ショーリール「Metamorphosis」の撮影現場より。Radianceはレンズ鏡筒上部の刻印と、マウント近くの金色のラインが目印(写真:Kozo Takahashi)

60seconds Shoots

ユーザーへのデリバリーが順次開始となった「ZEISS Supreme Prime Radiance」

Carl Zeissの新製品は「ZEISS Supreme Prime Radiance(以下:Radiance)」シネプライムレンズ。この製品はすでに受注が終了しているが、4月から予約していたユーザーへのデリバリーが順次始まっており、NABではそのラインナップと映像効果を展示予定だった。

ショーリール「Metamorphosis」の撮影現場で、自らカメラを構える石坂拓郎JSC。レンズは小型軽量なため、肩載せのスタイルでも撮影者の負担は軽減されている(写真:Kozo Takahashi)

Radianceは、映画・TVドラマおよびコマーシャルなどで使われている35mmフルサイズ対応のSupreme Primeの光学設計をベースに、より個性的な描写をする限定バージョンのレンズ。レンズに新開発のT* blueコーティングが施されており、逆光撮影時には画面隅々まで高いコントラストとディテールを保ちつつ、印象的なブルーのフレアが入るのが特長だという。

ツァイスは過去100年の間、常にシャープでコントラストが高く、ヌケが良くフレアを抑えたレンズを目指して製品開発を行っており、Radiance最大の特長である「綺麗なフレアを生むレンズ」は、設計者にとって前代未聞の開発目標だったため、当初は社内でも戸惑いがあったという。しかし、「より印象的で感情豊かな映像表現にはフレアもひとつの表現手段として重要である」という共通認識のもと、設計部と製造部が団結し、今回のRadianceが実現した。

ショーリール「Metamorphosis」撮影テストのモニター映像。照明光源には綺麗なサンスター(光芒)、そしてその周囲にフレアが発生しているが画面全体のディテールは失われていない(写真:Carl Zeiss)

同レンズは普通の照明条件(順光)では通常のSupreme Primeと同じようにシャープな映像を結び、逆光のシチュエーションでは、美しい円弧を描くブルーのフレアを生むという。広角側では小さなフレアが幾重にも重なりダイナミックな遠近感を、望遠側では大きなフレアが被写体を浮き立たせ、いずれも映画・ドラマでの感情演出に効果的だとしている。また、このフレアのルックはすべての焦点距離で揃えられており、レンズを交換しても急に描写が変わることがない。どの焦点距離を使っても均一な描写が得られ、同じ照明のもとであれば何度リテイクしても同じ効果が得られるので、撮影時間に制約のあるコマーシャルの現場でも、一回のリハーサルで照明効果を把握できるのがとても便利だとしている。

フレアというと、一般的には古い年代のビンテージレンズや、あえてコーティングを剥がしたレンズ、あるいはフレア耐性を意図的に下げたコーティングをしたレンズを連想する方が多いかと思うが、そういったレンズはフレア時に画面全体がホワイトアウトしてしまい、ビンテージ感は演出できても役者の表情が不鮮明となる。また、フレア演出のためにコーティング効率が下がり、レンズの開放値Tストップが暗くなる場合もあるという。

Radianceはそれらとは異なり、画面隅々まで高いコントラストとディテールを保ち、開放値も通常のSupreme Primeと同じT1.5をキープ。T* blueコーティングは、焦点距離に応じてレシピが異なる。前から何番目のガラスのどの面にT* blueコーティングを施すか、ということを美的な評価点にもとづいて最適解を探るためには、長い研究期間が必要だったという。

昨年、レンタル会社とプロダクション会社向けに行われた内覧会の様子(写真:Carl Zeiss)

内覧会でSupreme Prime(左)とRadiance(右)を同じ85mmの焦点距離で描写比較する来場者(写真:Carl Zeiss)

■一言アピール!

Radianceは21mmから100mmまでの7本セットで、4月中旬から麹町の三和映材社さんと赤坂のナックレンタルさんで、それぞれレンタルが開始されます。ご自分の作品にRadianceを使ってみたいという方は、ぜひこれらのレンタル会社にお問い合わせください。