尾田章|プロフィール
カメラのある日常の楽しさを発信する"くらしフォトグラファー"。カメラ機材の使い方、写真の撮り方などをYouTube、運営ブログ「KOBE FINDER」にて"Aki"として初心者にもわかりやすく解説。
フルサイズのミラーレスカメラを、気負わずに旅へ連れ出す。そんな使い方を後押ししてくれるカメラが登場した。
2026年10月29日、キヤノンから「EOS R8 Mark II」が発売された。2023年に登場したEOS R8の後継機で、フルサイズEOSのなかでは最も手の届きやすい価格帯に置かれたモデルだ。先代からの一番の変更点は、ボディー内手ブレ補正の搭載である。
筆者は発売前の実機を借り、1泊2日の家族旅行に持ち出した。大阪国際空港で飛行機を眺め、箕面の高台にあるホテルに泊まり、翌日は箕面大滝まで歩いている。レンズはRF24-240mm F4-6.3 IS USMと、キットレンズにも設定されているRF45mm F1.2 STMの2本。本稿では、この2日間の実写をもとに、EOS R8 Mark IIの特徴と使いどころをレビューしていきたい。
直線基調の新デザイン。フルサイズの入り口という立ち位置
握ればいつものキヤノン
まず目を引くのは外観だ。これまでのEOS Rシリーズは丸みを帯びた造形が基本だったが、EOS R8 Mark IIは直線と円弧を組み合わせた、角の立ったデザインに改められた。お手本になったのは1987年に発売されたEOSの1号機「EOS 650」で、キヤノンはこれからカメラを始める若い世代を意識したと説明している。
写真で見ると新鮮に映るが、手に取った印象はこれまでのEOSと変わらない。グリップは指がしっかりと掛かる深さがあり、握った瞬間に手になじむ。見た目は新しくなっても、道具としての握り心地はキヤノンの流儀を受け継いでいる。
大きさは約131.4(幅)×90.0(高さ)×79.7(奥行)mm、質量はバッテリーとカードを含めて約546g。筆者が普段使っているEOS R6 Mark III(約699g)と並べると、ひと回り小さく、約150g軽い。
先代から何が変わったか
EOS R8 Mark IIの位置づけは、フルサイズEOSのベーシックモデルだ。これからフルサイズを始める人や、APS-C機からのステップアップを考えている人に向けて作られている。そのうえで、先代のEOS R8から中身が底上げされた。主な違いをまとめておく。
| EOS R8 | EOS R8 Mark II | |
| ボディー内手ブレ補正 | なし | 5軸・最大中央7.5段/周辺7.0段 |
| マルチコントローラー | なし | あり |
| 動画電子IS | 切/入/強 | 切/入/強/強+/被写体追尾IS |
| カラーフィルター | ― | 16種類(効果量0〜100%) |
| 防塵・防滴 | ― | 防塵・防滴構造、マグネシウム合金シャーシ |
| 質量(バッテリー・カード込み) | 約461g | 約546g |
| 有効画素数 | 約2420万画素 | 約2420万画素 |
| 連続撮影(電子シャッター) | 最高約40コマ/秒 | 最高約40コマ/秒 |
(仕様はキヤノン公式サイトより)
ボディー内手ブレ補正のほかにも、登録した人物を優先してピントを合わせる「登録人物優先」、シャッターを押す前から記録を始める「プリ連続撮影」、動画記録中に前面が赤く光るタリーランプなど、上位機で使われてきた機能が加わった。
動画まわりの仕様も整っている。4Kは6Kオーバーサンプリングで記録し(4Kクロップなし時)、記録形式はXF-HEVC SとXF-AVC S、YCC422 10bitまで選べる。カスタムピクチャーにはCanon Log 3やCanon 709を備え、フルHDでは最大179.8fpsのハイフレームレート撮影にも対応する。マルチアクセサリーシューと外部マイク端子を組み合わせれば4ch音声の収録も可能だ。ベーシックモデルでありながら、映像制作で求められる機能はひと通り揃っている。
実写で分かったこと。旅行Vlogに最適なカメラだった
EOS R8 Mark IIを携えて1泊2日の家族旅行の様子をVlogに収めた。ボディー手ブレ補正や、カメラのカラーフィルター機能による映像の仕上がりの参考にしてもらいたい。
EOS R8 Mark IIで撮影した箕面旅行のVlog。動画はすべてカラーフィルターで撮影し、グレーディングはしていない
手持ちで0.5秒。三脚なしで滝を撮れた
2日間の撮影を通して、ボディー内手ブレ補正のありがたさを何度も実感した。公称値は最大中央7.5段/周辺7.0段。ただしこれはCIPA 2024規格準拠、電子シャッター設定時、RF24-105mm F2.8 L IS USM Z(f=105mm)を使ったときの数値で、どのレンズでもこの段数が得られるわけではない。
そこで、実際に何秒まで手持ちで撮れたかで見てみたい。箕面大滝では三脚を使わず、NDフィルター(ND64)を付けてシャッター速度0.5秒で撮影した。写真はRAWで記録し、ピクチャースタイル「風景」をベースに現像している。水の流れが糸を引くように写り、周囲の岩肌や木々はブレずに残っている。
等倍で確認すると、ブレの残り方はカットによって差があった。広角側の24mm〜40mm前後では、岩肌の細かな凹凸まで止まったカットが多い。一方で90mmまでズームすると、等倍ではわずかにブレが見えるカットが増えた。ウェブで見る大きさなら気にならないが、大きく伸ばす前提なら広角側で撮るか、数枚押さえておくと安心だ。
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
先代のEOS R8にはボディー内手ブレ補正がなく、レンズ側の補正に頼るしかなかった。手ブレ補正を持たない単焦点レンズでは、スローシャッターを手持ちで使う選択肢そのものがなかったことになる。三脚を持たない旅先でも、滝や夕景でシャッター速度を落とせる。この差は大きい。
動画電子IS「強+」:空港の望遠と、揺れるバスの車内で
動画の手ブレ補正も強化されている。動画電子ISには従来の[切/入/強]に加え、より強く補正する[強+]が追加された。対応レンズでは、ボディー内IS・レンズ内IS・動画電子ISの3つが協調して補正する。
今回、動画は[強+]を積極的に使用して撮影した。補正の強さは想像以上で、手持ちでの撮影がとても楽になった。とくに助けられたのが次の2つの場面だ。
ひとつは空港の展望デッキ。RF24-240mmの望遠側で離着陸する飛行機を追ったが、焦点距離が長くなっても画面の揺れはよく抑えられていた。もうひとつは移動中のバスの車内だ。足元から伝わる振動は自分の構え方では止めようがないが、それでも見やすい映像が撮れた。
※画像をクリックして拡大
なお、動画電子ISには使い方に条件がある。[強+]は4K撮影時のみ選択でき、[強]よりもさらに撮影範囲が狭くなる。広角で景色を広く見せたいカットでは画角の狭さが気になるので、そうした場面では[入]や[強]に切り替えたい。
RF24-240mm 1本で、足元の家族から遠くの飛行機まで
旅のあいだ、レンズ交換はほとんどしていない。RF24-240mm F4-6.3 IS USMを付けたまま、空港の展望デッキでは子どもの後ろ姿を広角で、駐機場の機体や離陸していく飛行機を望遠で撮った。望遠端の240mmまで伸ばせば、展望デッキからでも機体を画面いっぱいに収められる。同じ場所から24mmと240mmで撮り比べると、この1本が受け持つ範囲の広さがよく分かる。
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
カラーフィルター:撮って出しで色が完結する
EOS R8 Mark IIのカラーフィルターは16種類で、撮影時にファインダーやモニターで効果を確かめながら色を決められる。このうち「NegativeFilmtone」と「PositiveFilmtone」の2種類は、これまでのカラーフィルターにはなかったもので、EOS R8 Mark IIで新たに搭載された。
今回の旅では、写真はJPEGの撮って出しを中心にし、動画はすべてカラーフィルターで撮影した。グレーディングは一切していない。この2つのフィルムトーンは、写真でも映像でもきれいな色に仕上がった。
同じ場所、同じ35mmで撮り比べたのが次の2枚だ。NegativeFilmtoneは彩度を抑え、芝生の緑をくすんだ黄緑に寄せながら、コントラストをやわらかくまとめる。PositiveFilmtoneはコントラストを高め、緑や空の色をはっきりと出す方向だ。
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
EOS R8 Mark IIでは、カラーフィルターの効果量を0%から100%まで、10%刻みの11段階で調整できるようになった。フィルム調の色は場面によっては強すぎることがあるが、効果量を下げれば色の方向性を残したまま加減できる。かけるか、かけないかの二択ではなくなったことで、撮って出しで使える場面が広がった。
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
注意したいのは、カラーフィルターがRAW/C-RAWと併用できないことだ。カラーフィルターを使うとJPEGかHEIFでの記録になり、あとからフィルターを外した状態には戻せない。ほかにもHDR PQ撮影、HDRモード、多重露出、フォーカスブラケット撮影、フォルスカラーとは併用できない。RAWを残しておきたい撮影では、カラーフィルターをあきらめることになる。
RF45mm F1.2 STMとの組み合わせ
EOS R8 Mark IIには、RF45mm F1.2 STMとのレンズキットが用意されている。F1.2の大口径単焦点から始められるフルサイズのキットは珍しい。
筆者はこのレンズを発売直後に購入し、以前PRONEWSでもレビューした。約346gと軽く、約546gのボディーと組み合わせても持ち歩きの負担になりにくい。このレンズには手ブレ補正がないため、ボディー内手ブレ補正を持たない先代のEOS R8では、手ブレをカメラ側で抑える手段がなかった。EOS R8 Mark IIでその弱点が解消されたことは、このキットの価値を高めている。
旅の夜は、ホテルのテラスから見える夜景をこのレンズの開放で撮った。
※画像をクリックして拡大
※画像をクリックして拡大
バッテリーはどこまで持つか
小型ボディーゆえに気になるのがバッテリーだ。EOS R8 Mark IIはLP-E17を使う。上位機のLP-E6系よりも小さく、カタログ上の撮影可能枚数は[省電力優先]設定時で約220枚(ファインダー撮影時)/約340枚(モニター撮影時)とされている。
実際の旅では、昼前から夕方17時半ごろまでをバッテリー1本で撮影できた。その間に撮ったのは次のとおりだ。
| 項目 | 内容 |
| 撮影時間 | 昼前〜17時半ごろ |
| 静止画 | 655枚 |
| 動画 | 95クリップ、合計19分44秒(4K 29.97p、XF-HEVC S YCC422 10bit) |
| 使用した機能 | ボディー内手ブレ補正、動画電子IS など |
17時半ごろに残量表示が最後のひと目盛りになり、赤く点滅したところで交換した。写真を655枚撮り、4K動画を20分近く記録し、そのあいだボディー内手ブレ補正と動画電子ISを使い続けている。CIPAの測定は条件が厳しく、実際の撮影ではカタログ値を上回ることが多い。それでも、カタログ値の2倍近い枚数を撮ったうえで動画もこなせたのは、実用上の安心材料になる。
1日持ち出して写真と動画をたっぷり撮るなら、予備のバッテリーを1本用意するか、昼の休憩などで充電しておけば足りる。小型のバッテリーではあるが、旅の撮影には十分実用的だと感じた。
エクステンショングリップ「EG-E2」
EOS R8 Mark IIと同時に、専用のエクステンショングリップ「EG-E2」も発売された。価格は14,850円(キヤノンオンラインショップ、税込)。
ボディーの底面に取り付けて、グリップを下に延長するアクセサリーだ。実をいうと、最初は必要性に疑問を持っていた。せっかくボディーがコンパクトなのに、わざわざ大きくする意味があるのか、と。ところが実際に装着してみると、とても持ちやすい。純正アクセサリーだけあって作りがよく、ボディーと一体になったような握り心地になる。
恩恵を感じたのは、RF24-240mmのようなレンズを付けたときだ。ボディーをしっかり握れるようになり、望遠側で構えたときの安定感が増す。手の大きい人なら、小指まで窮屈にならずにグリップできるので撮影しやすくなるはずだ。RF45mm F1.2 STMやRF50mm F1.8 STMのような小型の単焦点ならグリップなしでも十分だが、標準ズームから少し大きめのレンズを合わせるなら、装着したほうが扱いやすい。
使い勝手もよく考えられている。装着したままバッテリーを交換でき、底面には三脚ねじ穴があるのでそのまま三脚にも載せられる。SDカードスロットはボディーの側面にあるので、カードの出し入れもグリップを付けたままで済む。取り付けと取り外しも簡単なので、レンズや撮影に合わせて付け外しすればよい。
なお、EG-E2を付けたときの底面の斜めのラインは、デザインのお手本になったEOS 650のシルエットにも重なる。持っておいて損のないアクセサリーだ。
バッテリーチャージャーは付属しない
購入前に知っておきたいのが、同梱品にバッテリーチャージャーが含まれていないことだ。同梱されるのはカメラ本体、カメラカバー R-F-5、バッテリーパック LP-E17、ストラップ ER-100G、シューカバーで、バッテリーチャージャー、インターフェースケーブル、HDMIケーブルは付属しない。
充電の方法は2つある。ひとつは別売のバッテリーチャージャー LC-E17(5,500円)を使う方法。もうひとつはカメラにバッテリーを入れたままUSBで充電する方法で、キヤノンはUSB電源アダプター PD-E2(17,600円)などの使用を案内している(価格はいずれもキヤノンオンラインショップ、税込)。
予備のバッテリーを持ち歩くなら、カメラ本体で充電している間にもう1本を充電できるLC-E17があると運用が楽になる。初めてカメラを買う人は見落としやすい部分なので、本体と一緒に予算に入れておきたい。
どんな人に向いているカメラか
EOS R8 Mark IIは、先代のEOS R8が残していた弱点を埋めてきたカメラだった。ボディー内手ブレ補正とマルチコントローラーが加わり、軽さはそのままに、上位機に近い使い心地になっている。
一方で、割り切られた部分もある。先幕と後幕の両方を機械式で動かすメカシャッターは搭載しておらず、シャッター方式は電子先幕と電子シャッターの2つ。電子先幕での連続撮影は最高約6.0コマ/秒で、ストロボ同調も1/200秒までとなる。SDカードスロットは1つでバックアップ記録はできず、EVFは0.39型・約236万ドット。4K 59.94pの連続撮影時間は約33分(23℃、自動電源オフ温度:標準)だ。1日中撮り続ける現場や、バックアップが必要になる撮影では、上位のEOS R6 Mark IIやEOS R6 Mark IIIのほうが安心できる場面もあるだろう。
それでも、気軽に持ち出せる大きさで、手ブレ補正が頼りになり、フルサイズ用のRFレンズを選べるという組み合わせは大きな魅力だ。今回の旅では、便利ズーム1本で家族のスナップから遠くの飛行機、手持ちの滝まで撮り、動画もカラーフィルターの撮って出しで完結した。
結論:こんな人に最適
- はじめてフルサイズのカメラを手にしたい人
- APS-C機からのステップアップを考えている人
- 旅行や家族の記録を、写真と動画の両方で残したい人
- 撮って出しの色で、写真も動画も完結させたい人
- 上位機を持っていて、気軽に持ち出せるボディーを探している人
キットはRF24-105mm F4-7.1 IS STMとRF45mm F1.2 STMの2種類があるが、筆者が推したいのはRF45mm F1.2 STMのキットだ。ボディー内手ブレ補正を得たことで、このレンズの魅力をより気軽に引き出せるようになった。軽いボディーにF1.2を付けて街へ出れば、見慣れた景色も違って見えるはずだ。
価格はキヤノンオンラインショップで、ボディーが275,000円、RF24-105mm F4-7.1 IS STMレンズキットが324,500円、RF45mm F1.2 STMレンズキットが317,900円(いずれも税込、2026年10月時点)。発売日は2026年10月29日だ。