえないが、その用途が「画を楽しむための」か「画の品質を確認するため」なのかという視点をもつ必要があり、クリエイターが選ぶのは後者でなければならない。

つまり我々が作っている映像や画像は不特定多数のオーディエンスに向けたものであり、テレビでもネット配信でも受け取り手、つまりコンテンツを楽しむ人の視聴環境をコントロールできない。コンテンツの送り手と受け手とで全く異なる表示を見ることになるのは避けることができない現実。だからこそカラーマネジメントモニターを使い映像・画像品質の基準や規格を愚直に守り続けることがクリエイターに求められるのだ。

竹本宗一郎(映像制作会社Zero corporation代表)|プロフィール
大阪芸術大学 客員教授。一等無人航空機操縦士。 世界各地の暗闇の絶景をフィールドにNHKのネイチャードキュメンタリー番組や映画、CMなどの特殊撮影を手掛けるムービーカメラマン、テクニカルプロデューサー。本作品ではアストロフォトグラフィー、天体映像、3DCG、VFX、天文監修などを担当。

WRITER PROFILE

編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。