ニコンブースで最も熱を帯びているのが、先日発表された大口径望遠ズーム「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S II」のタッチ&トライである。その注目度の高さは、体験までの待ち時間にも如実に表れていた。CP+初日の午前中には、待ち時間が最大で200分にまで達したほどだ。13時の時点で確認した際には、すでに新製品の整理券発行は一時中断されており、その過熱ぶりがうかがえる。まずは、この大きな期待を背負った新製品に触れた瞬間の、率直な印象から伝えていきたい。
ブースで新型レンズを装着したカメラを構えた瞬間、直感したのは「数値以上の軽さ」であった。これは体験ブースを訪れた来場者たちの反応とも、まさに見事に一致している。単に総重量が削減されただけでなく、重心の位置が劇的に改善されているのだ。従来の70-200mmクラスのレンズは、どうしてもレンズ先端側に重みがかかるため、構えた際にフロントヘビーになりがちな傾向があった。しかし、この新モデルは重心がカメラボディ側に寄せられており、手元で支える際の安定感は従来とは一線を画している。
正直なところ、展示ブースで数分触れただけでは、この進化の本質を完全に理解するのは難しいかもしれない。この絶妙なバランスの恩恵は、1時間、2時間、あるいは9時間といった長時間のフィールド撮影において、疲労蓄積の差として顕著に現れるはずだ。レンズが不必要に前に倒れ込まず、自分の体に近い位置に重心が収まる感覚は、長時間の撮影で確実にアドバンテージとなるだろう。

また、新採用された着脱式の三脚座リングについても、現場での実用性が徹底して考え抜かれている。これまでのレンズでは、三脚を使わないシーンでリングが指に干渉して邪魔に感じたり、かといって外してしまうと鏡筒の段差が気になったり、外したパーツの置き場に困ることも多かった。不意にどこかへぶつけてしまうリスクを考えると、結局は付けたまま妥協して使うのが常であった。

このレンズには、着脱式の三脚座リングを取り外した後に装着する専用の保護カバーが用意されており、状況に応じた使い分けが可能となっている。これにより、撮影環境の変化へも即座に対応し、最適な形態を選択できる。単なる軽量化という数値上の進化に留まらず、実際に機材を操る撮影者の身体感覚に寄り添い、現場でのストレスをいかに排除するか。そうした設計思想の深さが、手にした鏡筒を通じてダイレクトに伝わってきた。

この軽量化と小型化は、設計思想の根本的な転換によって成し遂げられている。最大のポイントは、前モデルでは採用されていなかった収束性に優れたレンズの導入と、レンズ構成を18群21枚から16群18枚へと最適化した点にある。特筆すべきは、鏡筒が伸び縮みしないインターナルズーム機構を維持しながら、全長を大幅に短縮した点だ。ズーミングで重心が一切変わらない操作感は、ジンバル撮影や手持ち撮影において、一度馴染めば手放せないものになるだろう。
光学性能に関しても、一切の妥協は排されている。レンズ構成を16群18枚にまで削減しながらも、6種類の特殊レンズを効果的に配置することで、描写の純度は極限まで高められた。特に11枚に増えた絞り羽根と、非球面レンズの加工精度向上によって実現した「輪線ボケ」のない滑らかなボケ味は、ポートレート撮影においても同クラス最高水準の表現力を実現している。
会場のデモ機では詳細な検証にまでは至らなかったものの、ニコンの公表資料によればAF性能の進化は極めて著しい。画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載したカメラボディとの組み合わせにおいて、従来モデル比で約3.5倍という大幅な高速化を達成。さらに、フォーカスブリージングも徹底して抑制されており、静止画のみならず動画撮影においても、極めてクリーンな映像表現が期待できそうだ。
ブースで提示された「4月発売」という予定と、税込443,300円という価格を前に、期待と緊張が入り混じる。現行モデル(NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sで価格は税込350,900円)から約26パーセントの価格上昇となるが、その数字を補うだけの価値は十分にある。機動力、AF性能、描写精度の3軸における進化は、価格改定を納得させるだけの説得力を持つ。シビアな現場で確実な結果を求める撮影者にとって、現場で結果を出すための“武器”として設計された一本である。4月の発売に向け、現場へ投入する日が待ち遠しい。