Adobe Premiere Proで長編制作が行いやすくなるプロダクション機能を搭載

アドビは、Adobe Premiere Proのバージョン14.1にてポストプロダクションでプロジェクト管理が効率的に行える待望の新機能「プロダクション」を追加した。プロダクション機能は、本来ならばNABアドビブースの目玉にはるはずだった機能だ。そこで、NABの会場でアドビが伝えようとしていたプロダクション機能の魅力をプロダクトマーケティングマネージャーの田中玲子氏にビデオ会議を通じて聞いてみた。

■大規模で複雑なプロジェクトを小さな部分に分割

プロダクション機能は、大規模で複雑なプロジェクトを小さな部分に分割ができる。例えば、長編映画で一個のプロジェクトを作って素材やシーケンスをどんどんと入れていくと、プロジェクトファイル容量は巨大になってしまう。膨大な量になると、アクセスするのに時間がかかってしまい、「あまりに巨大なプロジェクトになると、立ち上げるのに20分かかってしまう場合があった」という。

しかし、プロダクション機能を使うとで「今日はここの作業をしたい」といった自分が使いたいプロジェクトを立ち上げ可能になる。これによって、作業効率が向上すると田中氏は説明する。

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Premiere Proで長編制作をするとプロジェクトファイル容量が巨大になってしまうために、使いづらいと言われることがありました。しかし、新しく搭載されたプロダクション機能によって小さなコンポーネントに分割できるようになり、使いやすくなりました。昨年公開した「ターミネーター:ニュー・フェイト」の制作で使われ、現場からのフィードバックを経て、今回のリリースとなりました。

Premiere Proを使ってプロダクション機能を見せてくれた。

(01)プロダクション機能はフォルダー管理が特徴で、すべてのファイルとフォルダーをプロダクションパネルに表示できたり、OS側のフォルダーで管理できる。もちろん、Premiere Proを立ち上げなくてもフォルダーにはアクセスできる。プロダクションのフォルダーの中には、すべてのプロジェクトや参照ファイルなどのデータが入っている。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/04/200422_AdobeProduction_04.png プロジェクトはWindowsエクスプローラーまたはMacのFinderで内容を確認できる
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(02)メインメニュー→「ファイル」メニューに新しく追加された「プロダクションを開く」を選択。「どのプロダクションを開きますか?」と聞かれるので、管理するフォルダーを選択する。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/04/200422_AdobeProduction_03.png メインメニュー→「ファイル」メニュー→「プロダクションを開く」を選択
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(03)Premiere Proのプロダクションの画面とローカルのフォルダがまったく一緒。このローカルのフォルダー構造が、Premiere Proの中でも見えているのがプロダクションの新しい概念の特徴だ。

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■複製を作成することなく、プロダクション内でアセットを再利用できる

これまでのPremiere Proは、プロジェクトごとにファイルをコピーする必要があったが、プロダクション内のプロジェクトファイルは、別のプロジェクトの素材を参照できるようになった。これによってプロジェクトのファイル容量を大幅に減らすことが可能になる。

(01)プロダクションパネルのインターフェイスは、中からプロジェクトが見えたり、ファイルやシーケンスを確認できる。例えば、「DAY_001_dancer」というプロジェクトを開くと、下のプロジェクトウインドウでは、中身が見えている。このプロジェクトの中身にMP4の素材が入っているのが確認できる。

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(02)例えば、今度は「DAY_005_skater」を開くとこのプロジェクトの中には素材はないが、再生するとこのシーケンスの中の素材が実際に再生される。これが新しいプロダクション機能の特徴で、これまではプロジェクトの中のタイムラインにMP4の素材が見えていないとそのシーケンスが見えなかった。

しかし、プロジェクトの中にMP4ファイルが入っていない状態でも再生されている。これは、今までPremiere Proで作業していた方には不思議な感じだろう。その都度、各プロジェクトに素材をコピーしなくても、ほかのプロジェクトにある素材を参照できるようになったからだと田中氏は解説。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/04/200422_AdobeProduction_07.png プロジェクトパネルに注目。読み込んだ素材が確認できる
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(03)別プロジェクトのMP4を参照したい場合は、「プロジェクトウィンドウで表示」を選択で、別の素材を見に行くことができる。なので、素材がなくても再生や編集が可能。

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これまでプロジェクトにごとにメディアをコピーする必要があり、同じ素材がいろんなプロジェクトに重複して蓄積され、プロジェクトのファイル容量が巨大化してしまっていた。このような問題を防ぐことができるのも、プロダクションの特徴だ。

■共同作業

もう一つは、コラボレーション機能だ。複数のエディターとのコラボレーションが可能で、メディア素材の管理が安全に行えるようになる。不要な書き込みを制限が可能になる。

(01)プロダクションパネルの緑色の鉛筆アイコンは、書き込みモードの印で、自身がプロジェクトとして開いているという印になる。赤い鍵は、他の誰かがプロジェクトを編集中であることを示している。誰が使っているというのがわかる。つまり、ほかの人が何を開いているのを一元管理が可能。

画面では、「DAY_002_japan」をMattが開いていると表示され、鍵がかかっている。この状態のプロジェクトの移動または名前変更はできない。ただし、読み取り専用モードのみで開くことは可能。以上のように、プロダクションを使うことによって、いろんな人が勝手に書き込んだり、上書きすることを防ぐことが可能になった。

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(02)さらに、もう一つのプロダクションの中で使いやすくなった機能があるという。これまでプロジェクトの中で名前を変えても、ローカルに保存している素材の名前は連動して変わることはなかった。「これはテロップ」のようなファイル名で管理したくても、ローカルのプロジェクトやファイルは名前は自動的に変わらないので、「変えないでください」というルールが一般的だった。プロダクションが搭載されたことによって、Premiere Proの中で名前を変えても、きちんとローカルに反映されるように改善されたという。

この機能のように、プロダクションのフォルダーの構造と、Premiere Proの中のプロダクションの構造が常に一致するようになり、事故を防げるのもプロダクションの特徴になるという。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/04/200422_AdobeProduction_09.png プロダクションパネルからファイル名に「test」を追加
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https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/04/200422_AdobeProduction_10.png ファインダーのファイル名も連動して「test」が追加された
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チームプロジェクトを個人プランプロジェクトの期間限定で使用可能

アドビのリモートワーク対応の取り組みについても紹介があった。グループ版エンタープライズ版にあった「チームプロジェクト」と呼ばれる機能を個人プランプロジェクトでも使用できるようになったという。この機能は、チーム版とエンタープライズ版にあった機能なのだが、これが個人プランでも2020年8月17まで使えるようになった。

プロダクションのコラボレーションの中にも似たような機能があるが、チームプロジェクトは遠隔地のコラボレーションを可能になるのが特徴で、クラウドを介してリアルタイムに共有ができるというツールだ。

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また、Creative Cloudメンバー向けのサービスとして、ビデオおよびオーディオアプリのベータ版の提供を開始した。通常の製品のほかに、ベータ版をダウンロードしてテストできるプログラムだ。Creative Cloudデスクトップアプリ上にベータ版が表示され、ここからダウンロードが可能。バグの報告の画面は英語だが、日本語で報告しても大丈夫とのこと。

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Premiere Proはプロダクション機能の登場によって、1つのプロジェクトにすべての素材を入れて参照するプロジェクトの作り方や1つのプロジェクトを細切れにする作り方も考えられるようになった。プロジェクトの作り方をエディタの好みでできるようになって、さらに使いやすいやすくなったと言えるだろう。効率のよいワークフローの実現を試行錯誤して、今後のプロジェクトに役立ててほしい。

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