CP+ 2026のRAIDブースにおいて、ひときわ来場者の視線を釘付けにしていたのが、PIXBOOM社のハイスピードカメラ「Spark」である。特筆すべきは、展示されていたデモ機の筐体に、シリアルナンバー「0001」が刻印されていたことだ。世界的に注目を集める最新鋭機がこの会場に展示されていること自体が驚きであるが、それが記念すべき第一号機であるという事実は、多くの来場者にさらなる衝撃を与えた。

スペックを確認すると、その野心的な設計に驚かされる。搭載されているのは4.6K・アスペクト比3:2のオープンゲートセンサーであり、実用的な4K(16:9)設定時で最大887fpsという驚異的なフレームレートを実現している。

さらに解像度をHDに落とせば1800fpsまで引き上げることが可能だ。特筆すべきはハイスピード撮影としては実用域のISO1600という高感度性能である。光量を確保するのが困難なハイスピード撮影において、展示会場の通常の照明下でも鮮明なライブプレビューを映し出せる事実は、現場での運用に革命的な自由をもたらす。

さらに注目すべきは、その価格設定である。ハイスピードカメラはこれまで、個人や小規模なプロダクションが導入するにはハードルの高い機材であった。しかし、本製品の定価は税込2,271,500円。これまでの相場を考慮すれば、極めて戦略的な数字といえる。

また、これまでの業界標準として広く使われてきたPhantomシリーズは、その性能こそ完璧に近いが、内蔵RAMに記録してからメディアに吐き出すという、二度手間とも言える運用上の煩わしさを抱えていた。一瞬を捉える代償として、長い待ち時間を要する運用が一般的であった。

ところが、このSparkが提示した解決策は極めてシンプルかつ強力だった。専用SSDを採用することで、通常のビデオカメラと同様に、メディアへ直接データを書き込み続けることを可能にしたのである。RECボタンを押して撮影を開始し、トリガーを切れば完了。この流れるようなオペレーションの実現は、メディア性能が飛躍的に向上した現代だからこそ到達できた境地だろう。

また、ハイスピードカメラといえば、かつては工場での解析用といった趣が強く、アスペクト比も特殊なものが多かった。しかしSparkは、4Kの16:9という、映像制作者にとって極めて「普通」のフォーマットを事も無げにこなしてみせる。特殊な機材を使いこなしているという気負いすら不要な、日常の延長線上にある操作感は衝撃的ですらある。

ふと、RAIDが扱うもう一つの旗手、Freefly社の「Ember」との違いが気になり、問いを投げかけた。あちらもSSDへの直接記録が可能で、通常のカメラに近い操作感を備えているが、最大の違いは収録形式にある。Emberが主にProRes 422 LTでの収録を想定した設計を採用し、スピード感のある「撮って出し」の運用に重きを置いているのに対し、Sparkが選んだ道は、情報の欠落を許さないRAW収録であった。

このRAWはメーカー独自の形式であり、現時点ではDaVinci Resolveなどの主要な編集ソフトで直接読み込むことは叶わない。運用の鍵を握るのはメーカー純正の専用アプリだ。このアプリを介して独自RAWをCinemaDNGの連番ファイルへと変換することで、タイムライン上での自由なグレーディングや編集が可能になる。

この変換作業を煩雑な手間と捉えるか、最高画質を得るための必要なプロセスと捉えるかは、ユーザーによって評価が分かれるだろう。ワークフローの効率を追求したEmberと、RAWの画質を優先したSpark。ハイスピード撮影において何を重視すべきかという問いに対し、RAIDは対照的な二つの選択肢を提示している。

マウントシステムは実用性に配慮した設計だ。EマウントとPLマウントの交換に対応しており、拡張性を求めるユーザーのニーズに適している。特筆すべきは、ハイスピードカメラでありながらEマウントに電子接点を備えている点。現時点での機能の実装範囲は不明だが、新興メーカーらしい意欲的な設計思想が反映されている。

操作性についても、背面の液晶モニターから直感的にメニューへアクセスできる点は非常に実用的である。専用アプリによるリモート制御やライブプレビュー機能の実装も予定されており、ハイエンドなシネマカメラに近い柔軟な操作体系が構築されている。

最も大きな衝撃を受けたのは、等速のライブ出力と、撮影データの即時プレイバックを両立している点である。カメラ本体でRAWデータを再生し、そのままスポーツ中継などのリプレイに活用できる運用性は、現場の運用を大きく変える可能性を秘めている。ソフトウェアの熟成というプロセスはあるものの、出荷版への期待は膨らむばかりだ。ハイスピードカメラが特別な機材ではなく、あらゆる制作現場の主役となる未来が、その可能性を強く示した一台である。