CP+2026のLAOWAブースにおいて、その意表を突く展示内容で一際注目を集めていたのが「LAOWA FF 14-60mm T3.6 Stereo Zoom」である。本製品はフルサイズセンサーに対応し、14mmから60mmという広角から標準域までを広くカバーする。従来の3D映像制作における制約を解消しようとする、確固たる設計思想に基づいたプロダクトだ。


本製品の最大の特徴は、その独特な結像方式にある。一般的な3D映像制作のレンズが円形の像を映し出すのに対し、このレンズはセンサー上に左右二分割の長方形として結像する。光学系により左右二眼分のイメージを効率的にセンサー上へ投影する設計となっている。Blackmagic URSA Cine Immersiveが専用の円形魚眼光学系を前提とした構造を採用しているのに対し、フレームの隅々まで活用できる長方形を選択している点は、独自性が高い。

ハードウェア面では、本体重量約4kgという極めて重厚な仕様が目を引く。これは2つの光学系を一つの鏡筒に収め、かつ複雑なズーム機能を実現しているためである。シネマ業界で標準的なPLマウントをベースとしているが、アダプターを介せばニコンZマウントやLマウントなど、あらゆるミラーレスカメラでの運用が可能だ。鏡筒にはフォーカス、ズーム、絞りの各リングが整然と並び、外周にはモーター駆動に対応したギアが配されている。ここまで重量があると運用にはレンズサポートが不可欠となるが、その堅牢な造りからはプロ用シネマ機材としての風格が漂っている。
開発の主目的は、従来の3D・VR撮影における物理的な制約を打破することにあるという。これまでは2台のカメラボディを並べるリグが必要であり、機材の肥大化や左右の光軸調整、同期が大きな課題となっていた。本レンズはこれらを一台のレンズボディに集約することで、ズームやフォーカスの同期を達成し、人間の視点に近い自然な立体感の実現に成功している。
カメラの高画素化が進む現状において、このレンズの利点は大きい。左右の像を一つのセンサーに収める構造上、8Kや12Kといった高解像度センサーとの組み合わせが有効だ。例えば8Kセンサーを用いれば、片眼あたり4K相当の解像度を維持でき、VRコンテンツとして十分な精細度を確保できる。Blackmagic DesignのPyxis 12Kをはじめとするシネマカメラとの組み合わせにより、質の高い映像制作が可能となる。
3Dレンズにおいてズームを実現した意義は大きい。かつてパナソニックから単焦点3Dレンズやコンバージョンレンズが登場したが、それらは小径センサー向けに限定されていた。対して、フルサイズに対応しズーム機能を備えた本機は、固定的な視点に制限されていたクリエイターの表現の幅を大きく広げそうだ。
LAOWA FF 14-60mmは、今後の3D映像制作における需要拡大を予感させる。これまでの制約を解消し、3D・VRの可能性を広げる意欲的な製品だ。今後の映像制作現場において、標準的な機材の一つとして普及することへの期待は大きい。